“頭脳のスポーツ”ともいえる将棋。その最前線で戦う将棋棋士はまさにアスリートだ。対局は長いときで10時間以上にも及び、たった一手が勝敗を分けることも多い。そんな厳しい勝負の世界において重要なのは、いかに集中力を高めて切らさないかである。

集中力が重要なのはビジネスパーソンや学生においても同じだろう。大事な商談や試験など、集中力を試される場面はそこかしこに転がっている。

今回、そんな「集中力」をテーマに将棋棋士・遠山雄亮六段にお話を伺った。遠山六段は日本将棋連盟のモバイルサイトで編集長としても活躍しており、将棋棋士だけでなく将棋業界のIT化を牽引してきたビジネスパーソンとしての顔も持つ人物だ。

遠山六段が語る集中力の高め方は、きっと仕事や勉強においても参考になるだろう。

将棋棋士 遠山雄亮六段

2005年10月に四段へ昇段し、日本将棋連盟のプロ棋士としてデビュー。2018年2月に六段昇段。NHK杯出場、王位戦でリーグ入りして挑戦権を争うなど、現役のプロ棋士として活動中。
2009年にモバイル編集長、2014年にはプロデューサーも兼任し、将棋連盟のWeb、アプリ、AIといった分野を担当し、将棋を大きく普及させるための任を担っている。

集中し続けたいときは、「あえて集中力を切る」!?

―プロ棋士の対局では想像を絶するような集中力が求められると思いますが、対局に入る際、集中力を高めるスイッチはありますか?

遠山:人によって様々かと思いますが、私の場合は将棋盤の前に座るとスイッチが切り替わります。もう何十年も将棋をやっていますので、将棋盤の前に座ると自然にそういうモードに入りますね。集中する前には必ず将棋盤の前に座るという行為が身体に染み付いているんです。

対局以外の仕事もいろいろとやっているのですが、なかなかスイッチが入らないなと思ったら、一旦将棋盤の前に座ることもありますよ(笑)。ビジネスマンの人も、何か仕事に取り組む前にこれをすると集中できる、というルールを作られている方もいらっしゃるのではないでしょうか。

―なるほど。対局は非常に長時間に及ぶこともありますよね。そんなときでも最初から最後まで集中力は維持できるものなのでしょうか。

遠山:いえいえ、そんなことはありません。中にはずっと集中を切らさずに指せる人もいるかもしれませんが、私はそういうタイプではないです。長い対局の場合、私はあえて集中力を切るようにしていますね。

―あえて切る、といいますと。

遠山:対局中も、だいたい1時間集中したら一度頭を休めることにしています。対局では決められた持ち時間があり、途中でトイレに立ったり休憩することもできますからね。対局以外の仕事も25分の集中と5分の休憩を繰り返して、集中力を保っています。

―長時間の対局をこなすには体調管理や栄養管理も大切かと思います。そのあたりについてはいかがでしょう。

遠山:これも人によると思うのですが、私はいろいろと試行錯誤して現在行っている栄養管理の方法にたどりつきました。たとえば朝は和食を中心に野菜や魚を入れてしっかりとバランスの良い食事を心がけています。以前はやはり頭にはブドウ糖かなとパンを食べていた時期もあったのですが、結論としてはバランス良く栄養をとるのが一番でしたね。

―朝食と集中力の関係については「ブドウ糖だけよりも栄養素をバランス良くとった方が集中力が向上する」という研究結果が出ています。

遠山:そうでしたか。それは私の実体験と一致します。

Column
脳を活性化するには糖質よりも「栄養バランス」の良い朝食が良い!?

集中して仕事や勉強を効率よく行うためにはどうすればよいのでしょうか。朝食を食べる場合と食べない場合、また食事の違いでどんな影響があるかを調べました。

「栄養バランスの良い食事(洋風パン食)」、「栄養調整食品(固形タイプ)」、「おにぎり(具なし)」、「何も食べない(水のみ)」の4グループに分け、集中力の度合いを測る試験を実施。その結果、「おにぎり」や「何も食べない」場合と比較すると、「栄養バランスの良い食事」や「栄養調整食品」を摂取した方は、高い集中力を維持できていることがわかりました。

ここで着目したいのは「おにぎり」。これまで脳のエネルギー源はブドウ糖と考えられてきましたが、おにぎりのみでは集中力を発揮できていません。この結果から、脳を働かせ集中するためには、バランスの良い栄養を摂取することが必要ということが分かります。

試験概要
目的:朝食欠食および朝食タイプが体温、疲労感等の自覚症状、および知的作業能力にどのような影響を及ぼすか検討する
対象:朝食の欠食習慣のない健康な成人男性 20名

―昼食や夕食についてはいかがですか。

遠山:私はもともと胃腸が強くないので、食べ過ぎないようにお昼は軽めにすることが多いのですが、対局中によく食べるのはうな重です。うなぎは疲労回復によいらしいので。ただし、ご飯は少なめです(笑)。夜は、対局が長引くようならお蕎麦など軽めのものにしています。対局が終わっていれば疲労回復のために豚肉やグレープフルーツもよく食べます。好きなものを好きなだけ食べる棋士も多いし、それはそれでいいと思います。

―対局相手の食事が気になったりすることも?

遠山:ありますよ! 対局相手の食事はけっこう気にする棋士が多いと思います。普段はがっつり食べる方が軽めの食事をとっていたら、今日は調子が悪いのかな? とか。特に昼食は同じ場所で食べることが多いので、お互いに気にしていると思います。

―食事もまた駆け引きの一つなのですね。将棋棋士の方は対局中に間食される方も多いと思いますが、遠山六段はいかがですか。

遠山:私は足りない栄養を補う意味で野菜ジュースを飲んだり青汁を飲んだりします。また、カロリーメイトはバランスよく栄養が摂れる上、食べやすいので重宝しています。

―食事や栄養について、かなり考えられていますね。

遠山:といっても食事に気をつかうようになったのは30歳を超えてからですね。その時期に結婚したということもありますが、やはり年とともに無理がきかなくなったことが大きいです。食べたものによっても体調や集中力が明らかに違うと思えるようになりました。

プロスポーツの世界ではトレーナーや栄養士の方が食事面のサポートをしてくれるのがあたりまえですが、将棋棋士はあくまでも自己管理です。体調はもちろん、長時間集中し結果を出すためにも、食事はとても重要なことだと感じています。


遠山六段が実感されているように、集中力を維持して高いパフォーマンスを発揮するためには食事が重要な要素となる。そのためにはブドウ糖だけでなく、すべての栄養素をバランス良くとることが必要不可欠だ。

ビジネスパーソンや学生の方は、これを機にぜひバランスの良い食事を心がけてみてはいかがだろうか。

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