高速出力・ファイル軽量化でクラウド課金を抑制
第2の開発テーマ「PDFの新たな利用シーンに対応し、PDF帳票の標準ツールを目指す」のもとに実現された改善内容も、前項同様、やはりクラウドと深く関連している。例として「PDF出力性能の向上」が挙げられる。PDF出力を行う場合、接続時間やリソースの使用状況に応じて課金されるクラウド環境を利用している企業には、データ量に比例した出力速度の低下や、メモリ使用量の増加はコストとして跳ね返ってしまう。
「Create!Formがコスト削減のボトルネックになってはいけない」と、ver.10まででも改善が進められてきたが、今回、ver.11ではさらに大きく進歩した。Create!Formで作成するPDFファイルのサイズは1~2割縮小し、印刷実行時間は約半分にまで短縮されている。
「ver.11は、課金サーバー上でも問題なく使えるレベルになったと自負しています」(佐野氏)
PDFをより美しく、より使いやすく、そしてより安全に
ベクター描画により高精細に仕上がるPDFは、印刷用に作成・出力されることも多い。そのため、ver.11ではPDF印刷の機能強化も図られている。たとえばISO(国際標準化機構)が認定した、電子入稿に適した新フォーマットPDF/X(PDF/X-1a)の出力に対応し、フォントや色調、画像などの設定情報を正確に印刷業者に受け渡すことができる。カタログのように色味が重要な書類や、オフィスでは対応しきれないような大量の印刷をしたい場合に活用できるだろう。
またPDFのデータに「印刷時の拡大・縮小比率」「印刷部数」「両面印刷/片面印刷」などの印刷オプションを含めることも可能になった。このPDF印刷プリセット機能により、誰が印刷しても、PDF作成者の意図通りに仕上がるようになる。
「この機能は非常にニーズの大きなものでした」と佐野氏が話すように、印刷設定のトラブルは多い。たとえばPDFを初期設定の状態で印刷すると、画面でプレビューした時よりも小さめに印刷されることがある。その原因は、PDFのデフォルト設定で「特大ページを縮小」が選択されていることにある。これを変更するためには印刷設定画面で「実際のサイズ」を選べばいいのだが、方法を知らないユーザーにとっては「上手く印刷できない」というストレスにつながってしまう。またPDFを配布した人数が多ければ、PDF制作者やシステム管理部門に多くの問い合わせが来てしまうこともある。PDF印刷プリセット機能は、そうしたユーザーのストレスや、管理部門の余計な手間をなくすのに有効だといえる。
PDFに関しては、セキュリティ面でも機能が追加された。ひとつは128bit AES暗号化アルゴリズムへの対応だ。これまでのRC4アルゴリズムよりも強固な暗号化が可能になった。もうひとつは「透かし機能」だ。透過度を設定したオブジェクトを文書に埋め込むことができる。たとえば機密性の高い文書に大きく「社外秘」などの文字や電子社判を入れても、ある程度の透過度を設定しておけば、重なっても印刷内容が見えづらくなることなく閲覧者の注意喚起に役立つ機能として利用できる。また印刷時にだけ出力されるオブジェクトをつくることも可能だ。「印刷禁止」と刷り込まれる設定にしておけば、不正の抑制につなげることができる。
HTML5での出力を実現し、ブラウザでの帳票閲覧に対応
閲覧用途でも印刷用途でも、ビジネス文書形式のデファクトスタンダードとなったPDFを、より有効かつ安全に活用するために、Create!Formは今後も機能の追加を行っていく。加えて、インフォテックはPDFに頼らない帳票表示機能の開発にも取り組んでいる。
「PDFビューアーを起ち上げるのに時間がかかったり、セキュリティ上の問題からPDF表示プラグインを廃止するブラウザが出てきたりしたことをきっかけに、ver.11では帳票をHTML5で表示できるランタイムを追加しました。これは現状、他社製品ではあまり備えていないCreate!Formだけの大きな特長だといえます」
それがSVG(HTML5)帳票出力ランタイムであるCreate!Form Screenだ。デザインした帳票をHTML5でサポートされているインラインSVGを使って出力する機能を持っている。表示にはブラウザを使用し、専用のビューアーを必要としないため、PCはもちろん、タブレットやスマートフォンでもスピーディに帳票を閲覧できる。ベクター描画形式なのでグラフや図形の表示は滑らかだ。また帳票上に表示する画像ファイルをURLで指定できるため、画像を多用した分かりやすい帳票、見ばえのする帳票をつくることができる。マルチデバイス対応になったことで、Create!Formの活用の場は大きく広がったといえるだろう。
なお ver.10まで提供されていたシステムソリューションのひとつであるCreate!Form PrintJobServerを、Create!Form Magicfolderの上位版Create!Form Magicfolder Plusとしてリニューアルした。Create!Form Magicfolderは指定されたフォルダを監視し、そこにファイルが入れられるとあらかじめ設定された処理(印刷、PDF出力など)を自動実行する機能を持っているが、Create!Form Magicfolder PlusではここにCreate!Form PrintJobServerが持っていた「ジョブの再実行」「実行履歴管理」といった機能が追加されている。また逆に、ver.10ではなかったブラウザによる管理画面がCreate!Form Magicfolderにも搭載されるなど、ver.10までは別製品としていた機能を整理し直した形でのリリースとなる。
Create!Form
製品サイトトップページ:https://www.createform.jp/
お問い合わせ: https://www.createform.jp/contact/