オリエントコーポレーションは、広島のクーポン事業に端を発したクレジット会社です。以後、信販会社系のリーディングカンパニーの1つとして各分野で業界を牽引してきました。  今回は、協会の副会長でもある同社の齋藤雅之会長に、現在の業界を取り巻く環境やその環境の中での同社が取組む幅広い事業展開などについてお聞きしました。

  • 日本クレジット協会

    株式会社オリエントコーポレーション 取締役会長兼会長執行役員 ・齋藤 雅之、キャスター・渡名喜 織恵

齋藤 雅之(さいとう・まさゆき) 昭和28年12月2日生
昭和51年 4月 株式会社第一勧業銀行(現、株式会社 みずほ銀行)入行
平成14年 4月 株式会社みずほ銀行 経営企画部長
平成15年 3月 同行 執行役員 経営企画部長
平成17年 4月 株式会社みずほフィナンシャルグープ 常務執行役員
       リスク管理グループ長兼人事グループ長
       兼コンプライアンス統括グループ長
平成20年 6月 株式会社トータル保険サービス 代表取締役副社長
平成22年 6月 株式会社オリエントコーポレーション
       取締役副社長兼副社長執行役員
平成23年 6月 代表取締役社長兼社長執行役員
平成28年 6月 代表取締役会長兼会長執行役員
平成29年 6月 取締役会長兼会長執行役員(現任)
平成29年 6月 一般社団法人日本クレジット協会 副会長(現任)

渡名喜 織恵(となき・おりえ)・フリーアナウンサー
沖縄県出身。宮崎公立大学人文学部国際文化学科卒業。『BS11 ニュース』『本格報道 IN side OUT』 『財部誠一の経済深々』 等の番組にキャスターとして出演。現在は、エフエム東京でのニュースや行政番組を担当するなど報道・経済から、音楽、スポーツまで幅広く活躍中。

キャッシュレス化の推進と業界における課題について

  • 日本クレジット協会

渡名喜:業界を取り巻く環境について、貴社ではどのように見ていますか。お聞かせください。

齋藤:経済環境面では、企業の設備投資や個人消費が持ち直すなど、内需主導の緩やかな景気の回復基調が続いています。
 当業界に目を向けますと、2020年の東京オリンピック・パラリンピックの開催に向け、国策としてもキャッシュレス化の推進が図られている中で、クレジットカード・ショッピングの取扱高は増加を続けており、民間最終消費支出全体に占める割合も伸長しています。ただし、このクレジットカード決済を含めたキャッシュレス化の進展度合いは、欧州やアジア等の諸外国の方が、わが国に比べ一歩も二歩も先に進んでいるというのが現状です。
 このような中、今年の6月に閣議決定された政府の成長戦略である「未来投資戦略2017」では、今後注力する5つの戦略分野の1つとして「FinTech」が明記され、これを活用して「キャシュレス決済が広く浸透する社会を目指す」という基本的な考え方が示されました。さらに、「今後10年間(2027年6月まで)にキャッシュレス比率を倍増し、4割程度とする」というKPIも盛り込まれました。
 これは、当業界が目指すべき具体像とその実現への期待を示したものと受け止めています。一方で、技術革新が急速に進行する中で「クレジットカード」という決済ツールが、今後もわが国におけるキャッシュレス化の主役であり続けるためには、FinTech企業との連携なども含め、さらなる利便性向上とセキュリティ強化を業界全体として加速させ、消費者の生活の中に根付かせていかなければならないと考えております。

  • 日本クレジット協会

渡名喜:政府の成長戦略を踏まえ、業界における課題などについて貴社のお考えをお聞かせください。

齋藤:まず、近年のクレジットカード番号等の漏えい事件や不正利用被害が大幅に増加している状況において、安全・安心なクレジットカード利用環境の実現が強く求められています。このような中で、国際水準のセキュリティ環境の整備を目指した「クレジット取引セキュリティ対策協議会」の発足と同協議会による「実行計画」の策定、そして、クレジットカード情報の適切な管理や加盟店に対する管理強化等を目的とした改正割賦販売法が公布されました。この改正法の遵守と「実行計画」の着実な遂行が当業界に課せられた最大のミッションであると認識しています。特に今年は、早くも3年後に迫った2020年を念頭において、さまざまな取組みをしっかりと具体化させていくことが必要であると考えています。
 次に先ほど冒頭でお話しした、キャッシュレス比率の数値目標達成に向けては、その具体的施策の1つとして、クレジットカード会社が持つ消費データのFinTech企業等への公開、いわゆる「API連携」の促進といった環境整備が求められています。こういった新たな連携が、消費者、クレジットカード会社の双方に大きなメリットをもたらし、キャッシュレス化が一層進展することを期待しております。

渡名喜:貴社は、個別クレジットについては、この分野のリーディングカンパニーですが、最近の個別クレジットについてはどのように見ていますか。

齋藤:この分野においても、近時、市場は緩やかな拡大を続けています。これは、クレジットカードでは対応できない多彩な支払い方法の提案をはじめ、新たな付加価値の提供や利便性を追求した商品・サービスが各社において拡充され、消費者の分割決済ニーズにしっかりと応えてきた結果だと思っています。
 消費者や加盟店のニーズの変化を機敏に捉え、商品・サービスの利便性などの付加価値を高める努力を続けることにより、安定的な市場成長が期待できるものと考えています。また、アジア市場へのビジネス展開も大きな可能性を秘めていると考えています。