2017年3月にデビューシングル『Best Part of Us』をリリースし、Spotify上でアーティストとしての総再生回数が既に1,000万を超える、覆面アーティストAmPm(アムパム)。彼らは果たして何者なのか、そして今後、挑戦してみたいこととは。謎の多い彼らに、ブレイクした"今"を聞いた。

――AmPmの世界的なブレイクのきっかけとなったSpotifyには、どのような印象がありますか?

AmPm右「現在さまざまな音楽配信サービスがありますが、Spotifyは世界で最も利用者が多く、またたくさんのプレイリストがあることも特徴だと思います。すでに知名度のあるアーティストであれば、既存のファンが視聴することで再生回数はどんどん増えていくと思いますが、我々のような新参はそういうわけにはいきません。Spotifyにどんなプレイリストがあって、それにはどのくらいのフォロワーがいて……というのを把握してないとダメだと思いますね。楽曲を闇雲に作って、あとはお任せします、ではダメなんです。シーンや気分に応じた人気のプレイリストに収録されるためには、寝る前に聴く曲や本を読みながら聴く曲など、ビジュアルが浮かぶ、ある程度シチュエーションを意識した楽曲であるべきと考えています。SpotifyのようにITテクノロジーを使った音楽サービスは日々進化していますので、戦略的に使いこなすためには私たちも日々研究し続けています。」

AmPm左「僕らの楽曲も、AmPmのことは知らなかったけど、プレイリストをフォローしていたことで偶然楽曲を聴いてくれたというパターンは非常に多いです。そんなに音楽に詳しくないけど、プレイリストの中でなんとなく曲をかけてみたという人もたくさんいると思います」

AmPm右「そういう部分では、SNS的な感覚がありますね。Spotifyにはユーザーとの距離の近さを感じます。実際に、今月何人聴いてくれたかなどの数字も見えますから。あと、アーティストや楽曲との新しい出会いという点では、他と比べものにならないくらい多いと思います。スマートフォンやパソコンという限られた画面の中で情報を得ていくわけですが、あれだけの画面からこれだけの情報を掘り下げて入手できる凄さ。なんとなく開いたプレイリストの楽曲が、今までだったら自分から自発的には聴かなかったものだけど、聴いてみたら実は意外とよかったということは結構多いです」

AmPm左「Spotifyは僕の家族も使っていて。どう使っているか見ていたら、“アーティストから聴く”だけじゃなくて“まずはプレイリストを流す”というスタイルで使っているんですよね。知っている曲や好きなアーティストにこだわらずに音楽を聴くスタイルが定着してきたのを、自分の家族を通じて目の当たりにしています(笑)」

AmPm右「もちろん、Spotifyのような聴き放題の音楽サービスが日本で始まる前は、CDショップやレンタル店の店頭でもシチュエーションに合わせた音楽の提案はされていましたが、そういう提案がデジタル上でもできるようになったっていうことですよね」

AmPm左「確かにそう。コンピレーションアルバムとか、売れてたもんね。実際にその辺は僕らもやってたからな」

AmPm右「そういえばそうだ(笑)! まだ楽曲もできてないコンピレーションCDのジャケットを企画書だけを見て作ったりしてました(笑)。多いときは年間150タイトルくらいのジャケット作ってたんですよ」

AmPm左「ハワイアンとかCDショップじゃなく雑貨屋さんで販売するようなものもたくさん手掛けてきましたね。セールスも好調でした。ただカバーするだけじゃなくて、シーンに合わせた楽曲というのは以前から求められていたのかもしれないですね」

AmPm右「今、しゃべっていて気付いたことですけどね(笑)」

――音楽業界が勢いを失っているといわれて久しいですが、ニーズは今もあるということですよね。

AmPm右「AmPmをやってみて思ったのは、アーティストとしての視点からだけじゃなく、プロモーションやマーケティングの面から見ても、音楽にビッグチャンスはまだまだあるなと。AmPmをやるにあたっていろいろと調べたんですが、ヨーロッパでは続々と音楽がらみのベンチャー企業ができています。こういうマネタイズの仕方があったか! と思わされることも多くありました。日本やアジアでもニーズがあるなと思いますね」

――お話を聞いていると、アーティストでありながらビジネスの話もたくさん出てくるのが非常に面白いです。

AmPm右「実際に欧米で売れているアーティストは、ビジネスや権利について理解しているんです。もちろん、プロフェッショナルに任せる部分もあるんですけど、アーティストにもそういったことに関して理解しようとする姿勢は必要だと思います」

――AmPmのアートとしての側面としては、ビジュアルイメージなど意識されていることはありますか?

AmPm右「もし、僕らが若くて見た目も良ければ顔を出しても良かったんですけど……。そのあたりは重々承知しているので(笑)。現状はシロクマですけど、そこにこだわりは一切なくて、この後も変えていきます」

AmPm左「春夏コレクション、みたいな感じですね(笑)」

AmPm右「僕らの音楽はビジュアルありきで聴いてくれているわけではないものの、認知度が上がってきている今、ビジュアルを変えるって"なに考えてんの!?"って感じになると思うんですけど(笑)。でも、僕らとしては、前例のないことをどんどんやっていきたいですね」

――今後、挑戦してみたいことなどは?

AmPm右「いつか同時多発ライブはやってみたいですね。ダブルブッキングじゃないですけど……。デジタル上ではそういうことはできますけど、リアルでもやってみたいんですよ。仮面の中身は僕らじゃなくてもいいと思うので」

AmPm左「そう。そろそろね(笑)。ブレーンとしてはもちろんやっていくんだけど」

AmPm右「ダンスのうまい人に中に入ってもらってもいいですね。僕らでは限界があるんで」

――ライブは先日にジャカルタで行われたSpotifyの音楽イベントに出演されましたね。

AmPm右「すごい楽しかったです。出演者じゃなくてお客さんとして観たかった(笑)。やっている最中にもそう思ってしまうくらいの盛り上がりでした。お話をいただいた時は、正直“僕らでいいんですか?”という気持ちでしたけど」

AmPm左「日本代表みたいな形で行くことになりましたからね」

AmPm右「楽曲リリース時にはライブをするという計画もなかったので、ライブについては何一つ準備をしてこなかったんです。だからオファーがあった際は、関係メンバーを集めて、どうする?いける?いけないの?と話し合い、急いでスケジュールをおさえてました(笑)」

AmPm左「スピード感あったね」

AmPm右「そこはアーティスト兼制作なので(笑)。お話をいただいてから2日後にはこういうセットリストで、舞台はこうで、とお返事をしました」

AmPm左「事前に打ち合わせをしてなかったのですが、ライブ映像を見返してみると、ステージ上で手を挙げるタイミングが絶妙に合ってて驚きました。僕ら(被り物をしているから)は横とか見えないのに(笑)」

AmPm右「お互い忙しかったし、リハーサルも移動の確認くらいでステージ上のパフォーマンスはぶっつけ本番に近い」

AmPm左「運よく、フィーリングで着地できてよかったです(笑)」

――ほかアーティストのステージも含め、ジャカルタイベントの盛り上がりはいかがでしたか?

AmPm右「すごいなと思ったのが、観客が出演アーティストの曲を知っているんですよね。Spotifyのほうでイベントのプレイリストを作ってくれていたので、それを聴いて事前に予習してきていたんだと思います。各国からアーティストが集まっているのに、どのアーティストのステージでもちゃんと観客が盛り上がってるんですよね。こういったフェス型のイベントの場合、特定のアーティストのファンが集まる、みたいなことがあると思うんですけど、分け隔てなく盛り上がってましたね。僕らも含めて」

AmPm左「観客が一体となって合唱したインドネシア国歌から始まり、各アーティストのパフォーマンスまで。本当に素晴らしかったです。観客として参加したかった(笑)」

――今後の楽曲リリース予定は?

AmPm右「年内に、7曲はリリースされます。今、まだ出来上がっている曲はゼロなんですけどね(笑)。オリジナルの新曲も月に1曲くらいのペースで出していければいいなと思っていますね。大きな反響をいただく中で生まれた企画などもあるので、そういうものを含めると盛りだくさんになります。とりあえず、近々2曲新曲を出す予定です」

AmPm左「今あるイメージとしては『Sunset Breeze』の流れを汲んだ感じがありつつも、ちょっとビートを効かせていきたいなと思っています。もう1曲はちょっとアジアン・オリエンタルでエキゾチック雰囲気になりますね」

――そのあたりももう企画書になっているんですか?

AmPm右「なっていますよ。参考写真なんかも貼ったりして。文章だけじゃ伝わり切れない部分もあるので。いつか見ていただきたいですね。曲を聴いてから企画書を見ると“あぁ~!”ってなると思うので(笑)」

AmPm左「デビュー曲だけは、あとから企画書を作ったんですけどね」

AmPm右「楽曲のキーやテンポ感などは今までは感覚的にやってきたことですが、もっと視覚的にわかるようにプログラムを組んだりしています。今後の課題は、AmPmというプロジェクトにおいて、データをきちんと扱えて共有できる人数をいかに増やしていくかという点だと思っています」

――最後に、今後のAmPmにどのようなビジョンを描いているかお聞かせください。

AmPm右「僕らは日本人アーティストとしてやっていて、捉え方としては邦楽だと思うんです。僕らをきっかけに、音楽をあまり聴かなかった人たちが音楽を聴いてくれるといいなと思っています。この記事も、そんなに音楽が好きってわけでもないけど、たまたま読んだという人もいるかもしれません。そういう人が、じゃちょっとAmPm聴いてみるか、こっちのアーティストも聴いてみるか……と、なれば嬉しいです」

AmPm左「僕は、ミュージシャンのバックアップができるようになりたいですね。AmPmを通して、ミュージシャンを知ってもらったり、音楽を知ってもらう。AmPmというプロジェクトにおいて、そこはマストだと思っています。AmPmを利用して這い上がってくるようなミュージシャンを作りたいですね。あと、僕は出身が田舎なので、地域活性につながるようなことができるようになったらいいなと思いますね。ゆるキャラみたいな感じで(笑)。AmPmが来るイベントは盛り上がるよね、みたいな形になれればいいなと思います」

「AmPmを通して音楽をもっと楽しんでほしい」そんな想いで世に送り出された楽曲は、いつもの空間が少しだけ彩られるような心地よさがある。AmPmのプレイリストもあるので、ぜひチェックしてみてはいかがだろうか。

[PR]提供: