労働環境の改善が声高に叫ばれる今日。「ノー残業デー」や「深夜残業の禁止」などを定め、労働時間の短縮に取り組んでいる企業は少なくない。そんな中、引越大手のアート引越センター(アートコーポレーション)が、引越業界初となる画期的な制度を導入した。その制度が「定休日」。今回は、同社の新オフィスに伺う機会を得て、「定休日」をはじめた真意を聞いた。
「定休日」導入で、社員の定着率向上や採用数増加を図る
この「定休日」は、全国122の支店を対象としたもので、毎週火曜日がそれに当たる。比較的忙しい「大安」と「月の最終火曜日」「祝祭日」は除外されるが、月に2~3回は引越業務を取りやめる。今後、繁忙期にも設定する予定とのこと。なお、支店勤務以外の法人営業部やコールセンターなどは、これまで通りの勤務形態だ。
「引越業務の実務に携わる支店の労働環境を改善することで、社員の定着率向上や採用数の増加に繋げたい」と話すのは、同社の寺田政登取締役副社長。
今夏から導入されたばかりの制度だが、すでに各支店の社員からは好評だという。「定休日」と有給休暇を組み合わせて家族で旅行に出かけたり、支店のメンバー全員で野球大会やバーベキューといったレクリエーションを興じたりして、ワーク・ライフ・バランスとしてはもちろん、支店の一体感醸成にも一役買っている。
同社は、来年、前身の寺田運輸株式会社として法人設立してから50周年を迎えるが、「定休日」を活用した大々的な社内イベント開催も視野に入れているそうだ。
顧客の引越日を効率的にコントロール。サービスの品質を高め好循環に期待
ただ、この「定休日」導入は、営業稼働日が減るため売上に影響するリスクがある。競合他社に顧客が流れてしまうのではないか――。この懸念に対して、寺田取締役副社長はこう答えてくれた。
「引越業は“サービス業”と認識しておりますので、当然、引越日は“お客さまのご都合が最優先”です。ご懸念の点については、社内でも議論されました。しかし、当社の曜日別の引越件数を調べてみたところ、火曜日と水曜日が比較的少ない状況でしたので、定休日で休んだ分の売上も十分に補てんできるという判断に至ったわけです。そして、いざ導入してみると、日本の労働環境の現状が社会問題化している昨今ですから、法人さま・個人さまを問わず、お客さまにご理解いただきやすくはなっていますね」
顧客の引越日を、いわば主体的にコントロールすることで作業効率を高め、売上減を回避する考えだが、これには顧客との信頼関係が鍵を握る。対応力が評判の同社だが、今後は、さらにサービスの品質を高めていくことに意欲的だ。
「社員が定着すれば、その分、受注できる件数は増えますし、ひとつひとつの引越の品質を高めることでバイラル効果が生まれれば、好循環を期待できます」
「定休日」導入後、心身ともに定期的にリフレッシュできるようになった社員たちに対し「今まで以上に元気良く働いているのがはっきりと見て取れる」と寺田取締役副社長は目を細めた。そんな姿は、きっと顧客にも伝わる。顧客満足の向上にも手ごたえを感じているようだった。
引越業界全体のイメージアップへ
現在、引越業界も例に漏れず、人手不足が顕著だ。引越業界最大手の同社が業界の中で先んじて「定休日」を設けたのは、業界全体のイメージアップにつなげていきたい思いもあるという。寺田取締役副社長はこう語る。
「引越業界は『仕事がきつそう』と思われがちで、決してイメージが良いとは言えません。しかし、例えば当社では、学生時代にアルバイト勤務していた人が、そのまま社員登用を希望するケースも多く、仕事の大変さを補って余りあるやりがいがあるのも事実。『定休日』をきっかけとして、引越業界のイメージアップにも貢献できればうれしいですね」
この「定休日」が引越業界全体に浸透するかどうかは、労働環境の改善において先陣を切った同社の動向がカギを握るかもしれない。毎年、300名程度の新卒採用(大卒・高卒含む)を掲げているが、「定休日」導入がどんな影響をもたらすのか、今後も注目したいところだ。
今や、いわゆる“ブラック企業”を消費者は敬遠するようになった。労働者を犠牲にしてまでも売上を伸ばそうとする企業姿勢が消費者に選ばれる時代は過ぎ去ったと言っても過言ではない。
世の中の価値観が大きく変わりつつある今だからこそ、「定休日」という業界初の試みに踏み切り、労働環境改善に先手を打った同社の勇気ある決断は広く支持されるのではないだろうか。引越業界内にとどまらず、今後、社会にどのようなインパクトを与えるのか、引き続き着目していきたい。
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