みなさんは、自分のデスク周りの整理整頓はできているだろうか? 仕事机はいってしまえば、自分の心を映す鏡みたいなもので、その人の性格がとても出やすい場所。しかし、どこの職場にも書類や郵送物が山のように積み重なった、「机が恐ろしく汚い人」は存在する。―――――そう、ここにも……。これは、そんな「魔窟のデスク」を持つ彼と、どこからともなく現れた整理整頓のエキスパートの、魔窟のデスク脱却の物語である。
これはひどい! 仕事の出来を左右する机の整理整頓
ここはとある制作会社の事務所。そこにユウイチという男性が勤めているのだが、彼はいつも……仕事がたまりがち。
いつも同期の社員と比べられ落ち込む毎日だ。そんなユウイチの机には、ある呼び名が付けられている。それは、「魔窟」。机がいつも汚いのでそう呼ばれるようになった。
というのも、どこに何があるか本人にしか分からず、資料ひとつ取り出すにも本人が事務所に戻るまで待たないといけないのだ(そうしていつしか、うず高く積まれた紙の山は「地層」と呼ばれ、資料探しは「発掘」と社内ではいわれている)。
ユウイチの机をざっと見渡すと、向かって左からボックスファイル、そのわきには大量の郵便物が無造作に差し込まれ、中央には何やらの資料類が散乱。右手にはこれまた無造作に差されている資料が見てとれる。もちろん、そのほか雑貨や小物はもうそこらじゅうに落ちているといった状態だ。ユウイチはぼそっと呟いた。
「はぁ、なんでおれってダメなんだろ……?」
そんなとき、
「それは多分、その汚いデスクのせいじゃないかな?」という声が。
「!?!?!?!?!?!?!?!?」
颯爽と登場したのは、整理整頓のエキスパート、オフィス・家庭用の文具を製造販売するキングジムでファイリングコンサルタントを勤めている矢次信一郎氏だ。
「しかし、本当にこれはヒドイですね」
う~むと、思案する矢次氏。さすがの彼でも、その汚さに引いているようだ。その傍らでは、どうやって事務所に入ってきたのか、茫然とするユウイチ。しかし、矢次氏はしばらく惨状を眺めたあと、ユウイチに向かっていきなりこういった。
「さて、ユウイチくん。机の上を一度全部片づけてくれるかな?」
「え?」と目が点のユウイチ。彼をよそに段ボールを組み立てていく矢次氏。
突然のことに、まったくついていけない。
ところが、「さあさあ」とにこやかに片付けを促してくる矢次氏。「いや、でも」と戸惑うユウイチ。見つめ合う2人。
……結局、ユウイチがその勢いに負け、しぶしぶ"魔窟"の片付けを始めることになった。