漫画雑誌『週刊少年ジャンプ』が来年50周年を迎えるのを記念し、「森アーツセンターギャラリー」では「創刊50周年記念 週刊少年ジャンプ展VOL.1 創刊~1980年代、伝説のはじまり」が開催されている。イベント開催に合わせ、バンダイの公式通販サイト「プレミアムバンダイ」では、「ジャンプ展」とコラボレーションした招待券プレゼントキャンペーンを行っている。

なぜ当時の『ジャンプ』からは数多くの伝説的な作品が生まれたのか、そして今回の展示の見どころは? 今回は漫画『キン肉マン』で、今なお幅広い世代の心を熱くし続けるゆでたまご先生に話を聞いた。

左からゆでたまごの中井義則氏と嶋田隆司氏

――今回展示ではたくさんの原画が並んでいますが、1枚の原画が仕上がるのにはどれくらいの時間がかかるものなのでしょう?

中井:シーンにもよりますけど、早くて5時間から10時間はかかりますね。

――原画の中で、これはぜひ見てほしいというものはございますか?

嶋田:難しいですね。『キン肉マン』は名場面ばかりなんですけど、ここにあるのは本当に厳選したものです。こんなもんじゃないんですけど、苦渋の選択ですね(笑)。4色原稿も2色原稿も原画もありますから。

――今回あらためて読み直してみて、『キン肉マン』は1話1話の情報量が多い印象がありました。当時からどのようなことを参考にされていたのでしょうか。

嶋田:『キン肉マン』は格闘技漫画なので、とにかく格闘技は見に行ってましたね。最低一週間に1回はいろんな団体を見に。あとは映画を見に行ったり、自分でも格闘技を習いにいっていました。7、8年前まではグラップリング、柔術を習っていました。

――格闘要素以外もたくさんのものが詰まっていますね。

嶋田:想像は記憶の産物なので、小さな時に思いっきり漫画を読んだり、映画を見たり本で読んだりしたものが表れてくるのだと思います。僕の両親が「漫画読んじゃダメだよ」という親ではなかったのがよかったのではないかと思いますね。そこで誰か作家の先生をリスペクトして……という思いが残っていて、それを『キン肉マン』なりに消化してというやり方ですね。

――『キン肉マン』からプロレスが好きになったという人も少なくないのではないでしょうか。プロレスの魅力の伝え方の工夫は?

嶋田:ストーリーには敵超人とのイデオロギーの闘争があるのですが、普通の漫画だと野試合のようにしてその場で戦いますよね。でも『キン肉マン』はどんないざこざがあっても、リングで正々堂々と戦うというのがあって、そこが響いたのかもしれないですね。

そして、"できそうでできない"技。「キン肉バスター」を子どもは真似しようとするけどできない。ウォーズマンの「パロ・スペシャル」は、子どもが真似してケガをして新聞沙汰になったこともありました。もちろんケガはよくないですが、そのくらい社会現象までにならないと漫画の魅力は伝わらないと思いました。

――『キン肉マン』は、『週刊少年ジャンプ』創刊から約10年後に連載がスタートしています。連載をする前のお二人にとって『ジャンプ』はどんな存在でしたか。

中井:野球少年にとっての甲子園のような存在だったかもしれないですね。初めて少年漫画誌を買ったのが『ジャンプ』だったというのもあるかもしれません。

――初めて表紙を飾った時の気持ちはどんなものなのでしょうか。

嶋田:これがですね、初めての表紙が中井くんの絵じゃないんですよ。イラストレーターの方の絵で、うれしさ半分、失望したのが半分ありました。まだ新人だから4色原稿は描けないだろうということでイラストレーターの方が描いた。だから緑色のキン肉マンになったんですね。

――ではあらためて中井先生の絵で表紙になったときは……。

嶋田:本当にうれしかったですね。これは本当に中井くんの絵だなって。『ジャンプ』は当時200万部超えてましたから、さっきの"野球少年にとっての甲子園"じゃないけど、メジャーリーグのヤンキースに入団したくらい。

僕らがなんで『ジャンプ』を選んだのかというと、『ジャンプ』が日本一の雑誌だったからなんですね。日本一の雑誌でアンケート1位をとる、そして表紙を飾る。ほかの雑誌は眼中になかったですね。

――嶋田先生の闘志がすごいです!

嶋田:当たり前でしょう! まだまだ『ジャンプ』でやっていく自信はありますよ。

――30、40代で闘志がなくなる人も多い中、なぜそれだけ闘志を持ち続けられるのでしょう。

嶋田:二人でやってるというのが大きいですよね。漫画の打ち合わせだけじゃなくて、二人でいろんな夢とかを語り合うじゃないですか。将来どんなことをやりたい、とか。そういう夢を語っていると、どんどんメラメラ燃えるものが心の中に沸き立ってきて。それに原作を渡したら、まあ中井くんがいい絵を描いてきてくれるわけですよ。そしたらまた負けないようにもっとおもしろい話を書こう。そうしたら中井くんがまたいい絵で返してくる。二人でやっていることの本当のいい意味は、そこにあると思いますね。

――中井先生も会見で「ライバルは嶋田先生」とおっしゃってましたね。

中井:そうですね。もし一人でやっていたら……ということも考えるんですけど、ここまでは絶対にやってこれなかったでしょうね。

――『キン肉マン』というと魅力的なキャラも人気です。これはどのように生まれていくのでしょうか?

中井:生み出してから「どうやって育てていこうか?」というところが大きいですね。このキャラクターはどんなキャラクターなのだろうかというのを原作の段階から考えていくんです。そこから育てていくので、どうなっていくのかが楽しみなところはありますね。

――ビジュアル面で苦労したキャラクターは?

中井:けっこうありますよ。最初は悪魔将軍もそう。その時も練りこもうと二人で打ち合わせをしました。ラフデッサンも残ってますけど相当描きこんでますね。

嶋田:中井くんは原作で手足がたくさん出てくるキャラクターはいやがるんですよ。アシュラマンとかサタンクロスは嫌がりますね、いまだに。

中井:でもキャラの中には独り歩きできないで終わってしまうのもいるんですよ。そうなると非常にきついですね。

――逆に描いていて気持ちいいのは?

中井:最近だと悪魔将軍だったり、武道なんかはよかったですね。

嶋田:中井くんがいまだに絵の学校に通ったりして本当に絵を追求してるんですよ。56歳になってもそんなことができるというのが、『キン肉マン』が復活した理由だと思います。

――『キン肉マン』はとても長く愛されている作品ですが、昔のファンと比べて最近のファンの特徴はありますでしょうか。

嶋田:SNSの影響もあって、『キン肉マン』ってハチャメチャなところがおもしろいのに、「このキャラクターはデザインがおかしい」と一人が指摘するとそれに同調する人たちがいる。それが大きな意見になることもあるんですね。僕たちはそういうのは気にしないようにしてるんですけど、そういう細かいところを気にされる方が多いですね。

逆に、伏線をはってきれいに回収したらものすごく喜ぶんです。でも『キン肉マン』って「ゆで理論」じゃないですけど、むちゃくちゃな理論で物語を紡いでいくもの。昔って『キン肉マン』だけじゃなかったんですよ。本宮ひろ志先生も車田正美先生もみんな勢いで描いている部分があったんです。だから今の子はちょっと細かいところを見すぎかなって。逆に最近の作家もこうしちゃいけないのかなって細かいところを気にしすぎな感じもしますね。

『キン肉マン』ってハチャメチャだったから、当時子どもだった人たちが大人になってお酒を飲むと、延々『キン肉マン』の話になるそうなんですよね。あそこはどうだった、あそこはおかしかったって。僕たちはそういう漫画を目指していたんです。じゃあ今の漫画の読者たちは、将来お酒を飲んで漫画の話をするのかなって。それが漫画家としてはちょっと心配かな。

――当時はなぜ伝説的な作品が多かったと思われますか?

嶋田:徹底したアンケート主義ですね。今は2位でも、もっといえば6位ぐらいでも食べていける。でも当時は1位じゃないとだめだった。だから僕らは2位になったときにやめたんです。もっと続けてればよかったですよね(笑)。

――やめるのはお二人で決めていた?

中井:二人で決めていましたね。こちらから編集部に申し出ました。ボロボロになって連載が終わるより、この段階で終了させようという話をしました。

嶋田:ボロボロになる前にやめる美学というのか、先輩たちがみんなそうだったんですね。巻末になって終わっていくくらいなら、大増ページとか、巻頭カラーで最終回をさせるのが漫画家の美学やって。ちょっと僕らの考え方は今とは違うんでしょうね。今はずっと1位の作品があって、あとの漫画はそれ以下でもいいという感じになっている。そうなると雑誌の熱量が生まれないんですよね。

――復活する時は、待ち望んだ声も多かったのではないでしょうか?

嶋田:やめたあとはなかなか苦労しました。いろんな漫画をやって人気が出なくて……そんな時に別の出版社で『キン肉マン』の読み切りを描いて、ものすごく人気が出たんです。みんな待ってたんだなあって。続けてればよかったと思いましたね。そのあと『週刊プレイボーイ』の編集部から連絡があって『キン肉マンII世』を描くことになって、これも評判がよくって。そして今新たにWebサイト『週プレNEWS』で『キン肉マン』の続編をやっていて、盛り上がっているというところですね。

――今回インタビューのきっかけにもなったバンダイさんのアイテムにも触れさせていただいて、「S.H.Figuarts キン肉マン(王位争奪編Ver.)ORIGINAL COLOR EDITION」などの限定アイテムがイベントで販売されています。これは「新・格闘素体」という素体で劇中の技の掛け合いができることもポイントになっています。

嶋田:中井くんはずーっと飾ってるな。

中井:毎週技を変えて飾ってますね。うちのスタッフが今週の仕事のワンシーンをそこで作ってたりするんです。

――この「素体」を使って人体の動きをデッサンする方もいるそうです。

嶋田:僕はだいたいむちゃくちゃな技を考えるんですよ。それを中井くんが一回コンピューターの3Dモデルで再現するんですけど、ダメだったことがあって。

中井:エラーになっちゃう。

嶋田:でもその素体でやったらできたんです。その時はロビンマスクのタワーブリッジネイキッドだったんですけど、できるんじゃないか!って思いました。

――最後に、これからの目標をお聞かせいただけますでしょうか。

中井:新シリーズがはじまったので、とにかく今はこれを大事にしていきたいですね。『キン肉マン』は現在進行形なんですよ。

嶋田:『ジャンプ』からお声がかかればいつでもやりたい。若い作家の人たちと闘う用意はあります。ガチンコで闘うのが好きなんですよ!

ゆでたまご先生の原画や貴重な展示品を見ることができる「週刊少年ジャンプ展VOL.1」は、「森アーツセンターギャラリー(東京都港区六本木6-10-1 六本木ヒルズ森タワー 52階)」で10月15日まで開催。平日10~20時(最終入館19時30分)、土日祝日及び8月14日~18日は9~21時(最終入館20時30分)。料金は一般2,000円(税込)となっている。2018年春にはVOL.2、2018年夏にはVOL.3も開催される予定。

プレミアムバンダイでは「ジャンプ展」とのコラボ企画として、「週刊少年ジャンプ展VOL.1」の招待券が50組100名に当たるキャンペーンを実施している。なお、プレミアムバンダイでは『キン肉マン』はもちろん、『ドラゴンボール』や『聖闘士星矢』など、今回の「ジャンプ展」の対象となった作品のアイテムも多数展開している。

(C)ゆでたまご

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