普段、皆さんが何気なく使っている電気のエネルギー源について考えたことはあるだろうか? 「あって当たり前」と思いがちな「電気」だが、実は大きな課題を抱えているのだ……ん?課題って? そう思う方が多いだろう。そこで今回は、マイナビニュース会員に向け、「日本のエネルギーに関するアンケート」を緊急実施。その結果を見ながら、日本のエネルギーについて皆さんと一緒に考えていきたいと思う。
マイナビニュースが読者400名を対象にアンケートを行った(7月10日実施)。「日本の電力供給を支えているのはどのエネルギー源だと思いますか?(複数選択可)」という質問だ。これには、638の回答数が集まり、火力発電と答えた人が212名に対し、原子力発電と答えた人が241名という結果となった。
しかし、現在の原子力発電は震災後に作られた新しい規制基準への適合について審査中のものが多く、実は5基しか動いていないので、発電量は全体の2%程度にとどまっている(2016年度推計値)。では読者が期待を寄せているエネルギー源はどれだろう。「今後、日本の電力供給を支えていくのはどのエネルギー源だと思いますか?(複数選択可)」という質問には705の回答数が集まり、1位が太陽光で221名、風力125名、火力122名、原子力120名と並んだ。
このようなアンケート結果となったが、実際のところはどうなっているのだろうか。今回は難しく考えてしまいがちなエネルギー問題を、マンガを交えながら紹介していこう。
日本中が暗闇に!? 戦え、エネルギー戦隊ミックスマン!
時は20XX年の夏。日本は静かなる危機を迎えようとしていた。
登場人物の紹介
・火力レッド
日本の発電量全体の8割以上を発電し、エネルギー戦隊ミックスマンを牽引する熱血リーダー。化石燃料を燃やし電力需要に合わせてフレキシブルに発電できるが、CO2を排出するといった問題がある。燃料はほとんど海外から輸入しているため、心配事は中東をはじめとする世界情勢。
・水力ブルー
水力ブルー。スマートでクールな男前。国産エネルギーとして、クリーンな発電方式で電力を供給する。大規模な発電所を新しく作るには開発が必要で適地がないのがデメリット。
・原子力ピンク
「念には念を」がモットーの堅実女子。燃料となるウランは価格が安く、発電時にはCO2を排出しない。一定の発電量を保つことには向いているが、増減を急に変えることが難しい。現在は、安全性を一層高めるためにあらゆる対策を実施しているが、厳しいチェックをクリアーする必要がある。また、発電に伴い放射性廃棄物が発生するため、処分する場所の選定が必要。
・太陽光イエロー
天真爛漫な女の子で、実は風力グリーンの姉。自然エネルギーを活用するので再生可能エネルギーと呼ばれる。天気に左右されやすく、美容意識が高いため日没とともに就寝してしまう。気分屋のため安定供給できず、発電コストが高いのが困りもの。
・風力グリーン
マイペースなアーティスト肌。太陽光イエローと同じ再生可能エネルギー族で、資源枯渇の心配はないが、風が吹かなければ発電しないなど太陽光イエロー同様、安定供給が難しく発電コストが高いのが考えどころとなっている。
……とまぁ、5人それぞれ個性的なのはけっこうなのだが、バランスが偏っているようだ。
<日本の電源構成の推移>
実際、日本は1970年代に2回あったオイルショック(石油危機)の経験を経て、省エネや脱石油などエネルギーの安定供給確保を政策として進めてきた。その結果、年々石油への依存度を減らしてきたのだが、2011年の東日本大震災以降は多くの原子力発電所が停止しているため、2016年度は化石燃料が約81%(LNG[液化天然ガス]43.8%、石炭30.6%、石油他6.6%)を占めることとなり、オイルショック時と同じ状況になっている。くわしくはこちらから確認できる。石油もLNG(液化天然ガス)も石炭もすべて火力発電の燃料。いかに火力発電が今の日本の電気を支えているかが分かる。
出典:1973年度・2010年度は総合資源エネルギー調査会電力・ガス基本政策小委員会「電力需給検証報告書」(2017年4月)、2016年度は電力広域的運営推進機関「平成29年度供給計画のとりまとめ」(2017年3月)をもとに作成 |
突然の宣戦布告、「怪獣マックラー」をやっつけろ!
説明しよう
実は、日本のエネルギー自給率はたったの約7%(2015年度推計値)。特に電源構成の約8割(2016年度推計値)を占める火力発電の主な燃料となっている石油やLNG(液化天然ガス)、石炭などはほとんどを海外からの輸入に依存している。万が一、それらが手に入らない、ということになったら……考えるのも恐ろしい!
説明しよう
電気とはそもそも貯める事が難しい、ということをご存じだろうか。電気製品は電気が足りなければ動かないし、多すぎると壊れてしまうこともある。「使う分とぴったり同じ量」を発電することで、周波数や電圧も安定している。この対応力こそが、電力の品質の高さなのだ。 しかし、電力の使用量は一定じゃない。夜間のオフタイムと昼間のピークタイムとでは倍ほどに違う上に、今この一瞬も変動し続けている。だから、一定の発電力を持ち燃料供給や価格安定性に優れた原子力発電を中心にベースロード電源とし、火力発電や揚水式の水力発電などで需要の変化に対応することが大切なのだ。 それぞれの発電方式の特性を活かし、組み合わせる形が日本における「バランスの良い電源構成(エネルギーミックス)」となるのだ。
出典:「原子力・エネルギー」図面集2016 1-2-11。詳しくはこちらから確認できる |
安定した電力はエネルギーミックスから
マンガでは「エネルギー戦隊ミックスマン」によって、人知れず日本の電力は守られたが、実際はどうだろうか。
環境に配慮しつつ日本のエネルギーを安定させていくためには「バランスの良い電源構成(エネルギーミックス)」が重要であることがお分かりいただけただろう。火力発電に偏ってしまっている現在の日本の電源構造は、まさに「怪獣マックラー」が狙いを定めてしまう世界。その前に、現実の世界では「バランスの良い電源構成(エネルギーミックス)」の必要性をひとりでも多くの方に知って欲しいと思う。
エネルギーを考えることは、この国のこれからを考えること。日本のエネルギー「エネルギーミックス(電源構成)」について、みんなで考えよう。
調査日:2017年7月10日
調査対象:マイナビニュース会員 男女
調査数:400人
調査方法:インターネットログイン式アンケート
[PR]提供:電気事業連合会