世界各国で社会現象を巻き起こした伝説のTVドラマ『ツイン・ピークス』が復活する!と言われ続けて、早25年。新作『ツイン・ピークス The Return』は満を持して、アメリカのケーブル局Showtime(ショウタイム)で、2017年5月21日に放送を開始した。
筆者は1、2話を観たが、前作以上に謎の嵐が押し寄せてくる仕上がりに驚かずにはいられなかった。近頃のアメリカのTVドラマは、CM前に盛り上がりを作ったり、1章完結にしたりと、飽きっぽい視聴者に合わせたものであふれているからだ。新作は、明らかにこれらのものと一線を画し、1章から最後の18章まで観ないと理解出来ない、長い映画のような仕様。デヴィッド・リンチは現在71歳だが丸くなるどころか、さらに作家性を増している。彼の、視聴者に媚びを売らない、ぶれない姿勢を前にしては、脱帽するしかない。
キャストには、クーパー捜査官役のカイル ・マクラクラン、その上司役のデヴィッド・リンチ、デニス捜査官役のデイヴィッド・ドゥカヴニーら、おなじみのキャスト陣が再登板。さらに、アマンダ・セイフライド、ナオミ・ワッツ、モニカ・ベルッチといった豪華映画スターたちが新たに加わった。日本人女優では、NAE名義で、裕木奈江が出演している。筆者が『プリズン・ブレイク』シーズン5のセットでロバート・ネッパ―を取材したとき、“2016年の1~3月まで、新作の『ツイン・ピークス』の撮影をしていた”と語っていた。『ツイン・ピークス』は前作も新作も登場人物が多いため、撮影が長期化したことは想像に難くない。売れっ子俳優が出演するシーンに至っては、撮影スケジュールの調整にかなり苦労したはずだ。それでもスターたちが出演を果たしたのは、デヴィッド・リンチの作品の一部になりたいという強い希望があったからだろう。
これまでの作品で名曲を効果的に取り入れてきたデヴィッド・リンチ。2011年には自ら作曲し、演奏し、歌う、完全ソロ・アルバムをリリースするほど、音楽に造詣が深いことで知られている。
新作では前作同様、アンジェロ・バダラメンティが音楽を担当。おなじみのテーマ曲を現代風にアレンジし、前作の記憶を呼び覚ましてくれる。また、バンバン・バーに出演するバンドとして、人気シンセ・ポップ・バンド、クロマティックスやデヴィッド・リンチの愛息ライリー・リンチがギタリストとして所属するバンド、トラブルなど、『ツイン・ピークス』の世界観に合った、センスの良い音楽が展開されている。
さらに先日、デヴィッド・リンチの映画『ロスト・ハイウェイ』(1997年)でサウンドトラックを手がけたナイン・インチ・ネイルズことトレント・レズナーが本人役で出演し、劇中パフォーマンスを行っていることが明らかになった。トレント・レズナーはデヴィッド・リンチの大ファンとして知られており、デヴィッド・リンチがナイン・インチ・ネイルズのミュージック・ビデオ「Came Back Haunted」を監督したこともある。熱狂的ファンを持つナイン・インチ・ネイルズのサプライズ出演によって、『ツイン・ピークス The Return』の見どころがまたひとつ増えた形だ。
そんな25年前に一大ブームを巻き起こし、根強い熱狂的ファンを持つ新作。少しだけ内容に触れておこう。
前作でローラがクーパー捜査官に“25年後に会いましょう”と告げた通り、新作は25年後の物語を描いている。舞台は、ツイン・ピークス保安官事務所、ジグザグのシェブロン柄の床がある赤いカーテンの部屋、グレート・ノーザン・ホテル、バンバン・バーら、お馴染みの場所。赤いカーテンの部屋では、小人、巨人や死んだはずのローラらが声を逆回転させながら、クーパー捜査官にある謎めいた言葉を残し去っていく。新たに、ネオンきらめく大都会も舞台として加わり、そこでは、匿名の富豪の指示で、イケメンがガラスの箱を見張る、極秘ミッションを追行中ある悲劇が起きてしまう。今回の新作では、複数の場所で異なるストーリーが同時並行し、さらに謎が深まっていく構成となっている。
ここまで読んでお分かりいただける通り、簡単には紹介できない謎めいた本作。この謎めいた展開こそが魅力の『ツイン・ピークス』。その世界観にどっぷりとハマりたい人は、前作全30話と劇場版1本をしっかりと予習し、謎の解明に挑んで欲しい。
新作『ツイン・ピークス The Return』は7月22日(土)よる9:00から。
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