紙をホールドするクリップがつき、軽量・コンパクト化され“スケッチブックやノートを持ち歩くような感覚”でペンタブレットを持ち出せるようになった「Wacom Intuos Pro Paper Edition」。紙とペンタブレットのバリアフリーをもたらしたこのモデルの発売記念イベントが都内で行われ、ワコムクリエイティブ・ビジネス・ユニット プロダクトマーケティング担当の小幡幸結氏がその特徴や進化を伝えた。
本レポートでは、梵天の村上裕一代表が聞き手となり、ワコム エンジニアリング&QA シニアバイスプレジデントの稲田祐一氏が語った、同モデルの狙いや使い勝手のよさを紹介していく。
――この Wacom Intuos Pro Paper Edition では何がどう進化したのでしょうか?
従来の「Intuos Pro」よりも薄くなり、重量も300~500グラム軽くなりました。また、外形も縦横それぞれ3~5センチほど削り、コンパクトになりましたね。かなり軽く小さくなったと体感してもらえるはずです。もうひとつ注目してほしいのがペーパーモード。従来のペンタブレットは、作業用パソコンの横で使うものでしたが、Wacom Intuos Pro Paper Editionなら、どこでも使えます。紙に書いてすぐにキャプチャーでき、外出先も作業場も、これひとつで完結する。ポータビリティがあるものに進化しました。
――製品自体はコンパクトになりましたが、ペンの読み取り範囲に影響はあるのでしょうか。
ペンの有効エリアは、従来モデルと変わっていません。製品を"薄くする"、"小さくする"のは、スマホなどの、いまどきの電子機器に共通するテーマですが、難易度は非常に高かったです。今回は、背面にアルミを用いることで、剛性を高めました。従来は樹脂を採用していましたが、こうした新しい素材を使うことで、サイズを小さく薄くしても、剛性は高く保つように仕上げることができました。
――Wacom Pro Pen2が使用できるようになりましたね。これは板タブとしては初めてのことでしょうか?
これは初めての展開ですね。性能面では、座標の精度、傾きの精度など、性能といわれるものすべてが、ワンランク進化しました。ユーザーからは「ペーパーモードや芯の進化を実感した」という声を聞きます。また、今回3種類のオーバーレイシートから、描き味を好みに合わせて選べるのですが、その点が好評ですね。
――ザラザラした感覚の選択肢が広がったということでしょうか?
表面に噛むというか、引っかかり感が強いことを実感できると思います。ペン先の素材、オーバーレイシートの表面の粗さも、単に粗さ具合が一種類というわけではなく、いくつかのパラメーターがあるんです。どう調整したら一連の描き味が実現できるかなどを研究してきました。
――このWacom Intuos Pro Paper Edition の最大の特徴といえるペーパーモードについてあらためて教えてください。
ユーザーの多くは、まず紙にスケッチするところからクリエイションをはじめるため、そのスケッチをスキャナーなどでデータ化する手間がありました。それであれば、(ペンタブレットの)液晶モデルでその手間を省略すればいいじゃないかと思うかもしれませんが、そんな簡単なことではありません。それは『必ず紙から始めたい』という人がまだ多くいらっしゃるからです。そこをサポートできたら、というのが発想の原点です。描きながらキャプチャーし、レイヤー化することで、これまでと違うワークフローを体感できるはずです。
――スキャナーが要らなくなると考えていいのでしょうか?
そう思ってもらえるはずです。インクスペースというクラウドサービスを使えば、レイヤーデータは無制限に保存できます。紙を使ったクリエイティブ作業はいろいろありますよね。線画や、その前段階のラフ、スケッチ……。こうした作業は、基本的にPCの傍らで行うものでしたが、このWacom Intuos Pro Paper Editionを使うことで、散歩中や打ち合わせ先、カフェなど、いろいろなロケーションで描けるようになりました。それがいちばんのポイントかなと思っています。
――ペーパーモード用のペンについても教えてください。
ペンの検出技術は Wacom Pro Pen2 と同じです。紙にも描けてデータ化もでき、リアルなペンとセンサーが一体となって動くイメージですね。ゲルインクとボールペンでは、書き出しのタッチが異なります。ユーザーによっては、ボールペンを好む人もいるかもしれませんが、均一なタッチで書くならば、ゲルペンがいいだろうと思い、今回はゲルペンを採用しました。
そのほか、イベントにて稲田氏は「本体に保存したデータをクラウド上にアップし、別の人が手を加えるとか、地球の裏側のクリエイターたちといっしょにデザインを積み重ねていくシーンがこのWacom Intuos Pro Paper Editionで可能になります。クラウドを経由して違う人やモノとつながるといった利用イメージ描けると思う」と、このデバイスがもたらす新たな"クリエイションのカタチ"を示していた。
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