秋ですね。温かいコーヒーが美味しい季節になりました。豆にはちょっとうるさいよ、という方も多いかもしれませんが、専門店のハンドドリップから駅のホームの缶コーヒーまで、それぞれにちがった味わいがありますよね。コーヒーをテーマにしたマンガも然り。今月は、様々なタッチで描かれたコーヒーを巡る人々の物語をお楽しみください。傍に温かいコーヒーのご用意をお忘れなく。

『僕はコーヒーがのめない』

『僕はコーヒーがのめない』
(C)作:福田幸江 画:吉城モカ 監修:川島良彰(コーヒーハンター)/発行:小学館

若手営業マン 花山は缶コーヒーも扱う飲料会社の社員なのに全くコーヒーが飲めない。それなのにも関わらず、やり手の上司・加賀谷に誘われ会社の50周年記念事業となるサードウェーブコーヒーのプロジェクトへ参加することに。大丈夫か、花山?! しかし、実は彼には秘密があって……。

絵に描いたような(絵ですけど)草食系のできない新人・花山。コーヒーマンガなのになぜ? と思うなかれ、実はコーヒーが好きすぎて普通のコーヒーはムリ、という意味での「飲めない」なのでした。それを嫌味と思われることを恐れ人前では極端に自分の「好き」を封印してきた花山ですが、コーヒーの仕事を通じて少しずつ成長、、、するのか?

超絶コミュ障で常にガチガチの花山だが、コーヒーをのむとこんな表情に……
『僕はコーヒーがのめない』
(C)作:福田幸江 画:吉城モカ 監修:川島良彰(コーヒーハンター)/発行:小学館

1巻ではまだビクビクしていますが、コーヒーへの一途な気持ちが何かを変えそうな予感も。コーヒー絡みで登場する人物たちもいろんな意味で香り高く、ビジネスマンガとしても楽しい作品です。

加賀谷たちのプライドをかけた戦いも魅力だ
『僕はコーヒーがのめない』
(C)作:福田幸江 画:吉城モカ 監修:川島良彰(コーヒーハンター)/発行:小学館

『バリスタ』

『バリスタ』
(C)むろなが供未・花形怜/芳文社

イタリア各地のバールを渡り歩き、コーヒーのプロ・バリスタとして腕を磨いてきた蒼井香樹。腕とアタマで多くの客の要望に応えてきたが、ある日、世界的大手バールチェーンに引き抜かれ日本の店舗で働くことに。帰国した香樹を待っていたのは……。

コーヒーを小道具にちょっとした人助けをしつつ、大筋では「ワールド・バリスタ・チャンピオンカップ」での勝負を描く、王道グルメマンガ。コーヒー(特にエスプレッソ)の小ネタも多いのですが、バールという場まで含めたコーヒー文化全般を扱っています。

香樹が淹れたコーヒーを飲めば、マフィアも涙を流す
『バリスタ』
(C)むろなが供未・花形怜/芳文社

しかしまあ、イタリアでバッタバッタと本場の客をデレさせる香樹の小気味良いこと。帰国して思いがけず敵が増えてしまいますが、この流れなら大丈夫。安心していて読んでいられます。ていうか香樹さん、イケメンすぎますわ!

イタリアで鍛えたバリスタの技術は、日本でも通用するのか?
『バリスタ』
(C)むろなが供未・花形怜/芳文社

『旅する缶コーヒー』

『旅する缶コーヒー』
(C)マキヒロチ/_実業之日本社

地元に戻った元グラビアアイドル、久々に素直な恋をしたサラリーマン、災難続きの中年デザイナー、夫の浮気を疑う妻……。いろいろな人の日常の中、風景のように存在する缶コーヒー。スペシャルじゃなくどこにでもある、その味わいがココロに沁みるオムニバス。

あれは学生の頃。肌寒い秋の早朝、学祭の準備で工具室の列にじっと並んでいたら遅れてきた先輩が缶コーヒーをくれてさ……なんて忘れかけた記憶がじわじわっと思い出される作品。

『旅する缶コーヒー』
(C)マキヒロチ/_実業之日本社

いつもどこにでもあって、何かの思い出と結びついている缶コーヒーだからこそ刺さる、そんな小さなお話です。ツウなコーヒーはもちろんおいしいものですが、缶コーヒーでなければ共有できなかった時間もあるのかも。

先輩の部屋から切り立つ崖まで、様々なシチュエーションが描かれる
『旅する缶コーヒー』(C)マキヒロチ/_実業之日本社

『珈琲時間』

『珈琲時間』
(C) 豊田徹也/講談社

映画監督を名乗る謎のイタリア人中年と、彼にたかられたチェロ奏者の女性。私立探偵に人捜しを頼む少年。銃を向け会う二人の男。そして現実をふわっと離れたシュールな世界。様々な舞台で様々な人たちが過ごす時間の断片。コーヒー一杯ほどの苦く美しく香る時間を集めたオムニバス。

素朴で人間的で少し物悲しくて、でもどこかコミカルで、何よりべらぼうに絵が上手い。軽みもありつつ、静謐な映画を見ているような独特の空気と時間。『アンダーカレント』でマンガ好きから絶賛された豊田徹也のセンスの塊っぷりといったら言葉で説明しようもありません。

普通の日常が描かれるのかと思いきや、ロボットが出てきたり……
『珈琲時間』
(C) 豊田徹也/講談社

ぼーっとコーヒーを飲んでいて、ふと過去の何かに気付いたり、ここではない世界のことを考えたり。そして飲み終えてこちら側に戻ってくると、何かが少しスッキリしたような、失くしたような、整理したような。そんな感覚を味わえる、読む珈琲のような一冊です。

海面上昇で沈みかけている近未来の町が舞台の話も
『珈琲時間』
(C) 豊田徹也/講談社

『珈琲いかがでしょう』

『珈琲いかがでしょう』
(C)コナリミサト/マッグガーデン

街角でいい香りに誘われて行った先には……。方々の街を放浪する移動珈琲屋「たこ珈琲」。いい豆を丁寧に、そしてなぜか人の心を見透かすように、店主・青山一が出会う人一人ひとりに淹れるコーヒーは、彼ら・彼女らを少しだけ変えていきます。イケメンだけど微妙にアヤシイその店主、何やらワケありの様子で……?

設定からしていいハナシでまとまりそうかと思いきや、ゆるい絵とコミカル風味なノリでジメッとしない読みやすさ。それでいて苦味が効いているのは、登場人物たちの悩みがどこかリアルだからかも。

主人公のイケメンバリスタ青山
『珈琲いかがでしょう』
(C)コナリミサト/マッグガーデン

1話完結ではありますが、回を追うにつれて増してくる青山の怪しさに、続きが気になって仕方ありません。イケメンなのに。空気を読まないフリをして見透かすその目が怖いわ。イケメンなのに。巻末に収録されたレシピにも注目です。

青山のコーヒーに救われた登場人物たちだが、青山自身は無自覚なようで……
『珈琲いかがでしょう』
(C)コナリミサト/マッグガーデン

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