7月1日、ティントリのユーザーイベント「Tintricity 2016 Tokyo ~ティントリユーザーの集い~」(以下、Tintricity)がパレスホテル東京で開催された。日本での開催は2回目となる同イベントには、日本のユーザー約100名が参加し、同社の好調な業績や最新情報が発信された。

Tintricity 2016 Tokyo ~ティントリユーザーの集い~

ワールドワイドの売上高は前年比2.4倍超を維持

仮想化環境に特化したストレージ「VMstoreシリーズ」を展開するティントリ。2011年に最初の製品を出荷後、ワールドワイドの売上高は前年比2.4倍超の成長を維持している。国内では、日本法人を2012年に設立し販売を本格化させ、2014年に富士通をパートナーとしてOEM製品「ETERNUS TR series」の展開を開始。現在では、ワールドワイド売上高の約10%を占める規模にまで成長した。

さらに、顧客満足度はほぼ100%で、リピーター顧客が特に多いのが特徴だ。製品の新規購入から18カ月以内には、新規購入時の2.7倍もの追加投資が実行されている。そうしたユーザーからのさまざまなフィードバックを吸い上げ、新製品開発に生かすことで、さらに顧客満足度を高めるという好循環をつくり出しているのだ。Tintricityは、そんな国内ユーザーのパワーを実感できるイベントとなった。

米ティントリ CEO兼Chairman ケン クライン氏

米ティントリ Office of the CTO ブランドン サーモン氏

同イベントの口火を切ったのは、米ティントリ CEO兼Chairmanを務めるケン クライン(Ken Klein)氏だ。クライン氏は、ティントリの取り組みとビジョンを説明し、同社製品の導入成果を紹介した。

「ある大手製造業ではティントリの導入によって、ストレージの設置面積を約70%削減、電力コストを約90%削減しながら、パフォーマンスを6倍に、管理工数の95%の削減を実現しました。VM-aware storage (VAS)はビジネスとIT管理に大きなインパクトがあります」(クライン氏)

また、Office of the CTOを務めるブランドン サーモン(Brandon Salmon)氏も登壇。サーモン氏は、ティントリ製品のロードマップを紹介し、ユーザー重視の技術開発を進めることを強調した。

「最新バージョンの製品では、スケールアウト、分析、自動化、データ保護などの機能を強化しています。これらは日本ユーザーからのフィードバックも生かされています。今後も、ユーザーが望む機能を製品にとり入れながら、機能を強化していきます」(サーモン氏)

パネルディスカッションでユーザー6社が明かした、ティントリ導入のメリット

同イベントの目玉となったのは、ユーザーによるパネルディスカッションだ。パネルディスカッションには、NTTコムウェア 太田竜児氏、カシオ計算機 原田龍雄氏、TKC 三坊鉄平氏、電算システム 堀隆雄氏、富士通 長澤武則氏、ユニアデックス 菅原清志氏の6名が参加。週刊BCN 編集長の畔上文昭氏をモデレーターに、ティントリ導入の経緯、具体的な成果、気をつけるべきポイントなどを紹介した。

同イベントの目玉、ユーザーによるパネルディスカッション

なぜティントリを導入するのか?

「なぜティントリを導入するのか」この問いに対して「管理性の高さ」を強調するのが、NTTコムウェアの太田氏だ。NTTコムウェアはIaaSサービス「SmartCloud ResourcePool」の提供基盤にティントリを利用している。仮想化環境におけるVM負荷の管理やボリュームやLUNの管理に課題を抱えていたことから、2012年8月にティントリを導入した。導入台数は今では20台を超えるという。

「ティントリはVM単位で性能が把握でき、ボリュームやLUNの管理も必要ないため、運用管理が非常に楽です。VMのパフォーマンスが上がらないときにユーザーから問い合わせがあるのですが、原因はインフラではなくアプリ側にあると自信をもって伝えられるようになりました」(太田氏)

NTTコムウェア 太田竜児氏

またカシオ計算機は、管理コスト約90%削減という費用面での成果を挙げた。

「FCとiSCSIでストレージを管理していましたが、コストと手間がかかることが課題でした。管理の面倒さが軽減されると提案され、ストレージをティントリに集約。すると、運用管理が楽になったのはもちろん、管理コストを約90%も削減することができました。社内ユーザーへのサーバの提供も迅速にできるようになり、とても満足しています」と原田氏は話す。

カシオ計算機では、2014年に仮想化基盤のストレージをティントリに刷新。おもに社内ユーザーに提供するCAD関連のサーバを稼働させている。各種LinuxとWindowsが混在する環境で、仮想マシンの台数はティントリ1台で150台を超える規模だ。

従来型ストレージの課題

カシオ計算機 原田龍雄氏

「そもそもティントリを導入する以前の従来型ストレージには、どのような課題があるのか」この題目に対し、「使っていると遅くなる問題」を指摘したのが、TKCの三坊氏だ。TKCは2014年9月に富士通の「ETERNUS TR 650」を2台導入。会計事務所や地方公共団体、中堅・大企業に対して情報サービスを提供しており、その提供基盤にティントリを利用しているという。

「ティントリ導入前に使用していた他社のストレージでは、導入から数年経つとパフォーマンスが悪化するという問題に悩んでいました。導入当初は5~6時間で済んでいた夜間のバッチ処理が、数年後には12時間かけても終わらなくなりました。また、官公庁向けのサービスを中心に起こるブートストームも課題でした」

ティントリ導入後は、バッチ処理時間を約70%削減、運用負荷の軽減、起動時のレイテンシー1~3ミリ秒という遅延なしでの稼働を実現している。現在では、事業拡大とともにティントリのストレージを13台にまで拡張しているという。

TKC 三坊鉄平氏

また、「拡張のしにくさ」という課題を挙げたのが電算システムの堀氏だ。電算システムは岐阜県を本拠に、2011年から仮想化技術を利用したIaaSサービスを提供している。Hyper-VとVMwareのマルチハイパーバイザ環境で仮想化基盤を構築し、FC-SANストレージを利用していたが、ストレージ増設の際の作業負荷の増大が課題となっていた。

「マルチテナントサービスであるため、長時間の停止は不可能です。運用中にどう容量を拡張するか、細心の注意を払いながら増設をする必要がありました。エンジニア5~6人が張りつきで作業することもありました」と堀氏は苦労を語る。

ユーザーかつ販売パートナーからの声

そうして同社は、2016年にティントリを採用。本格運用から数ヶ月続けて、増設の容易さを実感しているところだという。

電算システム 堀隆雄氏

ユーザーでありベンダーでもある立場からティントリを評価したのが、富士通だ。富士通はOEMとしてティントリ製品を提供するほか、社内向けのソフトウェア開発用サーバの提供基盤としても利用している。社内向けには、2008年から6拠点に分散していたソフトウェア開発用サーバを沼津工場に仮想化して集約。2011年から自社製クラウドミドルウェアを活用して、仮想オンデマンド環境を構築し、全社にサービス展開しているという。システムは、「PRIMERGY」13台と「ETERNUS TR850」1台で構成され、2015年8月にティントリを導入した。

長澤氏は次のようにティントリを評価した。「以前はプール単位などの大きい単位でしか性能が見えず、苦労していました。これに対してティントリは、VM単位での性能情報がわかるうえ、ほとんど管理の手間を必要とせず運用できる点が大きなメリットです」

富士通 長澤武則氏

続いて、「実際に管理らしい管理はしていません」と話すのは、ユニアデックスの菅原氏だ。ユニアデックスでは、社内ユーザー2,000人用の仮想デスクトップソリューション『VMware Horizon View』のストレージとして『Tintri Vmstore T540』を2台導入した。2013年8月からの導入だが、大きなトラブルに遭遇することなく順調に運用できているという。

「管理画面を見ることもなく、基本的に何もせずに放置しているような状態です。一斉電源投入や数千台のマスターイメージ更新などのタイミングで時々確認を実施していますが、充分に性能が高いので、ストレージネックになることはほとんどありません」(菅原氏)

さらにディスカッションでは、「運用後に気づいたことは」「トラブルに遭遇したことは」といったテーマを展開。それに対し、「Web UIで原因を即時に特定できるのでトラブル対応が容易になった」(NTTコムウェア 太田氏)、「コントローラが頻繁に切り替わるトラブルに遭遇したが迅速なアップデートで解消できた」(ユニアデックス 菅原氏)といった意見が出た。

今後の取り組みについて

ユニアデックス 菅原清志氏

「今後の取り組みは?」という問いについては、「『VMware vCenter Site Recovery Manager』と『Tintri Replicate VM』を連携させた、サービス継続基盤を検討中」(TKC 三坊氏)、「『Tintri SyncVM』を使って、管理サーバのバックアップに活用したい」(富士通 長澤氏)などといった展望を明かした。

新機能であるVMスケールアウトやオールフラッシュ製品への期待も高い。NTTコムウェア太田氏は、「20数台を稼働させると、有効活用できていないストレージもでてきます。VMスケールアウトでそのあたりをうまくロードバランスできるのではと期待しています」と話した。

また、TKCの三坊氏は「日中は常に99%のキャッシュヒット率を出していますが、夜間バッチで20%程度にまで落ち込むことがあります。そうしたケースにも対応できるように選択肢を増やすという意味でオールフラッシュに期待しています」と話した。

このほか、パネラーのみならず会場の参加者もまじえた「◯×アンケート」が実施され、GUIの使い勝手の良さや、Automation Toolkitを使った自動化、オールフラッシュへの期待、VMスケールアウトなどの新機能などについて、熱心な意見交換が行われた。特にオールフラッシュストレージについては、多くの参加者が◯を挙げ、今後のオールフラッシュ導入への意欲が感じられた。

会場の参加者もまじえた「◯×アンケート」