電子ピアノでありながら、グランドピアノの「音色」や「タッチ」を徹底的に追求したカシオ計算機の「CELVIANO Grand Hybrid」(セルヴィアーノ グランドハイブリッド)。ドイツの世界的なピアノメーカー、C.ベヒシュタイン社が開発に関わったという本製品に、ピアノ教室を運営している先生はどのような印象を抱くだろうか? 従来の電子ピアノとの違いや、グランドピアノに近いと思うポイントなどを挙げてもらった。
指先の感覚に忠実とは?
お話を伺ったのは、都内でピアノ教室を運営する笹原玲子さん。レッスンではグランドピアノとCELVIANO Grand Hybrid(以下、CELVIANO GH)の2台を使い、セッションをしながら生徒にアドバイスしているという。さっそくCELVIANO GHの印象を聞いたところ、「指先の感覚を忠実に再現してくれるから、曲の情感をきちんと伝えられますね」との答えだった。これは、一体どういうことだろうか? ピアノが弾けない筆者にも分かるよう、できるだけ噛み砕いて説明してもらった。
先生いわく、まず音色とタッチはワンセットであるという。「実際に出ている音と、指の感触は連動します。例えば、しっとりとした音色が出るピアノは、鍵盤が手に吸い付いていると感じます。逆に軽い音しか出ないピアノは、手から離れたところで鳴っている印象です」と笹原先生。CELVIANO GHは前者で、鍵盤が手に吸い付く感触が得られるピアノだという。
音の広がり方についても満足と話す。「グランドピアノでは、低い音や高い音など、弾く鍵盤が変われば音の立ち上がり方、鳴り方が変わります。従来の電子ピアノは、これが再現できておらず違和感がありました。CELVIANO GHはスピーカーの配置や位相がよく考えられていて、音の広がり方が自然に表現できていますね。これまでの電子ピアノとは目指している到達点が違う、ということを肌で感じ取りました」と笑顔に。
鍵盤の重さについては太鼓判を押した。「従来の電子ピアノは鍵盤が軽く、押すとすぐに戻る感覚でした。でも重くすれば生のピアノに近付くのか、と言えばそう単純な話でもありません」(笹原先生)。CELVIANO GHは軽すぎず重すぎず、グランドピアノと同じくらいの重さが実現できており、発音のタイミングも良いという。これらの特徴は、連打のしやすさにも関わってくる。実際、CELVIANO GHなら速いパッセージの楽曲も弾きやすいとのことだ。これらは、グランドピアノと同じ木の素材を使い、表面加工を施した木製鍵盤と、グランドピアノと力学的に同様の荷重を追求したアクション機構によって実現している。
また、「強く弾けば音も大きくなるけど、それがわざとらしくないんです。センサーの感度なんでしょうけれど、よく出来ていると思いました。逆に、弱く弾けば小さい音も出せます。これはピアノの演奏上とても大事なテクニックで、従来の電子ピアノはうまく表現できていませんでした。例えばショパンには消え入るように、静かに終わる曲があって、それがこのピアノは演奏できます」とも。
音が減衰していく様子についても評価した。グランドピアノは、良いタッチで弾くと音が長く伸びた後に減衰していくそうで、これがCELVIANO GHでは実現できているという。さらには、「1音1音の完成度はもちろん、曲の中でどう響くかもピアノの命」と話した上で、和音を弾いた際に音が綺麗に響き合う点もお気に入りのポイントとして挙げた。
音色、音の広がり方、鍵盤の重さ、連打のしやすさ、大きい音や小さい音への反応、音の減衰の仕方、和音の響き……。これらの要素がグランドピアノに近づいたからこそ、「指先の感覚が忠実に再現でき、曲の情感がきちんと伝えられる」と感じたのだろう。
笹原先生は「鍵盤のタッチがグランドピアノに忠実です、と言われただけでは、CELVIANO GHの本質は正しく伝わらないでしょう。小さく弾いたり、長い音の減衰を聞いたりすることで良さが分かります」と話したところで、思い立ったように「これ、お客さんにすすめるときのセールスポイントにしたら?」と笑いながら提案してくれた。