前編では、EX-wordの初代モデルから約10年間の歴史を追ってきた。2度の大きな失敗を経て、ひとつの完成形を見たEX-wordは、市場でも確固たる地位を築きつつあった。今回の後編では、10年目から現在までを振り返る。
「失敗したから」続いてきた - カシオの電子辞書「EX-word」20周年の歩み(後編) |
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つくり手とユーザーを結ぶ「知る・聞く・学ぶに、歓びを」という想い
―― 2005年のLPシリーズになると、今のモデルとほとんど変わらないですね。
大島氏「はい。ここからコンテンツの多様化が始まります。辞書をやりつくした感があったので、高校生は何ができれば便利なのかと、また直接聞いてみたんです。
そうしたら、試験対策、日々の勉強、資格対策だと。英検2級やTOEICの対策も含め、効率良く勉強するにはどうしたらいいのか、悩みを抱えていることがわかったのです」
―― なるほど~!
大島氏「この時期、半導体メモリーが低価格になったのも追い風でした。そこで、スタンドアロン型からSDカードで好みのコンテンツを追加できるようにしたのですが、第二外国語を履修する大学生から非常に好評でしたね」
上田氏「個々で好きなカード(コンテンツ)を追加できるのが、この世代(モデル)の特徴です。自分が持っているEX-wordを大学に入っても使いたいけど、第二外国語が追加できたらいいのにという要望が大きかったんです」
―― ところで、EX-wordのキーワードとして「学び」や「学習」を耳にする機会が多いですが、そのコンセプトを"言語化"されたのはいつごろですか?
上田氏「ちょうどこのころですね(2006年)。10周年で「知る、聞く、学ぶに、歓びを」というキャッチコピーをつくり、11年目の2007年、SWシリーズでロゴを変えています」
大島氏「デジタル機器が全般的にイケイケの時代でしたから、うっかりするとスペック勝負で不要な機能をつけたりする方向に流れやすかったんです。
自分たちを戒める意味でも、何を主眼に、何を大事にして、モノをつくって売っているのかを明文化しておくべきでしょうと。すぐに効果は出なくても、段々と、制作者とお客さまの間に信頼関係ができるんじゃないかと思ったんですよね」
上田氏「市場には、ワンセグチューナーを搭載した電子辞書も出回っていました。カシオも倣うのかという話になって、議論をした結果、EX-wordは"学び"に特化すべきと落ち着いたエピソードがあります」