欧州最強の称号をかけて、屈強な大男たちが魂をほとばしらせる季節が今年も到来した。ヨーロッパのラグビー伝統国が覇権を競う「6カ国対抗戦」が6日に開幕する。真冬のヨーロッパを熱く彩りながら、3月20日の最終節まで計15試合が繰り広げられる。

ティエリ・デュソトワール(FRA)、クリス・ロブショウ(ENG)、グレイグ・レイドロー(SCO)、サム・ウォーバートン(WAL)、ポール・オコンネル(IRL)、セルジョ・パリッセ(ITA)
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強豪・南アフリカを「世紀の番狂わせ」で下した、昨秋のワールドカップにおけるエディージャパンの大活躍もあって、日本でも一気に注目されるようになったラグビー。「シックス・ネーションズ」の呼称でも知られる「6カ国対抗戦」は、ラグビーの原点を堪能させてくれる戦いが目白押しとなる。

「シックス・ネーションズ」とは?

ラグビーワールドカップが創設され、オーストラリアとニュージーランドで第1回大会が共同開催されたのは1987年。「6カ国対抗戦」はワールドカップよりも、さらに一世紀以上も古い歴史をもっている。イングランドとスコットランドの間で、初めてテストマッチが行われたのは1871年のこと。刺激されるように1875年にアイルランド、1881年にはウェールズの代表チームが相次いで結成され、それぞれイングランドとのテストマッチに臨んだ。必然的に「総合成績で順位を決めてはどうか」という気運が盛り上がる。1882年から翌年にかけてアイルランド対ウェールズを除くすべてのカードが組まれ、イングランドが3戦全勝で美酒に酔ったのが第1回大会とされている。

その後、フランスの加入をもって、「5カ国対抗戦」あるいは「ファイブ・ネーションズ」と呼ばれるようになったのは1910年。フランスは選手に報酬を払ったとして一時除外されるが、第二次世界大戦後の1947年に復帰。進境著しいイタリアを迎え入れた2000年から、現在の大会方式となった。

エディー・ジョーンズがイングランドのヘッドコーチに!

19世紀からお互いにライバル心を燃やし続けてきた4カ国は、強力フォワードを前面に押し出すスタイルで共通項をもつ。スクラムやモールなどで体をぶつけ合い、徹底した地上戦で地域を奪い合う戦い方を伝統としてきたが、なかでも注目されるのがラグビーの母国イングランドだ。世界の舞台でなかなか勝てなかった日本代表を卓越した手腕で急成長させ、世界中にサプライズを与えたエディー・ジョーンズ氏が同国のヘッドコーチに就任したのが昨年12月。日本のファンの間でもすっかり有名になった56歳の名将が、新たなチャレンジを始める舞台が今回の「6カ国対抗戦」となる。

イングランドはフォワードによる肉弾戦を特に重視し、バックスにボールが出ても回さずにキックを選択するケースが多い。いつしか「世界でもっとも退屈なラグビー」と揶揄され、自国開催だった昨秋のワールドカップでは予選プール敗退という屈辱も味わわされた。

ジョーンズ・ヘッドコーチとの契約期間は、日本でワールドカップが開催される2019年シーズン終了後までの4年間。ラグビーの母国を、イングランド史上で初めての外国人ヘッドコーチとなるオーストラリア出身のジョーンズ氏がどのように変革させていくのか。

そのイングランドが開幕戦で激突するのがスコットランドだ。昨秋のワールドカップで日本代表に唯一の黒星をつけた相手として記憶に新しい伝統国は、全8回のワールドカップにおいて、2011年大会を除いた全てでベスト8以上に進出してきた。

キックで正確に地域を取り、強力フォワードを中心に仕掛けてくる戦い方は正攻法ゆえにブレがない。愚直に繰り返される肉弾戦の前に、日本代表も後半に入って失点を重ねてしまった。それだけに、ある意味でリベンジとなるジョーンズ・ヘッドコーチのさい配が楽しみだ。

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そのほかの国の状況は?

大会3連覇を狙うアイルランドは、世界中にファンが多いことでも知られている。理由は単純明快。フィフティーンの固い結束力を武器に、体を張ったひたむきな守備で勝利を目指す。ナショナルカラーでもあるグリーンのジャージに宿る不撓不屈の魂は、国境を越えて見る者に感動を与え続ける。

ウェールズは1970年代に黄金時代を迎え、ユニフォームのカラーから「レッド・ドラゴンズ」の異名で畏怖された。大会優勝回数でもイングランドの36回を抑えて38回でトップに立つ古豪は、強力フォワードにバックスによる展開を融合させた伝統のスタイルで3大会ぶりの頂点を目指す。

ワールドカップで3度の準優勝を誇るフランスは、フォワードによる肉弾戦にバックスのランとパスをミックスさせた華麗なスタイルで25回の大会優勝を勝ち取ってきた。フォローする選手が泡のように湧き出てはパスをつなぐ攻撃は、ファンから「シャンパン・ラグビー」と命名されて愛されている。

実績と実力で5カ国からやや離されているイタリアは、2013年大会の4位が最高位。残念ながら最下位が定位置となり、昨秋のワールドカップ後には数多くのベテラン選手が引退した過渡期にもあるが、協会を挙げてラグビー強化にかける熱意の強さは並々ならぬものがある。

華麗なトライの応酬というよりは、1点でも相手を上回ってやるという執念と国を背負うプライドが、フォワードによる肉弾戦に集約されるのが「6カ国対抗戦」の最大の醍醐味。全勝優勝を果たした国には「グランドスラム」の称号が与えられ、こちらはイングランドが通算12回でトップに立っている。

なお、WOWOWでは同大会の全15試合を生中継する。大会初日は無料放送でお届けする。エディー・ジョーンズがヘッドコーチに就任したイングランドの運命はいかに?欧州最強はどの国になるのか?是非、WOWOWで確認してみてほしい。

著者:藤江直人
各種スポーツを鋭意取材中のフリーランスのノンフィクションライター。1964年、東京都生まれ。早稲田大学第一文学部卒。スポーツ新聞記者時代は日本リーグ時代からカバーしたサッカーをはじめ、バルセロナ、アトランタの両夏季五輪、米ニューヨーク駐在員としてMLBを中心とするアメリカスポーツを幅広く取材。スポーツ雑誌編集などを経て2007年に独立し、現在に至る。

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