皮膚科診療を行なう医師向けに提供されている、カシオ計算機のクラウドサービス「ダーモスコピー学習用サービス」。2015年6月から「CMDS」の名称で無料のトライアルサービスを行ってきたが、12月17日にバージョンアップを行ない、学習機能をさらに強化して名称も新たに「CeMDS」として無料サービスを開始した。今回、「CeMDS」に症例データを提供した、千葉大学大学院医学研究院の外川八英 助教、千葉大学医学部附属病院の山本洋輔 助教にダーモスコピー学習用サービスについて聞いてきた。

千葉大学大学院医学研究院の外川八英 助教(左)と千葉大学医学部附属病院の山本洋輔 助教

ダーモスコピーは、ホクロなどの肌の色素が変色した部分を観察して診断する手法だ。ダーモスコープと呼ばれる拡大鏡で該当部分を拡大することで、そのホクロが悪性黒色腫(メラノーマ)などの悪性疾患か、それとも単なるホクロなどの良性のものか、といった診断が行われる。2006年4月に保険診療の適用となったことでダーモスコピー検査は普及し始めているが、ここ10~15年で発展した新しい技術。2000年の国際会議で世界的に所見を統一する動きがあり、2010年には血管の見え方に注目した改訂版も出されたそうだ。同検査で撮影した画像をもとに正確な診断を下すためには、多くの症例に接して経験を積む必要がある。開業医の場合、皮膚腫瘍の来院者数が大学病院の規模とは異なるので、症例に基づいて学べる機会が豊富とはいえないケースもあり、新しい情報を追いつつ技術も向上させるのは容易なことではない。

このダーモスコピー検査への知見を高めるのに役立つのが、カシオ計算機が提供するダーモスコピー学習用サービスだ。今回、「CeMDS」無料サービスの公開にあたり、「国公立病院で悪性の皮膚腫瘍を最も扱っている」という千葉大学医学部附属病院皮膚科の所見付き症例データを初収録した。これは、豊富な診断経験があり国際会議にも参加している千葉大学大学院医学研究院の外川助教、手術を担当する千葉大学医学部附属病院の山本助教の協力により実現したものだ。

千葉大学医学部附属病院

千葉大学医学部附属病院の皮膚科には、年間2,000人にも及ぶ新患が訪れ、そのうち200名程度に悪性腫瘍が認められるという。完全紹介制となっていることもあり、通常の皮膚科診療の現場よりも悪性腫瘍の確率は高い。こうした背景もあって、皮膚科では来院者の多くにダーモスコピー検査を行い、その際に画像を撮影している。今回、年間およそ5,000~6,000枚の膨大な症例データから、山本助教が症例画像をピックアップし、外川助教が改めて所見を付加した。こうして「CeMDS」に収録された症例データは、今後も拡充されていく予定だ。

「CeMDS」の新機能である診断トレーニングを使えば、効果的な学習が可能だ。利用者は、まずダーモスコピー検査の画像を見て、自らの所見をもとに病名を特定する。外川助教の所見などを改めて表示することもできる。紙の教科書などでは症例自体が少なく、画像にすでに所見が付いているため、「つい分かった気になってしまう」と外川助教。最初にまず、自分で所見を考えることができるため、「学習効果が高い」と説明する。

利用者は1日1問、症例データを元にクイズ感覚で学習できる。外川助教も、改めて症例データを診断して所見を付けていくという作業を行なうことで自身の再学習に役立ったそうで、「類似した画像を数多く見ると人間の視覚認識力を高められる」と指摘。例えば日本人同士では些細な顔の違いを見分けられるが、外国人の顔はみな似て見えることがあるように、毎日似たような病変をダーモスコープで見ていると、自然と微妙な違いを判断できるようになるという。ほくろが先天的なものだと左右対称でキレイな形だが、悪性黒色腫は形がいびつになっているなど、その見た目で一定の診断ができるため、ダーモスコピー検査の重要性を外川助教は強調する。

もちろん、生まれつきのほくろで「見かけが悪性腫瘍に類似しているものもある」し、ガンの特徴を複数持っているのにそうではない場合もあって、診断は難しい。最終的には、疑わしい部分の細胞を精密検査するしかないが、開業医がガンを疑って大学病院などに患者を紹介しても、受診後の検査や手術は順番に行なわれる為、結果が出るまでに3ヶ月から4カ月かかる場合もあり、開業医自身がその結果を迅速に把握しづらい現状があるという。

こうした状況は、開業医がダーモスコピー検査を学ぶ機会の損失にもつながっていた。「ほくろを取りたい」という来院者の悪性黒色腫に気付かずメスを入れてしまう可能性を排除するためにも、ダーモスコピー検査は重要であり、皮膚科診療に携わる医師の診断技術向上は不可欠だ。学習用サービスには、症例データに加えてデジタル画像処理技術を搭載。この画像処理技術は、田中勝 教授(東京女子医科大学 東医療センター)・佐藤俊次 院長(さとう皮膚科)とカシオが共同で開発したもので、構造明瞭画像、血管強調画像、血管蛍光色画像の3種類の画像へ変換が可能。画像を変換することで、より所見を出しやすくなる。

1日1問出題される症例画像も学びやすい画像に変換できる

外川助教は、「注目すべきは血管強調画像」と指摘。「腫瘍などの表面に見える血管は撮影した画像そのものでは分かりづらい場合も多い」とのこと。これを変換して強調表示すると「かなり分かりやすくなる」そうだ。実際、学会の企業展示でカシオが参考出展した際には、多くの皮膚科医がこの技術に興味を示し、ニーズの高さをあらためて実感したという。

千葉大学附属病院皮膚科のように、年間200人の規模で悪性腫瘍の患者が訪れるような病院は少ない。それだけどうしても医師の経験が不足しがちになる。一定レベルの医師でも、難しい症例を判断するには、さらなる経験が必要であり、今回のダーモスコピー学習用サービスは、経験を積みたい医師にとって心強いサービスになりそうだ。

(マイナビニュース広告企画 : 提供 カシオ計算機)

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