筆者「スター・ウォーズの最新作ってもうすぐ公開なんですよね? 映画館はかなり混むだろうし、今回はDVDまで待ったほうがいいかな」
Y氏「山田井さん、今回のスター・ウォーズは映画館で見るべきですよ。MX4Dって知ってます?」
別件の打ち合わせのために訪れた喫茶店でボヤいていると、担当編集Y氏から突然そんな言葉が飛び出した。
筆者「あー……名前は聞いたことあるような……」
首を傾げる筆者に、Y氏は「それはよかった」とニヤリ。アトラクション型4Dシアター「MX4D」について興奮気味に話し始めた。
Y氏「MX4Dはアトラクション型の映画鑑賞スタイルなんです。日本では2015年の4月から始まったばかりの新しい鑑賞スタイルなんですが、これが『ジュラシック・ワールド』を上映した時は、連日完売でチケットがまったく手に入らないほどの人気で、とにかくもう、すごいんですよ!! 」
そう言いながらY氏がドヤ顔で以下の動画を見せてきた。
「MX4D」は今までTOHOシネマズでは、首都圏の3館のみで導入されていたのだが、今冬らは大阪、京都(2016年春導入)、兵庫などを含む8館に導入する事を発表しており、待望の映画『スター・ウォーズEP7』も楽しめるというのである。
筆者「たしかにすごそうだけど、お高いんでしょう?」
Y氏「大体3,000円くらいですね」
※通常の鑑賞料金 + 1,000円~1,200円
高っ! たっっっっっか!!!
「シートを揺らす」とか「風を吹かせる」とか、その特殊効果ってどれも自宅でやろうと思えばできてしまうものなんじゃないの? 自宅ならお金もかからないし、簡単に再現できるでしょ?
あからさまに疑いの目を向ける筆者に
Y氏「それなら、実際にやってみますか」
えっ?
Y氏「やってみましょう。MX4Dの再現」
……かくして、「映画館の臨場感を自分たちで再現できるのか」という無茶な企画がスタートしたのだった。
早速検証スタート!
ここで助っ人として、編集M氏が合流。
今回は某ヒット映画を見ながら、MX4Dの特殊効果を再現することにする。
突風を顔に吹きかける! 手作り空気砲が登場
MX4Dでは「エアーブラスト」で、瞬間的な突風を再現するが、ここで使うのはダンボールで作った「空気砲」である。某サイエンスエンターテイナーが番組でよく使うアレだ。
風はいい感じなのだが、ダンボールを叩く音が思い切り聞こえる……。
Y氏「これ終わった後、ダンボールどうすればいいんでしょうね……せっかく作ったのに……」
Y氏のボヤキは聞こえないふりをして、続いての演出は映画により臨場感を与える「香り」である。
劇中の香りを漂わせる「セント」を本物のフライドチキンで……
MX4Dの特殊効果の1つ「セント」では、劇場に香りを漂わせることができるのだが、ここでは、某チェーン店で買ってきたチキンを使おう。両サイドから差し出されるチキン。うーん、いい香り……なのかな。
正直、けっこう顔の近くまで近づけないと香りが届かないので、視界にちらちらとチキンが入ってしまう。ぜんぜん映画に集中できない。
そして、食事シーン終了と同時にチキンは2人の胃袋へ。
……いや、自分たちで食べるのかよ!
そこは食べさせてくれるんじゃないのかよ!
Y氏「MX4Dに食事ができる仕掛けはありませんからね」
ニヤリと笑うY氏。なんだか激しく納得がいかないんですけど……。
「ウォーターブラスト」は霧吹きで
続いて「ウォーターブラスト」だ。突然の雨のシーンなどに合わせて水しぶきが飛んでくるというものなのだが、今回は霧吹きで代用する。
当たり前だが、まったく水の加減ができないので、調子に乗って霧吹きをプッシュしまくるY氏。最初は「おっ」という感じだったのだが、だんだん激しく濡れてきて前が見えなくなってしまった。これはダメ!
次は「ランブラー」、地響きを起こす装置だけど……。
なんだろう、このあまりにもシュールな絵は……。
そして、ごめん。ぜんぜん揺れてないよ……。
首筋にゾクッとする感覚を再現する「ネックティクラー」を吐息で再現してみた
これはダメだ。何がダメって絵面がダメだ。
ホラー映画などに使われる演出らしいが、違う意味でホラーである。
爆発シーンで大活躍の「ストロボ」はカメラで……
映画でよくある爆発シーンで強烈な閃光を走らせる「ストロボ」。カメラで代用してみたけど、電池を思い切り食いそうだな、これ。
MX4Dのために、いちいちカメラとストロボを用意するのかよ、というツッコミを入れられそうである。
硬い背もたれの椅子でも背中をつつく感触は再現できるか
背中をつつくような感触を再現する「バックポーカー」。同じことを椅子でやってみたが、再現するのがなかなか難しい。
「つつかれている」というよりは「叩かれている」という感じで、なーんかしっくりこないのである。……まぁ、そりゃそうなんだけど。
人力でシートを動かすと黒子の腰が犠牲になることがわかった
……そろそろ無理が見えてきたところで、いよいよ真打ち。
MX4Dでは映像に合わせてシートが前後左右に動くのだが、もちろん今回は人力で再現。
……がんばってくれた。Y氏とM氏はすごくがんばってくれたよ。
だけど、持ち上げるときに「せーの!」って掛け声をかけられると、映画の世界から現実に引き戻されるんだよね……。
あと、船酔いしそうです。映画を見ながら船酔いするってどういうことだよ。
ということで、いろいろやってみたものの、結局のところMX4Dの再現には無理があった。チープすぎるし、そもそもコストがMX4Dの追加料金以上にかかるし、何より2人の腰が限界を迎えてしまった。
ただ、MX4Dが今までの映画とはまったく未知の体験を与えてくれそうだということは、何となく理解できた。その意味では、2人の腰の犠牲も無駄にはならなかったということだろう(無理やり)。
これまでの映画体験の延長でMX4Dを語ることはできない。この感覚、ぜひ一度体験してみてほしい。わざわざお金を払って映画館に行く価値とはこういうことなのだと納得できるはずだ。
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