WOWOWでは8月15日・16日の2日間、『実写×アニメ「ルパン三世」スペシャル』と題し、小栗旬ら豪華キャスト共演で話題となった映画『ルパン三世』をはじめ、『ルパン三世 バビロンの黄金伝説』『ルパン三世 くたばれ!ノストラダムス』など『ルパン三世』関連の映画5作品を放送する。今回は長年愛され続ける『ルパン三世』の秘密をテレビ・ドラマ解説者である木村隆志氏に解説してもらった。
なぜ『ルパン三世』は愛される?
原作マンガのスタートは1967年、テレビアニメの第1シリーズが放送されたのは1971年。その後、映画版やテレビスペシャル版が毎年のように作られ、いずれも大きな話題を集めた。
とりわけ1979年制作の宮崎駿初監督映画『カリオストロの城』は、何度放送されても高視聴率を記録。さらに昨夏には小栗旬主演の実写映画、今年1月には宝塚歌劇団雪組の公演も行われ、10月からは30年ぶりのテレビアニメ新シリーズが予定されているなど、『ルパン三世』は約半世紀に渡ってなお、衰え知らずの人気を誇っている。特筆すべきは、長期に渡る人気とファン層の広さ。ここでは「なぜ『ルパン三世』が愛され続けているのか」、5つの理由を挙げていく。
【理由1】各分野の代名詞となった天才たち
奇想天外なアイディアと大胆不敵な行動力を持つ怪盗・ルパン三世、クールで義理堅い早撃ちガンマン・次元大介、ストイックすぎる誇り高き居合の達人・石川五エ門、強烈な欲望でルパンを手玉に取るミステリアスな美女・峰不二子、ルパン逮捕に執念を燃やしつつ逃げられ続ける捜査官・銭形警部。
ルパン人気はこの“キャラが立った各分野の天才5人”によるところが大きい。今でこそ当たり前になったが、『ルパン三世』のアニメシリーズが人気をつかみはじめたころは、ここまで個性派キャラがそろうことは珍しく、そのかけ合いは文字通り足し算ではなく、かけ算になっていた。
いまだ「怪盗」と言えばルパンだし、「ガンマン」と言えば次元、「居合」なら五エ門、「圧倒的な美女」なら不二子、「執念の刑事」なら銭形というイメージを超えるキャラはいないし、各ジャンルの代名詞となっている。他の作品に負けないキャラが5人もそろっているのだから魅力的なのは当たり前だ。
【理由2】「カッコよすぎる」名ゼリフ
次のポイントは、個性的な彼らのセリフ。ルパンを筆頭に、キャラの期待を裏切らない名言、あるいはキャラとのギャップを生かした名言など、印象深いフレーズが目立つ。実際、ネット上だけでもそれらを集めたページもあるなど、彼らの言葉に酔いしれる人は多い。
ルパンの名言は、「壁ってのは、越えるためにあるんだ」「怖いのは死ぬことじゃなくて退屈なこと」なんて人生訓もあれば、「男は女にだまされるために生きてんだ」「裏切りは女のアクセサリーのようなものさ。いちいち気にしていちゃ女を愛せるわけないよ」なんて色気のあるものも。
次元の名言は、「ああいう品のない銃は趣味じゃないんでね」「騒ぐと頭がポップコーンみてえにハジけるぞ」なんてガンマンらしいものや、「オレはバーボンしか飲まねえぜ」「男にはな、負けると分かっててもいかなきゃなんないときがあるんだよ」なんて男くさいものも。
五エ門の名言は、「また、つまらぬものを斬ったか」「できぬ相談よ」という決まり文句や、「剣の乱れは心の乱れ。拙者心眼が開かれるまでは星を友とし、草を枕にする所存」「森羅万象。この一刀のもとに切れぬものなし」なんて武士らしきものも。
不二子は名言というより、「時には味方、時には敵。恋人だったこともあったかな」「愛してるならそう言って。考え直してあげてもいいわ」なんて悪女ならではのものや、「女心を無闇に試したりするもんじゃないわ」「いい女っていうのはね、自分で自分を守れる女よ」なんて女っぷりのよさが見えるものも。
銭形も名言というより、「ルパンを捕まえられるのは私以外にいません」「お前が死なんならわしも死なん」なんて熱い絆を思わせるものや、「奴はとんでもないものを盗んでいきました。あなたの心です」「自由であることが、何より得がたい財産というわけだ」なんて深いものも。
【理由3】テレビ版と映画版の振り幅
『ルパン三世』が多くの人々から愛されはじめたのは、テレビアニメの第2シリーズだろう。同シリーズは、人間くさくチャーミングなルパンたちの姿が描かれ、ベタやナンセンスなギャグを連発。物語もツタンカーメンの呪いにかかったり、カメレオン人間が現れたり、『ベルサイユのばら』のパロディだったり、脱力感あふれるドタバタ劇も目立った。
しかし、劇場用長編映画は、明らかに大人層を意識した骨太さを備えている。『ルパンvs複製人間』ではクローン人間との壮絶な戦いを、『カリオストロの城』では偽札や秘宝をめぐる争いに加え、捕られた姫を救出する心優しいルパン像を、『バビロンの黄金伝説』では古代都市の財宝を賭けてイラクやニューヨークを駆けめぐる死闘を描くなど、1980年代に「大人が見られるアニメ映画」というジャンルを確立。テレビアニメシリーズとの振り幅が大きかったこともあって、驚きとともに絶賛を集めた。
一方、『金曜ロードショー』枠で毎年放送されてきたテレビスペシャル版は、映画寄りの骨太な作風もあれば、アニメシリーズ寄りのライトな作風もあるなど、バラエティに富んでいる。これは【理由4】によるところも大きいだろう。
【理由4】クリエイターの熱量と発掘
半世紀に渡ってリメイクされ続ける理由の1つとして考えられるのは、クリエイターのモチベーション。
何より原作者モンキー・パンチがアレンジに寛容なのが大きく、実力派や若手の監督にリメイクしてもらうことを楽しみにしているという。実際、宮崎駿は自分の好きなように『ルパン三世』を解釈して名作に仕立て上げたし、その後もバトンを引き継ぐように多くのクリエイターが手がけている。「『ルパン三世』をやってみたい」というクリエイターは多く、彼らの憧れであり、登竜門にもなっているのだ。
だからこそ、キャラや設定などの基本フォーマットこそ揺るがないものの、そのディテールや物語は極めて流動的。監督や脚本家によって、キャラクター活劇なのか、ストーリー重視なのかなどの違いが生まれるほか、「過去作とつじつまが合わない」なんて誤差も多い。ただ、それもまた歴史的名作ならではの重みと言えるのかもしれない。
【理由5】リピート放送による刷り込み
一説には、「『ルパン三世』(特に第2シリーズ)は日本のテレビアニメで最も再放送が多い」と言われている。しかもその範囲は全国に渡り、放送時間も小中学生が帰宅する平日の夕方や、家族で見られる休日が多かった。
子どもウケするキャッチーな獲物や敵、テンポのいいアクション、銃や車への興味に加え、欲望など人間の闇、ちょっとエッチなシーンで子ども心を刺激していたのは間違いない。言わば、思い出のアニメであり、『ルパン三世』とともに育った世代が多いのだ。
その世代にとって『ルパン三世』=「ワクワク、面白いもの」と条件反射のように変換されるし、「あのテーマソングを聴いただけで心が躍る」という人も多い。また、「子どものころ毎日見ていた上に、大人になっても毎年見ている」という事実は、「接触回数の多いモノほど愛着が深まる」という心理法則にも当てはまる。
さらに、2013年の映画『ルパン三世VS名探偵コナンTHE MOVIE』の劇場で見られたように親子に渡るファンも目立つようになってきた。ゲームやパチンコなどのビジネス展開も含め、常に幅広い層の目にふれ続けている『ルパン三世』は“日本人のソウルアニメ”と言っていいのではないか。
WOWOW 実写×アニメ「ルパン三世」スペシャル
作品名 | 放送日時 |
---|---|
ルパン三世 | 8/15(土)夜9:00 |
ルパン三世 バビロンの黄金伝説 | 8/16(日)午後0:30 |
ルパン三世 くたばれ!ノストラダムス | 8/16(日)午後2:15 |
ルパン三世 DEAD OR ALIVE | 8/16(日)午後4:00 |
ルパン三世vs名探偵コナン THE MOVIE | 8/16(日)午後5:40 |
木村隆志
コラムニスト、テレビ・ドラマ解説者、タレントインタビュアー。1日のテレビ視聴は20時間(同時視聴含む)を超え、ドラマも毎クール全作品を視聴する重度のウォッチャー。雑誌やウェブにコラムを提供するほか、取材歴2000人超のタレント専門インタビュアーでもある。著書は『トップ・インタビュアーの聴き技84』など。
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