『デアデビル』をご存じだろうか。『スパイダーマン』や『アイアンマン』でおなじみ、マーベル・コミックの人気ヒーローである。この『デアデビル』を原作とするオリジナルドラマシリーズが、今秋9月2日(水)から日本でのサービス開始する、世界最大のインターネット映像配信ネットワーク「Netflix(ネットフリックス)」で独占配信される。新たなマーベルヒーローの来訪に、今からワクワクしている人も多いのではないだろうか?

『デアデビル』とは、いったいどんな作品なのか。その魅力を紹介しよう。

『デアデビル』メインカット

『デアデビル』の舞台となるのは、ニューヨークのスラム街「ヘルズ・キッチン」。この街の出身であるマット・マードックは、昼は盲目の弁護士として働きながら、夜はマスクで顔を隠したデアデビルとして、法で裁けない悪と戦っている。

盲目なのにどうやって戦えるのか? それは、マットが幼い頃、不慮の事故で視力を失った代わりに「超感覚」を得たからだ。視覚以外の聴覚や嗅覚、味覚といった感覚が研ぎ澄まされた結果、マットは人の心臓の音を聞き取って「相手がウソをついているかどうか」を判断したり、部屋に入ってきた人が誰なのかを判別したりできるようになったというわけ。

さらにマットは、ボクシングや忍術、器械体操、柔道、マーシャルアーツなどを習得しており、スカッとするほどめちゃくちゃ強い! 視覚を失っているというハンデはあるが、超感覚と体術のコンボで、プロの暗殺者も圧倒する力を持っているのである。

だが、『デアデビル』の魅力は、なんといっても主人公・マットの二面性がもたらす重厚なドラマだ。善良な弁護士という表の顔と、法では裁けない悪を討つヒーローという裏の顔。矛盾する2つの顔を使い分けながら、マットは「正義とは何か」という葛藤に悩まされる。

『デアデビル』が、ほかのヒーロー物と一線を画しているのはまさにこの部分で、『アイアンマン』『アベンジャーズ』など、数多いマーベルヒーローたちの中でも、その立ち位置は独特だ。白でも黒でもなく、グレーな存在であり続けるデアデビルの姿は、同じように白黒はっきりつけられない社会で生きる社会人にとって、強い共感を呼ぶ。

そして、ほかのマーベルヒーローたちが異星人の軍団から地球を救うのに対し、デアデビルは自分の地元であるヘルズ・キッチンや、ある地域、ひとつの建物、あるいは1人の人間の暮らしを守るために立ち上がるのだ。そういった意味で、デアデビルは、まさに大人のためのヒーローでもあるのだ。

『デアデビル』にはハードなシーンも満載だ。血も流れるし、思わず目を背けてしまうような強烈な場面もある。制約の多いテレビや映画では描くことのできない内容を、ためらいなく制作できるという点こそ、Netflixオリジナルのコンテンツである最大の魅力といえる。

本国アメリカでの評価も上々。全米評論家サイト「Rotten Tomatoes」ではトップ批評家による評価で満足度98%という異例の数字をたたきだしており、その完成度の高さを裏づけるものとなっている。



さて、気になる第1話では、そんなマットが、親友で法律家のフォギーと共に弁護士事務所を設立したところから物語は始まる。

夜の埠頭(ふとう)。どこからか誘拐されてきた女性が、人身売買の業者に連れ去られてようとしている。いきなりインパクトのあるシーンだが、そこに登場したのがデアデビル。超感覚と鍛えぬかれた肉体で、悪党4人をあっという間に片付けてしまうのだ。この冒頭のアクションがすばらしくて、思わず見とれてしまった。

『デアデビル』は銃を使わず肉体で戦うヒーロー。それだけにアクションシーンが多く、毎回長尺で見せてくれるのだが、これがとてつもなくかっこいい。ボクシングや柔道など複数の格闘術をマスターしているという設定はだてではなく、時には壁を使った三角飛びなどのアクロバティックな技も飛び出すのだ。

冒頭のアクションから一転。舞台はニューヨークの街中へ。続いて、とんでもない事件が発生する。建築会社で働くカレンがバーで同僚と飲んでいたところ急に意識がなくなり、気づいたら隣に同僚の死体が転がっていたのだ。次の瞬間、警察が部屋に飛び込んできて逮捕されてしまうカレン。「どういうことなの!」と号泣するカレンだが、見ているこっちも「どういうことなの!!」である。

そんな彼女の弁護を請け負うことになったマットとフォギーだったが、カレンから話を聞くうちに、マットは事件の背後にうごめく巨大な悪の存在に気づいていく。スピーディーな展開から目が離せず、ジェットコースターに乗っているような気分。あっという間の50分間だった。

夢中になって第2話、第3話と見てしまったが、毎回展開も導入もまったく違っていて、飽きることがない。1話を見て『デアデビル』をわかった気になっていたら、2話の最初で「えー!」という驚きが待っている。「どうすれば見ている人に驚いてもらえるか、楽しんでもらえるか」という点が突き詰められていて、制作サイドのサービス精神ハンパないなと感心。一度見始めたら止まらないので、これは全13話イッキ見必至だろう。

Netflixとマーベルは、この『デアデビル』のほか、『ジェシカ・ジョーンズ』『アイアン・フィスト』『ルーク・ケイジ』という、それぞれ別のストリート・レベルのヒーローが活躍する実写版シリーズを製作。その後、それら4人ヒーローたちが前代未聞のチームを結集する『ディフェンダーズ』へつながっていく。『デアデビル』は、このプロジェクトの先陣を切る作品の第1弾という位置づけになっている。

さらに、マーベルファンにはちょっとしたお楽しみも。アイアンマンやキャプテン・アメリカらマーベルヒーローが集結する映画『アベンジャーズ』のニューヨーク決戦とストーリーがつながっていることを示唆する場面が本編の中に登場するのである。思わずニヤリとしてしまうこと間違いなしなので、1話からセリフの細かい部分も見落とさないようにしよう。

これまでになかった新たなヒーローに出会える『デアデビル』。まずは第1話だけでも見てほしい。そのまま夜を徹して続きを見てしまうだろうから。



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