月額約1,000円で映画やドラマ、アニメ、バラエティなどの番組が見放題となる「Hulu」。かつては海外ドラマが中心だったが、最近は国内コンテンツも充実してきており、ドラマやバラエティといった地上波のテレビ番組も増えてきている。おもしろいコンテンツがあれば見たい人が集まってくるのは当然のことで、先日の発表によると、ついに国内Huluユーザーは100万人を突破したそうだ。
一方でHuluのような定額制の映像配信サービス、いわゆる「SVOD」は競争が激化してきており、どれを使えばいいか迷っている――という人も多いのではないだろうか。筆者としては数年前から愛用していることもあり、文句なしにHuluをオススメしている。とはいえ、Huluの魅力を伝えるにはまだまだ勉強不足。せっかくなら"中の人"に詳しい話を聞いてみたいところだ。
幸運にも、元日本テレビの番組プロデューサーであり、現在は制作局ドラマ班チーフプロデューサーでありHuluのコンテンツ制作部部長を兼務している松岡至氏にお話を伺うことができた。
テレビとの連動企画による「THE LAST COP/ラストコップ」のヒット
――本日はよろしくお願いします。先日プレミア放送された「THE LAST COP/ラストコップ(以下:ラストコップ)」、大反響でしたね!
ありがとうございます。おかげさまで「ラストコップ」はHuluでも配信後の土日のランキングがダントツ1位でした。まずは地上波でプレミア放送して、番組終了後からepisode 2をHuluで配信するという連動企画だったのですが、Huluの視聴数も予想以上に伸びましたね。現在も1話ずつ配信中で多くの方にお楽しみいただいています。
――地上波の方の視聴率はいかがでした?
12.9%とかなり高い数字がとれました。また、同時間帯の番組でトップだったのも嬉しかったです。特に若者層が見てくれたようで、視聴率だけでなく視聴"質"も非常によかったと思います。驚いたのが、福島県での視聴率が20%を超えたことですね。
――20%!? それはすごいですね。
Huluのユーザーは今はまだ首都圏がメインですから、今回のような連動企画をきっかけに地方のHuluユーザーも増えてほしいですね。
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――テレビとの連動といえば、松岡さんの経歴を拝見して驚いたのですが、日本テレビで「行列のできる法律相談所」など多数の人気番組の立ち上げを手がけられた敏腕プロデューサーなんですね。
敏腕はさておき(笑)、たしかに私はずっと制作局で番組を作ってきた人間です。「行列のできる法律相談所」は特番を何度かやって、レギュラーにしましたね。
――その後、どのような経緯があってHuluに?
2012年に制作局からネット営業部に移りまして……。
――ネット営業部でHuluのようなインターネットサービスとお仕事を?
よく言われるのですが、ネット営業部ってインターネットじゃないんですよ。ネットワーク、つまり全国ネットにおけるスポンサーへの営業が主な仕事です。これに対して関東ローカルのCMなどを番組と番組の間に単発で入れるのが"スポット"です。ちなみに私が入ったときに部署の名前を「ネットタイム営業部」に改めました。
――全国ネットでしたか、なるほど。
そして2014年にインターネット事業部に異動になり、Huluを担当。今年6月から制作局ドラマ班へ異動と同時にHuluへ兼務出向し、現在Huluではコンテンツ制作部にいます。
――異動になったときはどう思われましたか?
もともとこうした配信サービスには興味はありましたが、私自身はバラエティ制作が長かったし、そちらに適性があると思っていたので驚きましたね。おそらく、会社としては、Huluを買収してインターネット事業に力を入れていく中で、番組制作をやっていた私のキャリアを生かせないだろうかと考えたのでしょう。
――「ラストコップ」のようなオリジナルを期待されていた?
それももちろんあります。特に期待されているのは「コンテンツ感覚」じゃないかなと思います。「エンターテインメント感覚」と言ってもいいでしょう。どういうものがヒットするのか、そういう感覚をわかった上でサービスを広げていくことが必要だったのかなと。
テレビはライバルではない!
――ずっとテレビ局にいる松岡さんが、今年からはHuluでコンテンツ制作部長を兼任されているというのは、何だか不思議な感じがするんです。というのは、私はそもそもテレビとHuluってライバルだろうと思っていたんですよ。でも昨年、日本テレビはHuluを買収して、積極的に自社のドラマやバラエティを配信していますよね。
たしかにライバルだったかもしれません。同じモニターを取り合うわけですからね。でもそれは昔の話です。テレビとVOD(ビデオ・オン・デマンド)がライバル関係を脱したのは、スマートフォンの登場が大きかったと思っています。ダブルスクリーンなんて言葉がありますが、スマートフォンはデバイスとしてテレビと共存できるんですよ。
たとえば今では、テレビを見ながらスマートフォンで感想をSNSに投稿するスタイルが増えていますよね。かつて、街に設置され、誰でもが見ることができた街頭テレビというものがありましたが、再びそういう時代がきていると言われています。街頭テレビのように物理的な会話ではありませんが、同じ番組を見ながらSNSでリアルタイムにつぶやくという点では似ています。
――たしかに、SNSを見ているとそのとき放送されているテレビの感想がよく流れてきます。Twitterのトレンドにもテレビ番組のキーワードが入ることが多いですね。
ただ、敵ではないとはいえ、スマートフォンで時間や場所にとらわれず動画を見る行為が主流になっていくことに対する危機感はありました。というのは、地上波でいくら番組をPRしても、そもそもテレビを最初から見ない世代や層には認知してもらえないのです。そういった層がスマートフォンで映像配信サービスを利用しているのであれば、テレビ自身がそこにしっかりと参入するべきだろうと。そうすることで、結果的にテレビの宣伝にもなるのではないかと考えたのです。
――Huluでテレビドラマの過去回などが配信されているのは、それが理由ですか?
そうです。テレビドラマは乗り遅れると辛いですから。見逃してしまうと、ストーリーがわからなくなってしまう場合がありますよね。そんなとき、Huluで全話配信されていれば、そちらで見返してもらうことができますし、途中から見始めることも苦ではなくなります。
たとえば地上波でドラマの3話目を放送すると、その後、Huluで1話と2話の視聴数が急増するんですよ。おそらく、途中からドラマを見始めた人たちが、前の回を見るためにHuluにアクセスしたのではないかと思います。そうすると、Huluで過去回が見られるんだからということで、ドラマを途中から見る人も増えますし、結果的に地上波の数字にも返ってくるのです。映像配信サービスは、テレビのファンを増やすために必要なことだと私は思いますよ。
――なるほど。テレビからHulu、Huluからテレビへという、良い循環ができるんですね。
バラエティも同じです。たとえば「今夜くらべてみました」はHuluでもベスト10に必ず入る人気番組です。あれも地上波が放送された後、誰が何を言ったかがネットで話題になりますよね。そうすると気になったユーザーがHuluで確認する。それをきっかけに番組のファンになって、地上波でも見てくれるようになる。そういう効果があるんです。続きはこちら⇒
THE LAST COP/ラストコップ
凶悪犯・カグラを追いつめる過程で事故に遭い、30年間昏睡状態だった刑事の京極(唐沢寿明)。2015年、突然目覚めた京極は復職して草食系の亮太(窪田正孝)と捜査にあたることになるが!?
暴力・パワハラ・セクハラなんでもアリの京極に、亮太はペースを乱されまくり。一方の京極も妻の加奈子(和久井映見)が後輩の鈴木(宮川一朗太) と再婚し、娘の結衣(佐々木希)が鈴木を父親だと信じているという現実に衝撃を受け……。
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