クリストファー・ノーランは、映画業界において、今や向かうところ敵なし、という印象がある。新生『バットマン』シリーズの『ダークナイト』(2008年)、『ダークナイト ライジング』(2012年)、『インセプション』(2010年)など、新作を発表する度に、世界中から熱い視線を浴び続けてきたノーラン監督。ハリウッドでは、ブロックバスター映画を撮れるヒットメーカーは数多くいるが、ノーラン監督のように、娯楽性と作家性の両方で妥協することなく、常にアベレージの高い作品を連打できる監督は、かなり稀有な存在である。そしてこの冬は、マシュー・マコノヒーとアン・ハサウェイというオスカー受賞者コンビを迎えた超大作『インターステラー』が待機中ということで、11月22日の日本公開に先駆け、ノーラン監督の輝かしい足跡とその偉大さに迫る!

クリストファー・ノーラン監督

クリストファー・ノーラン最新作は、謎に包まれた超大作

いまだその全貌は謎のベールに包まれたままの、クリストファー・ノーラン監督最新作『インターステラー』。『インターステラー』とは"惑星間移動"を意味する言葉で、本作では、地球の寿命があとわずかだと判明した未来で、人類は新たな惑星を探すことを選択。人類の存亡を懸け、そして愛する子供たちの未来を守るため、ひとりの男が前人未到の地へと旅立つ感動巨編だ。だが、日本の封切りまで1カ月を切ったのにも関わらず、予告編以上の情報が恐ろしいほど出てこない。これはインターネットの情報社会において、あり得ない事態と言える。

それもそのはず、超・秘密主義として知られるノーランは、昨年のクランクインから情報統制を敷き、パパラッチも完全シャットアウト。キャスト&スタッフ関係者も口をつぐんでいるからだ。ノーランは「映画のトーンは、これまでに手がけたどの作品とも違う。私はブロックバスター映画の黄金時代に育った。あの感じを取り戻したいと思っている。当時の映画は、自分が知らない世界に連れていってくれたものだ。映画が与えてくれたような驚きや感動を、誰もが楽しめるエンターテインメント映画として実現したい」と公言しており、その秘密主義は、ハリウッド黄金期の傑作と同様に、観客に多くのサプライズを残しておきたいという理念からだと言える。完成が迫る最新作は、どのような興奮と感動を与えてくれるのだろうか。

記録を出せる革命家、クリストファー・ノーラン

クリストファー・ノーランほど記録を出し続ける監督はいないだろう。彼の名を世に送り出したのは、低予算の単館系映画ながらも大ヒットした『メメント』(2000年)だ。時系列をシャッフルさせ、最後まで見て初めて事の真相が明かされるというサスペンスの方程式は、観客の度肝を抜き、その結果、映画を見終わった後、もう一度事実確認をしたいというリピーターが続出。全米では、わずか11館で封切られた本作だが、上映10週目にして531館に拡大公開され、全米興行成績8位に踊り出るという、インディーズ映画としては異例の大ヒットとなった。

そして、ノーラン監督が、超大作も作れる大ヒットメーカーとしてのポジションを不動にしたのが、2008年の『ダークナイト』だ。ティム・バートン監督らによるライトなテイストの『バットマン』とはがらりと作風を変え、シリアスでダークな世界観を打ち出した1作目『バットマン ビギンズ』(2005年)。続く『ダークナイト』では、映画のタイトルから潔く"バットマン"を抜いた点からも、ノーラン監督の力強い覚悟が感じ取られる。IMAXカメラによる革新的なアクション映像と、表裏一体の"善"と"悪"をリアルに突き付け、多くの批評家から伝説と称賛されるほどの作品を創り上げた。 同シリーズでノーランは、アメコミ映画界にレボリューションを起こしたと言っても過言ではない。

その結果、『ダークナイト』の初日3日間のオープニング興行成績は、当時史上第1位の1億5,840万ドル(約124億円)をマーク。全米のトータルの興収においても、『アバター』(2009年)が公開される以前では、『タイタニック』の6億5,854万ドル(約573億円)に次ぐ、5億3,334万ドル(約560億円)を上げ、当時の興収歴代2位にランクイン。さらに完結編『ダークナイト ライジング』(2012年)では、前作のオープニング興行成績を塗り替えて1億6,088万7,295ドル(約126億円)を上げた。この数字は、『アベンジャーズ』(2012年)、『ハリー・ポッターと死の秘宝 PART2』(2011年)に次ぐ歴代3位で、2D映画としては歴代最高となった。

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※場面写真は左が『ダークナイト』、中央と右が『ダークナイト ライジング』
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記憶に残る映画を撮れる芸術家、クリストファー・ノーラン

クリストファー・ノーランは、映画業界の同業者からもリスペクトされ、アカデミー賞に何度もノミネートされている。初めてのノミネートは、『メメント』のオリジナル脚本賞と編集賞。娯楽性よりも芸術性が評価され、SF映画やアクション映画にはまだ門戸が閉ざされている同賞だが、『ダークナイト』では、第81回アカデミー賞の助演男優賞、撮影賞、美術賞、メイクアップ賞、視覚効果賞、音響編集賞、音響録音賞、編集賞の8部門にノミネート。ちなみに、下馬評では作品賞への呼び声も高かった。受賞は、故・ヒース・レジャーの助演男優賞と、音響編集賞の2部門にとどまったが、アクションを打ち出した娯楽作としては前代未聞の事態と言える。

レオナルド・ディカプリオと渡辺謙を起用し、人の潜在意識に潜り込み、心のアイデアを盗み出すという斬新な設定が話題を呼んだ『インセプション』では、作品賞をはじめ8部門でノミネートされ、撮影賞、視覚効果賞、音響編集賞、録音賞の4部門を受賞。残念ながら『ダークナイトライジング』はノミネートを逃したが、作品の評価が高かっただけに、ノミネートされなかったことへの驚きの速報が全米を駆け巡ったほどだった。彼の作家性・芸術性は多くの観客と批評家を虜にし、記憶に残る映画として、常に映画界を席巻するのだ。

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成功を支える最強のパートナー、ジョナサン・ノーラン

独創的な世界観を生み出してきたクリストファー・ノーランだが、その作品群を見ると、よく脚本家の弟、ジョナサン・ノーランがクレジットされている。自身が脚本も書けるクリストファー・ノーランだが、ジョナサンとは何度も兄弟タッグを組み、大ヒット作を生み出してきた。出世作となった『メメント』の原案もジョナサンだし、『ダークナイト』の2作も彼との共同脚本で放った作品で、いずれも大成功を収めている。

『ノーカントリー』(2007年)のコーエン兄弟や『マトリックス』シリーズのウォシャウスキー兄弟などもそうだが、ハリウッドの荒波を共に乗り越える相棒として、血のつながった兄弟というのは、最強の存在なのではないだろうか。特に、『インターステラー』はノーランの監督史上、最大の規模の作品となっただけに、これまできちんと結果を出してきた弟とのパートナーシップは心強かったに違いない。

この最強コンビが選んだ最新作の舞台は、世界的な食糧飢饉、劇的な環境変化によって、地球の寿命が尽きかけている近未来。マシュー・マコノヒー演じる主人公クーパーは、人類の存亡をかけて、新たに移住できる星を探すことを課せられた元・エンジニア。アン・ハサウェイ演じる生物学者や、ジェシカ・チャステイン演じる科学者もそのプロジェクトに参加するが、彼らが挑むのは、まさに人類の限界を超えた史上最大のミッションなのだ。本作では、「必ず、帰ってくる」と誓った娘への思いに葛藤するクーパーのドラマを軸に、極限状態に追い込まれながらも、使命を果たそうとする人々の愛と勇気がつづられていく。予告編を見る限り、今回も一筋縄ではいかない設定である上、壮大な宇宙空間での映像美と冒険のチラ見せにも、今から胸が躍る! 期待を決して裏切らないクリストファー・ノーラン監督最新作に乞うご期待。

『インターステラー』は、2014年11月22日(土)より新宿ピカデリーほか全国にてロードショー。

『インターステラー』場面写真

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