米Intelが8月29日(米国時間)にコードネーム"Haswell-E"の新たなCore i7シリーズを発表した。対応するチップセットはDDR4に対応したIntel X99 Express。2011年から現在までIntelのコンシューマ向けハイエンドプラットフォームとして君臨していたX79 Express環境が刷新されるとあって、マザーボードベンダーの各社の気合の入れようも半端ではない。

「X99-SOC FORCE」のパッケージ写真。OCシリーズでは、最速のイメージとしてフォーミュラカーのイラストが使用されており、カラーはオレンジで統一されている

GIGABYTEからもスタンダードモデルとなるUltra Durableシリーズ、ゲーマー向けとなるゲーミングシリーズ、オーバークロッカー向けのOCシリーズにおいてクオリティの高いモデルを発表している。今回は、その中からOCシリーズの「X99-SOC FORCE」の魅力をお伝えしよう。

「X99-SOC FORCE」の全景。8基のメモリスロットや大型のCPUソケットに加え、オーバークロック用ボタンを備えているため、E-ATXサイズを採用している

「X99-SOC FORCE」は、Intel Core i7 Extreme Editionに対応したコンシューマ向けハイエンドモデルで、GIGABYTEのX99シリーズのラインナップの中で唯一のOCシリーズ。E-ATXフォームファクタを採用し、その余裕のあるスペースを利用してオーバークロック向けの多数の機能を搭載したマザーボードとなっている。

付属品は非常に充実しており、写真を2枚に分割しないと収まらないほど。ケーブル類だけでなく、特にマルチGPU用のパーツが充実しており、OCブレースという珍しい金具も付属する

X79 ExpressからX99 Expressの変更点を確認

初めに、X79 Expressから変更された仕様を見ていこう。まずCPUソケットが従来のLGA2011から従来のLGA2011-v3に変更されたこと。ピン数こそ同一だが配置が異なるため、従来のLGA2011対応CPUである"SandyBridge-E"i7-3xxxシリーズや"Ivy-Bridge-E"i7-4xxxシリーズとの互換性は無い。"Haswell-E"i7-5xxxxシリーズのCPUを利用するには、X99 Expressを利用するしかないということだ。ソケット自体も大型化しており、2本のレバーによって固定する方式を採用している。

2本のレバーによってCPUを固定するLGA2011-v3のCPUソケット。CPUクーラーはLGA2011と同様の製品が利用できる。ピン数が多いため、取り扱いには十分注意したい

続いて、新世代のメモリ規格「DDR4-DIMM」に対応していること。データ転送速度や機能はもちろんのこと、電圧やピン数、形状など様々な点が変更されているため、従来のDDR3-DIMMを使用することはできない。ソケットが変更になったのも、このDDR4に対応するためにCPUに統合されたメモリコントローラが刷新されたのが大きな理由のひとつだろう。X79同様にクアッドチャネルに対応しており、DDR3デュアルチャネル動作のメモリとは一線を画す転送速度を実現可能だ。

新世代メモリ「DDR4-DIMM」に対応したメモリスロットを8基搭載している。加えてクアッドチャネル動作に対応しており、大幅なアクセス速度の向上を実現した

さらに、3年ぶりのプラットフォーム変更ということもあり、USBやSATAポートの数も大きく変化している。X79はSATA3.0×2ポート、SATA2.0×4ポートをサポートしていたが、X99ではストレージの対応数が大幅に増加し、SATA3.0×10ポートに。

加えて、X79では外部コントローラを使用する必要があったUSB3.0ポートが6ポート利用可能となっている。さらに、PCI-Expressにネイティブ接続することでストレージへの高速アクセスが可能なM.2ソケットやSATA Expressポートにも対応。M.2ソケットはGIGABYTEの独自技術「Turbo M.2」により、通常のM.2ソケットが備える10Gb/sを超える最大20Gb/sで接続が可能だ。徐々に対応製品が増えつつあるM.2ソケット対応SSDの速度を最大限に活かすことができるだろう

ストレージ用端子として、SATA3.0ポートを10基備える。SATA Expressも1ポート搭載しており、利用する際はSATA3.0ポートと排他仕様となる

マザーボードにはTurbo M.2ソケットを備えている。通常のM.2ソケットが備える転送速度である10Gb/sを超える、最大20Gb/sでのストレージアクセスが可能

OCシリーズならではの機能と高品質パーツ

前述の通り「X99-SOC FORCE」はE-ATXフォームファクタを採用しているため、他のマザーボードに比べサイズには余裕がある。LGA2011対応の大ぶりなCPUソケットや、8基ものDDR4メモリスロットを搭載しながらも、押しやすい位置にオーバークロック用ボタン「OC Touch」を配置。ボード上からCPU倍率を変更したりUEFI BIOSを切り替えたりといった操作が行える。ほかにも電圧チェックや電源供給のコントロールなど多数の機能を備えているので、柔軟なオーバークロックのニーズに対応できるだろう。

OCシリーズ最大の特徴とも言える「OC Touch」。電源やリセットボタン、CPU倍率などをマザーボード上からコントロールできるほか、PCI-Expressの切り離し用スイッチ、テスターなどを利用した電圧チェックなど多数の機能が満載されている

CPU周辺のVRMに取り付けられたヒートシンクは、ヒートパイプによってチップセット用のヒートシンクと接続されている

マザーボードの冷却にはCPU周辺のVRMなどからX99チップまでをヒートパイプで接続したヒートシンクを採用しているが、そのサイズは決して大きくはない。電源周りの発熱が抑えられている証拠だろう。

電源回路にはすべてInternational Rectifier(IR)製のデジタル電源を採用。デジタルPWMコントローラにより高精度に制御され、MOSFETドライバーやハイサイド/ローサイドMOSFETを統合してワンパッケージ化したPowIRstage ICチップとの組み合わせによってCPUの負荷電流を正確に測定、熱負荷を下げることが可能だ。

また、Cooper Bussmann製のチョークコイルを採用。高電流に対する容量はもちろんのこと、高効率の電源供給と耐久性を兼ね備えている。さらにCPUへの電源供給のために、さまざまな動作周波数で低インピーダンス特性を維持できるPOSCAP (Polymerized Organic Semiconductor Capacitor)を、固体電解コンデンサには日本ケミコンによりカスタマイズされた高耐久性のブラック・コンデンサを採用しているため、信頼性や長寿命といった効果が見込めるほか、オーバークロック時の安定性にも寄与してくれるだろう。

ヒートシンクを取り外したところ。チップセットのヒートシンクにはLEDが埋め込まれており、マザーボードからの給電によって輝く

CPUソケット上部のヒートシンクの下には、8フェーズのPowIRstage IC IR3556Mが確認できる。メモリスロットの脇に見えるデジタルPWMコントローラはIR3580

左のメモリスロット側にあるヒートシンクの下には、PowIRstage IC IR3553MとデジタルPWMコントローラIR3570Aのほか、USB3.0ハブコントローラであるD720210などが配置されている

PCI-Expressのレーン数が多く、マルチGPU環境への適性が高いこともX99 Expressシリーズの魅力。最大で40レーンものPCI-Expressを余すことなく活用でき、AMD CrossFireやNVIDIA SLIなどの規格を利用して4-Way、3-Way、2-Wayといった柔軟な構成を採ることが可能だ。マルチGPU環境でのオーバークロックテストも考慮し、バラック状態でも複数枚のグラフィックスカードをしっかり固定できるOCブレースも付属する点が「X99-SOC FORCE」ならではといえるだろう。

チップセットのヒートシンクの下には、スーパーI/OチップであるITE 8620Eなどが確認できる。またメモリスロット下部にはIR3553MとIR3570Aが配置されている