地デジ化が推進され、地上波がデジタルへと変わったのが2011年7月のこと。以来、すっかりHDの高精細コンテンツに慣れ親しんできた私達だが、時代はすでに4Kへとシフトし始めている。来たるべき4K時代に向けて業界ではどのような動きとなっているのか。株式会社IMAGICA(以降、IMAGICA) 技術推進室 エンジニアリングソリューションユニット チーフリサーチャー 清野晶宏氏(以降、清野氏)に話しを伺った。
「4K」が再現する圧倒的な表現力
家電量販店などでは、すでに2013年夏辺りから「4Kコーナー」などと称した特設ブースが置かれていることでもご存知のように、映像コンテンツの高精細化は時代と共に進み、いよいよ「4K」時代の到来が現実味を帯び始めている。「そもそも、4Kとはなんですか?」という話しを聞かれるという清野氏は、「Kはキロ、すなわち4000ピクセルの幅を持つものを4Kと称しています」と4Kについて説明。時代が高精細化を求めた結果生まれたのが、フルHDの幅が約2倍となる4000ピクセルを基準とした規格がいわゆる「4K」なのだ。 「実際には4Kの技術は映画からスタートした経緯があります。そこでは4096ピクセルが使われていましたが、テレビ系ではHDの倍、すなわち3840ピクセルとなります。テレビ系に関しては現実には4000に若干欠けますが、これも『4K』と呼ぶことになったのです」と清野氏。
人々をもっとキレイに見せたい、さらなる没入感が欲しいといったニーズが4Kを後押ししたわけだが、実際にこの規格で作られた映像は、これまでに再現されたことがないほどの美しさだという。「風景やきめの細かい着物の映像などは本当にキレイです。ディスプレイを通して見ているのですが、目の前に浮き上がっているかのような錯覚を覚えることもありますね」と4Kの表現力を語る。
こうした効果も表現できるため、現在主流のフルHDとはきちんとした差別化ができるのも4Kのすごさだ。また、政策として総務省から次世代放送の規格として4Kが正式に推奨されている現状も、この技術を後押ししている。
4Kを実現させるために動き出す業界
「4Kにいち早く対応したのがカメラです。アメリカのRED ONEという機種がデジタルで4K映像を収録するための機器としてリリースされ大きな話題になりました。その後、日本国内メーカーもカメラをリリースし始め、4K対応のテレビも普及してきたという流れです」と語る清野氏。2013年には放送設備の周辺機器も出揃い始め、いよいよ4Kへの地固めが進んできた。
「放送局ではスカパー!がCSでの放送を予定しています。その後BSへ続くロードマップが示されていますが、コーデックがキーワードになります」と清野氏。4KではHEVC方式が使われる予定となっているが、このHEVCの別名は「H.265」。すっかり馴染みのある「H.264」と比べ、約半分の帯域で済む。清野氏は「しかし、H.265はその後に控える8Kへの対応まで考えられているコーデックです。また、携帯電話をはじめとした通信系でも用いることが可能なので、放送だけでなく通信会社でも研究が盛んです」と話す。現在は少しずつではあるが、H.265対応の製品も増えており、今後の普及へ向けて準備は着々と進んでいるのだという。ちなみに、現段階では4Kの納品ファイルフォーマットとしてDPXと、より圧縮率の高いXAVCが使われる予定だ。
ここまで来れば後はコンテンツだ。フルHDに慣れ親しんできた私達の目を楽しませてくれるコンテンツを作るため、各分野の制作会社も試行錯誤中を続けている。もちろん、機器が変わるのだから撮影方法も変わる。時には不慣れな中で作業しなくてはならないケースもあるのだという。「よく聞くのは、ピンが合いづらいという話しです。4Kモニターで確認できれば良いですが、撮影場所によっては制限があり、ファインダーなどを見ながらピンを合わせなくてはなりません。しかし、小型サイズの表示でピンを確認しようとしても合っているかどうなのかの判断が難しいです」と清野氏。これに関してはフォーカスサポートなどの機器が開発中であり、また、カメラマンも次第に慣れてくるはずなので、もう少しすれば改善していく見込みだ。
また、制作会社側としてもこれまでのVTRテープから完全なファイル化を行わなくてはならなくなるという課題がある。「VTRならテープデッキへ入れればすぐに再生される。ファイルを再生するとなると、一度PCなどに取り込み、必要に応じファイルを変換してから再生、といった具合に手順が変わります。また、HDDが何TB必要か、バックアップはどうするかといった運用面でも議論が進んでいます」と清野氏は語る。
4Kを制作する舞台裏では何が起こっているか
2014年内には4Kの試験放送が実施されることから、業界全体で体制が整えられている現在、特に映像制作において求められてきているのが、作業の効率化だ。「例えばテレビドラマであれば、カメラの機種や圧縮コーデック形式の選定、編集に入った段階で、どの程度カラーコレクションにこだわるかなど、作りたいコンテンツによってニーズは様々です。重要な要素としては予算と納期になりますから、それを踏まえて最適なワークフローで4K映像で制作できるようご相談に乗らせていただいております」と清野氏。例えば、予算と納期をたっぷり使い、RAWで撮影したデータを編集してとことんカラーコレクションにこだわる、あるいは納期が短いならば圧縮の高い同一コーデックでワークフローを組むなど、4Kを先駆けてきたIMAGICAでは、豊富なノウハウを活かしたアドバイスが可能だ。
そして編集に必要になってくるのがワークステーションだ。マシンの選定やスペック等についても十分な吟味がなされており「まず4K60pに対応する出力カードですが、現状ではWindows版しか出ていません。編集ソフトウェアにはアドビ システムズのAdobe Premiere Pro CCを使います。それに4Kのキーワードのひとつにフレームレートがあります。4Kの映画であれば24pですが、現在の4Kテレビ用ですと60pにもなりますから、ハイスペックが必要です。こうした情報を軸にワークステーションを探しました」と清野氏。
その結果、導入されたのがHP Z820 Workstationだった。インテル® Xeon® プロセッサー E5 v2をデュアルで搭載、PCI-Express Gen3対応、大容量メモリなど、市場でもハイパフォーマンス機として人気のワークステーション。清野氏は「メインメモリは多いほど良いのですが、現状では128GB搭載させています。軽い挙動で動いているので、メモリ量としては現状では満足ですね。
■HP Z820 Workstation構成
CPU | インテル® Xeon® プロセッサー E5 v2ファミリー |
---|---|
メモリ | 128GB |
グラフィックス | NVIDIA GeForce GTX Titan |
「弊社では以前からHPのワークステーションを使っていた経緯もあって、保守サポートの良さや、壊れにくさは知っていました。また、静音性に優れています。ですので、Adobe Premiere Pro CC を使った4K用の編集マシンとしてHP Z820 Workstationを選択しました」と清野氏。さらに、このマシンの内蔵ストレージはSSDを搭載している。ネットワーク経由のファイルサーバを活用しつつ、10分間の非圧縮4K映像で1TBにもなるという巨大なファイル操作をできるだけ高速・効率化しているのも特長だ。
「このマシンのスペックで4Kコンテンツの編集が行えます。カット点が多く編集が複雑で、さらにテロップも多い。そのような負荷の高いケースでは、レンダリング後の映像を見ながら編集するなど工夫しています」と語る。スペックを考えれば、市販クラスのワークステーションではかなりのハイエンドマシンにはなるが、4K映像を編集することはこのクラスのマシンがあれば可能となるのだ。
4K時代の次ぎに控える8K
高精細化の波が次々と打ち寄せてくる感が強い映像業界。記憶に新しい所では3Dブームなども起こった経緯があるが、果たしてゴールはあるのだろうか。清野氏はその点について「3Dには弊社も関わっていましたが、今回の4Kとの違いは政府のバックアップがあるかないかだと思います。4Kに関しては先にも述べたように国政として推進しているので、はじめ懐疑的だった人々も、しだいに「やらなければならない」という意識に変わってきているのを感じます」と語る。また、4Kの次に噂されている8Kについて、「現在8Kの話しが具体化しそうな段階で、状況を見ながら4Kと8Kの両方をこなせるような体制でやっていこうと思います。総務省のロードマップでも4Kと同じく8Kも見られる環境整備を目指すとありますので、4Kが普及した段階で準備する必要はあると考えています」と語ってくれた。
4K対応の映画からはじまり、テレビメーカーのプロモーション用コンテンツ、そして2013年末ぐらいからは各制作会社が試作に乗り出しているという4K。「4Kは放送だけでなく、配信などの手法でも提供できるように各方面で考え始めているようです」と清野氏。インターネットを通じたストリーミングやオンデマンドなどの場合、変換用のセットトップボックススタイルだけではなく、ソフトウェアのインストールだけで4Kコンテンツがすぐに見られるようになる。こうした売り方の変化も4Kの登場で刺激される分野なのかも知れない。
清野氏は「試験放送が始まるのが2014年。実はもうすでに動画配信サイトなどでは4K映像の配信を始めているところもありますから、積極的なユーザーならすでに4Kコンテンツが楽しめる状態です」と語る。実際には4K対応テレビが買い求めやすくなるタイミングを契機に、広く普及が始まるであろう4K時代。それがいつ頃になるか明確には予想しづらいが、いずれにしても遅かれ早かれやってくることは間違いない。我々としても、さらに素晴らしい作品に出会えるのであれば、それは待ち遠しい限りだ。編集環境においても未知数の部分もあり、その都度、色々な試みを行っているとのことだったが、IMAGICAの経験豊かなスタッフによるサポートのほか、Z820を導入して4Kコンテンツの制作環境を強化した、彼らの今後の取り組みに注目し続けたいと思う。
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