最近では家庭用ゲーム機でもオンライン対応のゲームが当たり前となっている。スマートフォンやタブレットといったモバイル機器でも人気アプリの上位にはゲームアプリが多数ランクインしており、ネットにつながったデバイスでゲームを楽しむというプレイスタイルはここ数年で一気に広がり定着した感がある。2013年、日本のRPGで最大のビッグタイトルであるドラゴンクエストにWindows版が登場し、PCでもドラクエが遊べるようになったのは、オンラインゲームの普及においてひとつの象徴的な出来事だったと言えるだろう。
これまで家庭用ゲーム機やスマートフォンでゲームを楽しんでいるユーザーの間でも、PCへステップアップしてより本格的にオンラインゲームをプレイしてみたいと思う人たちが徐々に増えているように感じられる。しかし、大手メーカー製の一般的なPCはグラフィックス性能をあまり重視していない製品が多く、ゲームを起動してみても「今自宅にあるPCだと画面がカクカクしてスムーズに遊べない」という状態になることが少なくない。また、ドラゴンクエストXのような比較的負荷の軽いゲームはなんとか動いても、別のゲームをやってみるとパワー不足で歯が立たないということもある。
そこで今回は、ドラクエXはもちろん最新のシューティングゲームまで快適に遊べるデスクトップPCを組み立ててみることにする。とはいえ、お金をかければ性能はいくらでもアップできるのでキリがない。冬のボーナスで無理なく出せる現実的な範囲として、ここでは予算10万円を目安にパーツを選定してみよう。
ゲームに対応できるパーツの選定
一般的にはPCの性能について語る場合、CPUが最初に思い浮かべられることが多い。しかし、最近のCPUはたいていのゲームを動作させるのに十分な性能を有しているものがほとんどで、最上位クラスのCore i7を要求するようなゲームは多くない。もちろんCPUの性能が良いに越したことはないのだが、ゲーム画面のなめらかな動きを実現するのに必要なのはむしろグラフィックスカードで、限られた予算の中ではこちらにお金をかけたほうが良い。
そこで今回は、NVIDIAのゲーマー向けGPUとしてはミドルクラスの「GeForce GTX 760」を搭載したカードである、GIGABYTEの「GV-N760OC-4GD」(実勢価格35,000円前後)をチョイスした。型番の中に「OC(オーバークロック)」が含まれることからもわかるように、GeForce GTX 760の定格仕様からさらに動作速度が引き上げられており、最新のゲームでもフルHD(1,920×1,080ドット)で快適にプレイすることが可能と考えられる。これに対してCPUはCore i5-4570(実勢価格20,000円前後)を選択。インテルのクアッドコアプロセッサで、動作周波数は3.2GHz、ターボ・ブースト時の最大は3.6GHzだ。さらに上のCPUとしてはCore i7-4770などがあるが、約1万円以上の上積みが必要となるため、予算10万円の枠内ではコストパフォーマンスを優先し、Core i5のミドルクラスのモデルに落ち着いた。
パーツ | メーカー | 型番 | 実勢価格 |
---|---|---|---|
マザーボード | GIGABYTE | GA-Z87X-UD4H | 22,000円 |
グラフィックスカード | GIGABYTE | GV-N760OC-4GD | 35,000円 |
CPU | インテル | Core i5-4570 | 20,000円 |
メモリ | CFD販売 | Elixir W3U1600HQ-4G | 8,000円 |
HDD | - | 1TB | 6,000円 |
ケース・電源 | - | ATX・650W | 9,000円 |
そして、これらを装着する要となるパーツがマザーボードだ。マザーボードもまさにピンからキリまでの世界で、「普通に動作すること以外は何も期待しない」レベルから「あらゆる機能をオンボードで搭載」というレベルまで、ユーザーのニーズと好みに応じたさまざまな製品が登場している。今回はGIGABYTEの「GA-Z87X-UD4H」を使用することにした。
最近のマザーボードはどれもおおむね品質が安定しているので過度な不安を抱く必要はないが、ゲームを楽しむ場合は高い負荷が連続してかかるので、メインの用途がゲームというユーザーはやはりそれなりのクラスのものを選んでおいたほうが良い。パーツの相性や負荷の検証に十分なコストをかけられるメーカー製のマシンと異なり、自作PCは自己責任の世界。高負荷連続動作や経年にも強いと考えられる高品質の部材を利用したマザーボードを選択し、ゲームのプレイに不安となる要素は前もって取り除いておいた方が良い。
「Ultra Durable」シリーズの中に含まれるGA-Z87X-UD4Hは、GIGABYTE製品の中では「ゲーマー向けハイスペックモデルの中のスタンダード」という位置づけのモデルで、パワー半導体の専門メーカー・International Rectifierが設計した高効率・高出力の電源供給回路を搭載しているのが特徴。マザーボード上の電源回路は、一般に「フェーズ」と呼ばれる供給サイクル数が多いほど安定した高品質の電力を供給可能だが、フェーズ数に比例して必要な部品が増えるため価格にも影響しやすい部分だ。このマザーボードでは実に16フェーズというハイスペックな回路を搭載しており、またそれらを構成するパワー半導体も高効率なものを採用しているので、CPUが大電力を要求した場合も安定した電源供給が可能で、しかも発熱が小さく抑えられている。さらに、電源回路そのものに大型のヒートシンクが取り付けられているので、冷却が効率良く行われ、高負荷時の動作不良や故障の可能性を小さくしている。
マザーボード、グラフィックスカード、CPUに加え、もうひとつ重要なパーツがメモリだ。今回は、多くの用途で十分と考えられる8GBの容量を確保するため、4GBのDDR3メモリを2枚用意した。選択したのはElixirブランドでヒートシンク付きの「W3U1600HQ-4G」(実勢価格8,000円前後)で、Elixir製メモリモジュールで良品として選別されたものに対して、CFD販売がさらに独自の動作チェックをした製品となっている。永久保証品なので安心して買える点もポイントが高い。
そのほか、PCを完成させるにはHDD、ケース、電源ユニットが必要となる。今回は価格優先で1TBのHDDを用意したが、必要に応じた容量を選べば良い。ケースと電源ユニットについては、先のグラフィックスカードに対応したものであることが条件となる。GV-N760OC-4GDは前後方向の長さが大きめで、奥行きに余裕のないケースだと中に納められないことがあるので、できれば店頭で確認できるショップで購入するのが良いだろう。
また電源ユニットについても、GV-N760OC-4GDはPCI Express用補助電源コネクタを2本(8ピン×2本)接続する必要があるので、対応したコネクタが備わっている電源を選ぶ必要がある。今回の構成なら500W程度の電源でも動作には問題ないが、コネクタ数が少ないものが多いので、コネクタが充実した機種が比較的多い650Wクラスの電源を選んでおくほうが無難かもしれない。