ポイント1:パフォーマンス

CPUの場合は動作クロックが定まっているが、GPUではリファレンスクロックというものはあるが、グラフィックスカードメーカー各社が独自に設定することができる点で、CPUと異なる。いわばメーカー純正で動作クロックを引き上げた、オーバークロック(OC)仕様の製品が出せるというわけだ。ASUSの3製品もこの例に漏れず、それぞれOCが施されている。

■リファレンス仕様とASUS OCモデルのクロック比較
GPU GeForce GTX 760 GeForce GTX 770 GeForce GTX 780
モデル リファレンス GTX760-DC2OC-2GD5 リファレンス GTX770-DC2OC-2GD5 リファレンス GTX780-DC2OC-3GD5
コアクロック 980MHz 1,006MHz 1,046MHz 1,058MHz 863MHz 889MHz
Boostクロック 1,033MHz 1,072MHz 1,085MHz 1,110MHz 900MHz 941MHz

もちろん、ASUSが動作を保証する範囲でのOCなので、ユーザー間で競われるOCとは幅が異なるものの、GTX760-DC2OC-2GD5とGTX780-DC2OC-3GD5はともに26MHzアップ、GTX770-DC2OC-2GD5は若干控えめな12MHzアップを施している。ではリファレンスクロックと比べてどれだけパフォーマンスが向上するのだろうか。

それでは結果を見ていこう。以降のベンチマーク結果は、すべて下記の環境で実施している。

■今回のテスト環境
CPU Intel Core i7-4770K(3.5GHz)
M/B ASUSTeK Z87-Pro(Intel Z87 Express)
メモリ DDR3-1600 16GB(8GBx2)
ストレージ OCZ Vector 128GB
■リファレンス仕様とASUS OCモデルの3DMarkスコア
GPU GeForce GTX 760 GeForce GTX 770 GeForce GTX 780
モデル リファレンス GTX760-DC2OC-2GD5 リファレンス GTX770-DC2OC-2GD5 リファレンス GTX780-DC2OC-3GD5
Fire Strike 5627 5635 6938 6943 8579 8744
Fire Strike eXtreme 2804 2811 3467 3475 4423 4488

リファレンスカードと性能を比べてみると、同じGPU同士でも、それぞれ若干だが確実にスコアが向上している。同じGPUのグラフィックスカードを手にしても、より高いパフォーマンスが得られる、これがメーカー純正OC仕様の効果だ。

ポイント2:「熱くならない」独自基板

OCした場合、性能向上というメリットと引き替えに、電源回路をはじめとした基板に負荷がかかってしまう。もちろんリファレンスの基板でも多少の余裕があるとはいえ、リファレンスクロック時よりも発熱は増えるし、その結果、動作音も大きくなるといった弊害が出てくるものだ。

ASUSの3製品は、どれも電源回路を強化することで負荷がかかった状態でも安定した動作を実現する。ASUSの3製品はいずれも独自に設計されたオリジナル基板で、さまざまな技術を採用しているが、今回は「DIGI+ VRM」「Super Alloy Power」「Direct Power」の3つについて紹介していこう。

まずDIGI+ VRMは、デジタル制御化された電源回路を指す。マザーボードの電源回路でも近年、デジタル制御化がアピールされているが、これも同様にこれまでアナログ制御されていた部分がデジタル制御に置き換わり、アナログと比べ素早いレスポンスが可能になっている。素早いレスポンスにより、当然、GPU負荷が激しく変化するゲーム等での安定性が向上するわけだ。

また、合わせて電源回路自体のフェーズ数も強化されている。例えばGeForce GTX 780のリファレンス基板は6+2フェーズ構成だが、GTX780-DC2OC-3GD5では8+2フェーズとなっている。これはユーザー自身で大幅なOCを行う際にも十分な電力を供給できる。通常の使用ではオーバースペックであるといえるかもしれないが、1フェーズあたりの負荷を減らすことで、耐久性を向上させたり、発熱を抑制するといった効果を発揮する。

GTX780-DC2OC-3GD5の8+2フェーズ電源回路。フェーズ数は8+2フェーズ、計10個のフェライトコアで数えられる。マザーボードにおけるOC向けモデルと同様、電源フェーズ数を増やし、GPUに供給できる電力を増やし、あるいは供給する電力を分散することで1フェーズあたりの負荷を引き下げ、発熱を抑制する

Super Alloy Powerは、チョークコイル、コンデンサ、MOSFETなど、グラフィックスカード上の部品に高い品質のものを採用していることを指す。高耐久性、OC性能、長寿命、低発熱など、さまざまな効果がうたわれているが、実際、部品が低発熱ならその部品自体が壊れる率も減り、長寿命に繋がるし、その余裕分をOC性能に回すことができるといった具合に、複合的なメリットがある。

特にSuper Alloy Powerのチョークコイルは、中身が詰まったコイルを採用している。コイルの中に空洞があると、放熱効率が悪くコイル鳴きしやすくなってしまう。

個体にもよるのだが、ハイエンドカードでも高めの負荷を掛けるとコイル鳴きするケースに遭遇するときがある。発熱が高くなっているということでカード自体の耐久性も気になってしまうし、単純にゲームプレイ中の雑音が気になってしまう。

Super Alloy Powerで採用するチョークコイルでは、放熱効率が良く動作温度が抑えられることでカード全体の発熱も抑えることができるという。

チョークコイル、コンデンサ、MOSFET。ASUS自身は各部品の製造メーカーや製品型番などを公開してはいないが、耐久性が高く、低発熱な部品であるとしている

最後、GTX760-DC2OC-2GD5で採用されているDirect Powerを紹介しておこう。Direct Powerは、VRM(電源回路)とGPUを結ぶ信号線を、通常の製品よりも太くすることで、電気抵抗を減らし、発熱を抑制すると説明されている。例えば、モーターを強化する場合の手法のひとつに、巻線を太くするという方法があるが、それと同様のイメージだ。

GTX760-DC2OC-2GD5の裏面にあるDirect Power。GPUと電源回路のそれぞれの裏を空中で繋いでいる

実際にオーバークロックで効果を体験する

さて、こうしたオリジナル基板の効果をちょっとしたOCで体験してみよう。ASUSのグラフィックスカードには、OCツールとして「GPU Tweak」が付属する。

これはハードウェアモニタリング機能とOC機能を備えたソフトウェアだ。OCで使用するのは右側のパネルで、いくつかの項目があるが、それぞれOC時の動作に関連するため、トータルで調整するのがよい。

GPU Tweakは、GPUの各種ステータス監視とOC設定が同時に行えるオリジナルツール。左ペインがステータスを、右ペインが設定項目になる。なお、標準の右ペインはシンプルで、初心者向けの項目のみ。Settingsボタンから右ペインにOC上級者向けの項目を追加することで、限界を探るようなハードなOCが可能になる

ただ、今回はオリジナル基板の性能を確かめる意味で、電圧設定などはそのまま、GPUだけをOCしてみることにしよう。通常であれば、すぐに電力不足や冷却性能不足に直面することになるところだ。もちろんクーラーの性能も影響するが、オリジナル基板の電源回路や発熱の少ない部品による効果が見えてくるだろう。

設定するのは「GPU Boost Clock」という項目だ。その名のとおりGPU Boost(GeForce 6シリーズから採用されているGeForceの自動OC機能)の値を調節する項目だ。GTX780-DC2OC-3GD5の場合、製品の定格クロックは889MHz、Boostクロックは941MHz。ひとつ目のOC設定1ではBoostクロックを1006MHzに、ふたつ目のOC設定2では1056MHzに設定した。

■OC時の各種センサー値(3DMark実行中のGPU-Zログより)
設定 製品標準 OC設定1 OC設定2
Boostクロック(MHz) 941 1006 1056
最大クロック(MHz) 1032.1 1097.4 1136.6
最大GPU温度(度) 56 54 55
ファン回転数(%) 48 46 47
VDDC(V) 1.162 1.162 1.162

標準設定と各OC設定のパフォーマンスについて、まずは3DMarkのFire StrikeとFire StrikeのeXtremeプロファイルで比較してみた。

■3DMark v1.1.0(OC比較)
設定 製品標準 OC設定1 OC設定2
Fire Strike 8744 9093 9320
Fire Strike eXtreme 4488 4714 4835

センサーからの値を見て分かるように、製品標準+100MHz程度であれば、単にGPU Boost Clockを調整するだけの簡単なOC手法であっさり動作してしまう。同時に、このような大幅なOCを行えば、3DMarkスコアはかなりの向上を見せる。では、実際のゲームではどうだろうか。この点をバトルフィールド3で調査した。

■バトルフィールド3(OC比較:最高画質)
設定 製品標準 OC設定1 OC設定2
1280x720 151.633 154.400 157.467
1600x900 132.800 136.100 141.400
1920x1080 109.833 114.050 117.000
2560x1440 71.467 74.550 75.683

実際のゲームでも、OCの効果がフレームレートとして表れた。1056MHz設定で、平均すれば6fpsほどフレームレートが向上するようだ。そもそもの3D性能が高いため、十分なフレームレートが得られているが、今後、よりGPU負荷の高いゲームタイトルが登場した際などで、もう少しフレームレートが欲しいという時に、こうしたOC耐性の高さが効いてくるだろう。

次のページ:独自クーラー「DirectCU II」の効果を検証する

(C) 2013 NVIDIA Corporation。無断複製・頒布を禁ず。 NVIDIA、NVIDIAのロゴ、GeForce GTXのロゴ、GeForce、Kepler、SLI、TXAA、PhysX、FXAA、3D Vision、3D Vision SurroundおよびCUDAは、米国およびその他の国における登録商標および/または商標です。OpenCLは、Khronos Group Inc に対して使用許諾されたApple Inc.の商標です。その他の社名および製品名は、それぞれ該当する企業の商標である場合があります。