■昔の面影も残しつつ品質面で信頼を築くASRock。その魅力を徹底解剖
【ハードウェア編】
【ソフトウェア編 第1回】
【ソフトウェア編 第2回】

古くは不可能を可能とする“変則”マザーボードで人気を博したASRock。しかし現在は、CPUメーカーによる“縛り”が厳しくなり、“抜け穴”を利用したようなイレギュラを楽しむことが難しくなった。そうした背景のためか、現在ASRockは“変則”マザーボードメーカーから“真面目”で“堅実”なマザーボードメーカーに生まれ変わっている。古参の自作PCユーザーの中には、まだ一時期の“変則”イメージを引きずっているかもしれない。そんな古参自作ユーザーに新生ASRockを知ってもらうために、そして自作PCデビュー間もないユーザーにASRockというメーカーをより深く理解してもらうために、2回にわたり同社のマザーボードを裸にしてみよう。

まず、ASRockマザーボードの特徴を知っていただくため、1回目は写真とともに各所の解説をしていこう。次回は実際に動作させ、ハードウェアの特徴と写真では説明しづらいソフトウェア面を紹介していこうと考えている。

今回用意したのは2製品。どちらもIntel Z77 Expressチップセットを採用したLGA1155向けマザーボードだ。1枚目は同社のIntel Z77マザーボードでもゲーマー向けフラッグシップに位置する「Fatal1ty Z77 Professional」。フラッグシップだけにASRockの独自機能のほとんどをカバーしており、各種機能を紹介するのに都合がいい。また、フラッグシップと言いつつも、実売価格で20,000円強と求めやすく、これからPCゲームの世界に脚を踏み入れようという方にオススメだ。2枚目は「Z77 Extreme6」。メインストリーム向けの製品で、実売価格は15,000円強と、Intel Z77マザーボードのミドルレンジ帯に位置している。コストパフォーマンスも考えた自作PC選びの本命に位置する製品が、どのくらい多機能なのか、どのくらいオリジナリティを持っているのか、そうした点を紹介できると思う。では早速、2枚のマザーボードを隅々までチェックしていこう。

ゲーマー向けフラッグシップ「Fatal1ty Z77 Professional」

Intel Z77 Express採用ゲーマー向けマザーボード「Fatal1ty Z77 Professional」

古くはCeleron 300Aのように、誰でもがオーバークロック(OC)にハマった、いや、300Aを買ったならOCするのは当たり前といった時代もあった。だが、現在は定格クロックでも十分にパフォーマンスが得られ、なおかつOCが一部のCPUに制限されるという状況となり、ほとんどの方がCPUを定格で運用するようになった。しかしそうなると、OCマニア向けのフラッグシップ・マザーボードの存在意義が希薄になってくる。ところが、そうしたOCマニア向けフラッグシップ・マザーボードに代わり、ぐいぐい存在感を増しているのが「ゲーマー向け」フラッグシップモデルだ。

ゲーマー向けマザーボードのポイントとなるのがマルチGPUへの対応だ。Intel Z77を採用したハイエンド・マザーボードでは、グラフィックスカード×2枚までのマルチGPU対応というのが一般的。こうした製品の場合、CPUからのPCI Express x16レーンを、8レーン×2本に分割し振り分けている。ところがFatal1ty Z77 Professionalでは、さらに1枚グラフィックスカードを追加可能で、計3枚のマルチGPUを利用できる(AMD Radeon HDの3-way CrossFireXに対応)。1番目、2番目のx16スロットは、通常どおり16レーン1本または8レーン2本で利用し、3本目はチップセットを経由するPCI Express 2.0を4レーンまとめて利用可能としているのだ。しかし、チップセット側のPCI Expressも、本来4レーン余ることなどあり得ない。それなのに4レーンをグラフィックスカード用スロットとして供給できるのは、PLX8608というPCI Express スイッチングチップを採用しているためだ。このチップがLANのスイッチングハブのように、PCI Expressバスの限られた帯域を有効活用してくれるため、時にはグラフィックスカード用のスロットに、時にはUSB 3.0やGbEチップへと繋いでも、渋滞を避けられるのだ。


また、ゲーマー向けPCは安定性が求められる。そのため、デバッグLEDや電源・リセット用のオンボードスイッチを搭載する。PCケースに組み込む前に各種パーツを接続し、通電チェックを実行。問題がないことを確認してからPCを組み立てられる。万が一問題があれば、POSTコードを表示できるデバッグLEDによって原因を特定し、対策を講じられるというわけだ。POSTコードの表示する記号の意味は、取り扱い説明書に4ページにわたって解説されている。

  

PLX8608チップによってチップセットからの限れたPCI Expressレーンを有効活用している

マザーボード右下の区画にデバッグLED、電源・リセットボタンを装備。ほかにもバックパネルにCMOSクリアスイッチを備える

少しユニークなのがIDE(Ultra-ATA/133)ポートの搭載だ。今やすっかりSATAに取って代わられたストレージ用のインターフェースだが、古い光学ドライブを使い回している古参の自作ユーザーはまだ多くいらっしゃるだろう。さらに、しばらく自作PCを組み直していないという方も、古い機器からデータを吸い出すといった用途で活用できる。今はほとんど搭載例を見る機会のないIDEポートだが、まだまだ活用したいというユーザーにはありがたい存在だ。

  

メモリスロット横にIDEポートを1基搭載

マザーボード下段には最近めっきり使わなくなったフロッピーポートも装備