それは"キワモノ"から始まった……
マザーボードのグローバルベンダー「ASRock」。自作ユーザーの間で話題になり出したのは2006年頃にさかのぼる。
「代理店として日本でASRockを扱い始めたのが2003年。販売店を拡充していく中でお付き合いが始まったのが、『TSUKUMO(以降、ツクモ)』さんです」と語るのは、ASRock製マザーボードの日本正規代理店である、株式会社ユニスターの斉藤氏(以降、斉藤氏)。
「以前から、ASRockに注目していました。ラインナップを見ていると。当時からユニークなものが多かったですね」と当時を振り返るのは株式会社Project White TSUKUMO eX. フロア長の小川氏だ(以降、小川氏)。
多くの自作ファンにとってASRockは、ある意味カスタマイズ・スピリッツというか、チャレンジ・スピリッツというか、「こういう製品があったら面白いのに」という思いを叶えてくれるベンダーという位置づけだった。それを確固たるものにしたのが、「939Dual-SATA2」や、「4CoreDual-SATA2」といった製品群。一世代前のプロセッサと最新チップセットを組み合わせることにより、ユーザーは手持ちのパーツを利用しつつ、今後のプラットフォームをチェックすることができるというメリットがあった。ほとんどのマザーボードメーカーが一斉に最新チップセットとプロセッサユニットを変更してくるのに対し、ASRockはちょっと斜めからの製品も市場に投入していたのだ。
「4CoreDual-SATA2」はLGA775のクアッドコア対応、AGP、PCI-E、DDR、DDR2とステップアップすることが可能。搭載するインタフェースが幅広く、サウスブリッジにVT8237Sを搭載することでSATA IIにも対応している |
「こうした製品は、仕様やBIOSなどの情報をツクモさんに見てもらい、可能性がある製品をピックアップして日本市場に持ち込んできました」と斉藤氏。
自作のヘビーユーザーやコアユーザーが集う"秋葉原"の中にあって、大手パーツ販売店のひとつとして存在しファンの多いツクモには様々な声が寄せられる。
「お客様の意見や、プラットフォームの推移と背景。こうした情報が集まるのがこの街の特長でもあります。そんな中でいろいろな情報を見聞きしていると、ニーズも見えてくる。そういう理由で、ユニスターさんに製品を頼んだりしていますね」と小川氏は語る。
"キワモノマザーボード"、"ヘンタイマザーボード"、日本語としては"アレ"な異名だが、決してその名が示す意味合いで口にされることは無い。ヘビーユーザーやコアユーザーたちの愛着がそこには込められているのだ。こうして、"普通ではない製品をリリースする「ASRock」"は、ニッチユーザーたちの心を掴んでいった。
法人にもメリット
「ASRockの特長としてもうひとつユニークなのが、古いソケットのマザーボードを販売し続けている点が挙げられます」と語るのは株式会社Project White 商品部 課長 駒形氏(以降、駒形氏)。
他メーカーが割と早い段階で、次々とプラットフォームを変えてくるのに対し、ASRockでは古いチップセットやソケットを搭載するマザーボードを製品として残しておく。「在庫を抱えるというのではなく、きちんと生産して出荷しています」と斉藤氏。
もちろん、コンシューマユーザーの中にも古い環境を維持したいというニーズもあるが、決定的なのは法人だ。「法人のお客様にとってパソコンは壊れたからといって気軽に取り換えられる性質のものではないのです。修理部品としてのマザーボードがあれば、それだけで環境を整えられるケースもたくさんあります」と駒形氏はその背景を語る。
修理しながらパソコンを使い続けるといったニーズを満たせる数少ないパーツ供給先としてもASRockは機能しているのだ。「中には、マザーボードを数十個お買い求めいただいたお客様もいます。理由を聞けば『修理部品として必ず必要になるからストックしておきたい』というお答えでした」と斉藤氏。こうした製品を用意していることも、ASRockの評価を上げているポイントなのだろう。