2002年にマイクロソフトが提案した「タブレットPC」は爆発的に普及したとまではいえないが、そのスタイルはビジネスユースを中心に確実に定着しつつある。とくにキーボードを一体にし、ノートPCとタブレットPCの双方のスタイルが使い分けられる「コンバーチブル型」が、タブレットPCの可能性を大きく広げたといっていいだろう。
富士通LOOX Pシリーズはコンバーチブル型の先駆けになった製品のひとつ。タブレットPCとノートPCの2つのスタイルを瞬時に切り替えて使える、魅力あふれる製品だ。LOOX Pの最新2008年春モデルを紹介していこう。
利用シーンに合わせてスタイルが変えられるモバイルタブレットPC
ご存じの読者には言うまでもないだろうが、タブレットPCは、ペン(スタイラス)で操れるPCだ。PDAのノートPC版とでもいえるコンセプトのPCで、メモ帳のような感覚で使えるのが利点だが、さすがにすべてペンだけの操作では不便なもの。そこで、ノートPCの液晶ディスプレイをヒンジ部で回転させ「タブレットPCとしても使えるノートPC」に仕立てたのが「コンバーチブル型」だ。
付属ペンは本体右サイドに収納されており、ワンプッシュで取り出せる。必要に応じてサッとタブレットPCにスタイルを変え、ペン書きに切り替えられるわけだ。
これが意外に便利なのである。たとえば、打ち合わせの最中、ホワイトボードに描かれた図をメモしたいとしよう。普通のノートPCではまず無理だから、メモ用紙を取り出さなければならないシチュエーションだ。しかし、LOOX Pなら、その場でタブレットPCに切り替え、ささっとペン書きでホワイトボードの図を転記できてしまう。
Windows Vista Home Premiumには、こうした用途に便利なWindows Journalというアプリケーションが付属。ペン書き図などを入力できる一種のメモ帳で、テキスト枠を使ったキーボード入力にも対応できる。また、ペン書きした文字を後から自動でテキストに変換する機能も備えるなど、タブレットPC用にカスタマイズされた使いやすいアプリケーションだ。特別なソフトを用意せずとも、素早く手軽にペン書きしたいシチュエーションに対応できるのも魅力の一つだろう。
ところで、Windows XP時代は「Windows XP Tablet PC Edition」という、一般に普及していたWindows XP Professional/Home Editionとは異なるエディションのWindowsが必要だった。Windows XP ProfessionalにタブレットPCの機能を追加しただけともいえるエディションだったが、「特別なWindowsが入っている」というだけでタブレットPCを敬遠していた人も多かったようだ。
だが、Windows VistaではタブレットPCの機能が標準で組み込まれており、タブレットPCに特別なエディションのWindowsは必要ない。LOOX Pにプリインストールされているのも、ごく普通のWindows Vista Home Premiumである。Windows Vistaが標準で持つタブレットPC機能を使わないのは逆にもったいないといえるくらいだ。
写真で紹介したように、タブレットPCスタイルに切り替えているときにはキーボードは利用できないが、代わりに手書き文字認識によるテキスト入力が利用できる。
手書き文字認識にもいい印象を抱いていない方がいるかもしれないが、Windows Vistaの手書き文字認識機能は最新のものだけあって、認識率は非常に高い。多少、乱暴に書いた字でも読み取ってくれることも多く、驚かされる。もちろん入力効率はキーボードには及ばないが、短い文章の入力程度なら十分にこなせるだろう。
LOOX Pのタッチパネルには感圧センサーが使われている。そのため、操作は付属ペンに限定されているわけではない。急いでいるときには指の先でサッと操作することもできる。細かいことだが、こうした点も使いやすさにつながっているようだ。
手持ちスタイルでも無理なく使用可能
B5サイズの本体は、タブレットPCとして非常に使いやすいという点も強調しておきたい。大きすぎず、かといって小さすぎない、ほどよいサイズに仕上げられているのだ。
タブレットPCスタイルでの使用時には片手に持って使うことが多いので、重量が気になるところだろう。LOOX Pの重量は約960g(標準の内蔵バッテリパック搭載時)。タブレットPCのスタイルでも片手で持って無理なく使える、軽量なPCに仕上げられている。
また、電源を入れたまま抱えて移動するというシチュエーションが多いタブレットPCでは、振動によるHDDのダメージが心配になるが、その点もしっかりと考慮されている。振動を検出してHDDのヘッドを退避させる「HDDプロテクション」がプリインストールされているのだ。
それでも不安という方には、富士通の直販サイト「WEB MART」で選択できるフラッシュメモリディスク(SSD=Solid State Drive)がお勧めだ。フラッシュメモリを記憶媒体に使用するSSDなら、振動でダメージを受けることはない。さらに安心して使えるだろう。