マイコミジャーナル読者のみなさん、私のブログにようこそ! 本連載では私が執筆するブログ「SOA Center Service Oriented Architecture Blueprints」に掲載されたトピックスから6本を選び、日本語に翻訳してお届けします。記念すべき第1回目は、9月に訪れた日本の印象、ならびに日本の技術力について、私の考えを述べたいと思います。

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日本で開催されたビジネスイノベーションフォーラムでの講演以来、私は日本が技術をリードする際の独特な形式について考えをめぐらしてきた。

日本は経済的には難局を迎えている。けれども、デジタルの時代や台頭しつつあるグローバルネットワーク文化に関して、日本がもつ独特な強みを考察することは重要だ -- 日本発の「ヒット商品」の数々をシリコンバレーの視点で吟味しようと思うならば。

最近の日本発最大の「ヒット」のひとつに任天堂のWiiコンソールがある。私もこの週末、Wii Fitのバランスボードを試してみたのだけれど、そこでわかったのは、Wiiコンソールで初めて目にした没入型の技術に、それが驚異的な拡張を施しているということだ。90年代初頭の「バーチャルリアリティ」ゴーグルの没入感をはるかに越え、運動感覚の理解に対応した触覚型/サイバネティクス型のインタフェースに近づいている。運動感覚は人間と技術のインタフェースにどのような影響を及ぼすだろうか? ヨガなども、少なくとも5,000年前にアジア(インド)で開発された「技術」だ。そこでは身体と心の結びつきが探求される。では、コンピュータはそれに何を付加できるだろう? Wii Fitのコンソールでは訓練やガイダンス、目標の達成度などが提示され、目標はときに数週間、数カ月、あるいは数年にも及ぶ……まさに自分自身の身体を個別に体験できるのだ。ヨガの訓練のクオリティでいえば、たとえばraviana.comなどとは比べようもないが、Wiiはあくまで基本を学ぶビギナー向けだ。

任天堂Wiiの日本的な独自性とは何だろう? それはいろいろと考えられる。任天堂のデザイナー・宮本茂氏のファンタジー世界との接合などもある。けれども私などからすると、世界的に輸出可能で、しかも深く日本に根ざしている、ほかに見られない特徴といえば、やはり人間本来の性質とマシンの世界との調和をおいてほかにない。

西欧思想のルーツのひとつにはデカルト哲学がある。その哲学では心と身体との分離が示されている(心身二元論)。また、西欧思想での根本的な区別はもうひとつあって、それは旧約聖書に記されているように、他の動物から区別された人間の位置づけにある -- なにしろ人間は、神の似姿として造られ、地上の動物を統治する役割を与えられたというのだから。一方で、日本独自の神論を照らし出すものには神道の思想がある。それはアニミズム的で、人間も自然も分け隔てなく霊魂によって支配されるのだという。私が今こうした違いをあえて取り上げるのは、人間と自然の結合という思想が、日本流の技術へのアプローチに反映していると考えるからにほかならない。

日本は気象モデリング分野のスパコンで世界をリードしている。ロボット犬のアイボも日本で生まれ育った。世界で最も人気のハイブリッドカー、トヨタPriusもある。技術的なもの、自然的なもの、そして人間が体験する精神面を融合できる点は、日本の技術的先進性の一部をなしている。

日本の技術に輸出向きでない部分があるとすれば、ひとつにはその社会的な側面が挙げられるだろう。高速鉄道システムとして有名な新幹線でも、携帯エコシステムであるi-modeでも、技術の採択と技術的創意とは切り離しがたい関係にある。

技術の世界を自然の世界とブレンドする能力を見るにつけ、私はSOAガバナンスが日本にも根ざすと確信している。人間本来の性質への理解、同族的意識、組織優先の行動様式、そして先進技術。それらを結合できることこそ、こうした日本の技術の採用を促す鍵となっていくだろう。

日本人と西洋人の考え方の違いは、SOAシステム構築の際にも考えておきたいポイントである

(翻訳: 嶋崎正樹 / イラスト: ひのみえ)