EclipseでPHP開発
EclipseはJava言語向けの統合開発環境として利用されることが多いが、プラグインをインストールすることでJava以外の言語での開発を行うことも可能だ。C/C++やCOBOLをはじめ、スクリプト言語(Light Weight Language、いわゆるLL)向けのEclipseプラグインについてもさまざまなものが存在する。
そんな中、EclipseプロジェクトでもLL向けのプラグインの整備が行われつつあり、PDT(PHP Development Tools)プロジェクトではEclipseの標準Web開発プラットフォームであるWTPをベースにPHP向けの統合開発環境の開発が行われている。
PDTは現在開発中であり、まだ正式版のリリースには至っていない。今回は執筆時点の最新版であるPDT 0.7 RC3の試用レポートをお届けする。
PDTのインストール
本稿ではWindows上でApache 2.2.4上でPHP 5.2.1が動作する環境を前提として解説を行う。プラットフォームやソフトウェアのバージョンが異なる場合は適宜読み替えていただきたい。
PDTはこのサイトからダウンロードすることができる。筆者はオールインワンパッケージ(pdt-all-in-one-S20070401_RC3-win32.zip)をダウンロードした。これを適当な場所に展開すればよい。eclipse.exeをダブルクリックすればPDTがインストール済みのEclipseが起動する。
また、PDTからPHPスクリプトの実行やデバッグを行うにはPHP側にZendDebuggerをインストールする必要がある。Zendのサイトから使用しているバージョンにあったZendDebuggerを入手し、ZendDebugger.dllをPHPをインストールしたディレクトリにコピーする。本稿ではZendDebugger-5.2.3-Windows-i386.zipをダウンロードし、アーカイブ内の52x_comp\ZendDebugger.dllをC:\Program Files\PHP\フォルダにコピーした。
また、php.iniに以下の内容を追記する。
[Zend]
zend_extension_ts="C:\Program Files\PHP\ZendDebugger.dll"
zend_debugger.allow_hosts=127.0.0.1
zend_debugger.expose_remotely=always
Apacheを再起動するとZendDebuggerが有効になっているはずだ。phpinfo関数で以下のように表示されることを確認しておこう。
図1 ZendDebuggerインストール後のphpinfoの表示結果 |
図1 ZendDebuggerインストール後のphpinfoの表示結果
PDTの環境設定
Eclipseのメニューから「Window」→「Preferences」を選択し、PDTの初期設定を行おう。まずはPHPインタプリタを設定する。設定ダイアログの左側のツリーから「PHP」→「PHP Exacutables」を選択し、「Add」ボタンをクリックすると以下のようなダイアログが開くので、PHP executable labelに任意の文字列、PHP directory pathにPHPのインストールフォルダを指定して「OK」をクリックすればよい。
図2 PHPインタプリタの設定 |
次にPHPスクリプトをWebサーバ上で動作させるための設定を行う。同じく左側のツリーから「PHP」→「PHP Servers」を選択する。すでに「Default PHP Web Server」というエントリが登録されているので、これをダブルクリックして以下の設定を行う。
- Publish Projects to this Serverにチェックを入れる
- DierctoryにApacheインストールフォルダ配下のhtdocsフォルダを指定する
図3 Webサーバの設定 |
PDTはこのほかにもさまざまな設定が可能なので、ひと通り目を通しておくといいだろう。
PHPパースペクティブ
さて、それではPHP開発に取りかかろう。PDTはPHP開発用のPHPパースペクティブを提供している。
図4 PHPパースペクティブ |
PHP Explorerビューで右クリックから「New」→「PHP Project」を選択するとPHPプロジェクトを作成できる。同様に右クリックから「New」→「PHP File」でPHPスクリプトを作成することができる。
図5 プロジェクトとファイルの作成 |
PHPエディタ
PHPエディタではJavaエディタなどと同様、[CTRL]+[SPACE]で入力補完が可能なほか、スクリプトに構文エラーが存在する場合はリアルタイムにエラーとして報告してくれる。タスクタグやフォールディングといった機能も利用可能だ。アウトラインビューにはスクリプト内の関数やクラスの構造がツリー状に表示される。
図6 PHPエディタ |
また、[CTRL]+ マウスクリックで関数や変数の宣言部分などにジャンプするハイパーリンク機能も実装されている。細かい機能だが、ある程度大きなスクリプトを編集している場合には便利な機能だ。
スクリプトの実行/デバッグ
作成したスクリプトはPHP Explorerビューで右クリックから「Run As」→「PHP Script」でコマンドラインから実行できる。また、「Run As」→「PHP Web Page」でWebサーバにデプロイしてWebブラウザで実行することも可能だ。
図7 PHPスクリプトの実行 |
同様に右クリックから「Debug As」で実行するとPHPスクリプトのデバッグを行うことができる。デバッガの操作方法はJavaプログラムをデバッグする場合とほぼ同様だ。
図8 PHPスクリプトをデバッグ |
すでに完成の域に達している?
冒頭でも述べたとおり、本稿執筆時点でのPDTのバージョンは0.7 RC3となっており、まだ正式版のリリースには至っていない。しかし今回試用した印象では現時点でも充分実用に耐えうる機能と完成度を備えており、Eclipseプロジェクトで開発されているということもあり、将来性にも期待できる。
なお、PHP向けのEclipseプラグインとしてはこれまでもTruStudioやPHPEclipseなどが存在した。また、EclipseプロジェクトではPDT以外にも動的言語向け開発ツールのプラットフォームを提供するためのDLTKというプロジェクトも存在する。こちらの動向も注目だ。