私が取っていた英語のあるクラスでは"Phone Pass Test"というテストが必須で、これで決められた点数以上を獲得しないとそのクラスをパスできないようになっていました。名前の通り、電話によるテストです。読み上げられた長い文章を即座に覚えてそのとおりに言ったり、単語の定義や特徴を説明されで、「これはどの単語?」と聞かれたりと、受話器を握る手に汗が滲む緊張のテストでした。とはいってもこれはテストの話。ふだんの電話なら聞き返すことはできるし、何度も繰り返して言うこともできますから、もっと簡単です。今回は電話越しの会話では何に気を付けるべきか、という話をしましょう。
簡単だと言われても、聞き取れないし、緊張して話せないし、どうしたらいいのかわからなくなる……これが読者のみなさまの正直なところでしょうか。そんな緊張をすこしでも和らげてくれそうなcuesが"Telephone Tips"で紹介されていますので、ご覧になってください。この中でもとくに「1. Speak slowly and clearly」「2. Make sure you understand the other speaker」「6. Practice dates and numbers」に気を付けると、電話越しの会話でもわかり合えるようになると思います。
相手のスピードに合わせるのではなく、自分のペースで話す
まずは"Speak slowly and clearly" - ゆっくり、はっきり話すように心がける、です。相手の話すスピードが速いので、ついていこうと早口にしゃべってしまえば、相手はあなたが話すことをほとんど理解できないかもしれません。また、英語の母音と同じ音は日本語にないという話を第7回でしましたが、電話で伝わる音は対面の会話以上にまずい発音が強調されて違う単語に聞こえてしまうことがあるので、さらに気を付けないといけません。幸いなことに相手に顔は見ませんから、恥ずかしがらず、大きな口を開けてできるだけはっきりと大きな声で話すようにすると、わかってもらいやすくなるでしょう。
「ゆっくり、はっきり話す」に「繰り返し同じことを言う」も付け加えるとさらにいいでしょう。電話で話をしていたときに、どうやら私の母音の発音がまずかったらしく、まったく違う単語と聞き間違えられて誤解されたことがありました。そうならないためには少しでも違うかなと思ったら、"I mean ..."と違う言い方で捕捉できればかなりよくなります。"I said ..."と同じ内容を繰り返すだけでも違うはずです。
わかったフリは厳禁! わからなければわからないと言おう
2つめの"Make sure you understand the other speaker"は、電話に限らず会話でも大切ですね。短くていいので、自分が理解した内容を文章にして言ってみて、最後に"Am I right?"や、またはひと言、"Right?" "OK?"と付けるだけで十分ですから、聞いてみてください。自分が確認できると同時に、こちらがどの程度理解しているかが相手に伝わるので、誤解していたことが後でわかるような事態が減るはずです。もし、相手の話すスピードが速すぎてついていけなかったら、"Would you speak slowly?"と言ってみたり、"Sorry?"や"(Would you) say it again?"のように聞き返しましょう。米国人どうしの会話でも"Sorry?"で聞き返している場面は珍しくありません。わからないと思ったら、積極的に聞きましょう。
ただし、"Excuse me?"を言うときのトーンには気を付けた方がよさそうです。このフレーズは音の上げ下げや強さによっては"何言ってるの!"や、"ちょっと待ってよ!"のように気分を害した意味を含む言い方になってしまいます。相手が外国人で英語が苦手である事情を理解してくれている人ならいいのですが、言われたほうは自分の言い方に非があったように感じるケースもあると覚えておいてください。
数字の表現の難しさ…たとえば"3億5030万"をすぐに英語で言えますか?
想像以上に問題があるのが3つめの"Practice dates and numbers"です。使用される単語数は圧倒的に少ないですし、お馴染みの単語ばかりなので大丈夫…と思いがちですが、そうでもないんです。私の場合、対面の会話では電話番号を発音して間違えられることはなくなりましたが、電話ではまだあります。とくに、自動応答の場合、正しく認識されない番号がいまだに1つはあります。数字の間違いは影響が大きいので、辞書を引いて発音を確認するといいでしょう。
数字の読み方も若干違います。日本では1ケタずつですが、米国では2ケタごとに読むことが多いんです。たとえば"1245"はtwelve forty-five、"145"はone forty-fiveです。また"$3.99"はthree ninety-nineと言います。たまに、確認すれば"three dollars and ninety-nine cents"と丁寧に言い直してくれる場合はありますが、最初からこのような言い方はしないのが普通です。簡単なようですが、電話越しにペラペラと話されるとわからない場合が多いので、気を付けましょう。
さらに、日時の確定は電話で済ませることの方が多いと思いますので、時間の概念の違いも知っておくといいでしょう。たとえば、morningと言われたら何時から何時くらいだと思いますか? 日本語の場合、朝、午前、昼、午後、夕方、夜のような分け方をして、朝というとせいぜい9時くらいまでしょうか。ところが、米国ではmorningというと、お昼の12時までの時間をいいます。12時以降はafternoonで、その後の時間帯であるeveningは、日本語でいう夜と同じような感覚です。具体的に何時という数字を使う場合でも、"8a.m."と"8p.m."ではまるで違いますので、しっかり聞いて確認しましょう。
以上、電話で会話するときの心構えをいくつか取り上げましたが、いかがでしょうか。心構えはわかったので練習したいという方は最初に紹介したTelephone TipsのPracticeや、Telephone English Vocabularyにサンプルがあるので試してみてください。Telephone English Vocabularyには参考になりそうなWebページへのリンクもあるので、そちらも合わせて見てみるといいのではないでしょうか。