ひらめきや思いつきだけの企画書を書いた経験、あなたにもありませんか? |
こんにちは。織田隼人です。
前回は、「お店に入ってもらい」「その商品を買ってもらうためには」何をすればよいのか、男女の違いに着目して分析してみました。異性にとってはナンセンスだと思ってしまう店舗づくりや広告戦略も、同性にとってみれば非常に効果のあるものだというケースは多々あります。流行しているようだけれども自分には合わないな、と感じられる店舗や広告戦略を見かけたら、なぜそのような方法がとられているのか考察してみると、新しい視野を獲得するチャンスになるかもしれません。
さて、今回はそのように「新しいひらめき」を「手に入れた!」と思ったらどうすればいいのかについて解説してみます。視野は広いに越したことはありませんが、その中で見つけたダイヤの原石を扱うときには、まったく正反対の態度をとってあげることが重要なのです。
決断までの3ステップ - いま、自分はどのステップに?
新しい企画や戦略の改革などを実行するためには、本コラムのテーマでもある「決断」が欠かせません。その決断が良質なものであればあるほど、企画や改革を成功へと導くことができます。
しかし、一口に決断と言っても、その内部にはさらに細かなプロセスが潜んでいることにお気づきでしょうか?
「決断の質を上げる」とは、そのそれぞれのプロセスで最善手を打とうと努力することです。早速、決断のためにはどんな手続きが求められているか見てみましょう。
- 決断の前に視野と選択肢を広げる(アイデア出し)
- 良さそうなアイデアを検証する
- 1つのアイデアを実行することを決める
どんな決断を行うにせよ、この3ステップは必ず経ているはずです。なので、大切なのはこの3ステップを覚えることではなく、自分の決断がいま、どのステップにあるのかを意識し、それに相応しい態度を選択することでしょう。
前回までは、1のアイデア出しの具体例について紹介してきました。「一貫性の原則」に縛られず、「自分に合わないな」と思った戦略をいきなり排除せずに、肯定的に捉えること。これが、アイデアを出す際に最も求められている態度です。
ステップ2に求められているのは「批判的な態度」
さて、今回はステップ2で取るべき態度を紹介します。ステップ2で求められているのは「検証」、つまり、「批判的な態度」です。
店舗づくりのアイデアにしても、広告戦略にしても、いろいろな事例を巡るにつれ、あなたの頭の中にはたくさんの「行けそうなアイデア」が産まれてくるでしょう。また、そうしたことの積み重ねの果てに、突如「非常に斬新なアイデア」がひらめいてくることもあるかもしれません。
しかし、「行ける!」と思えるアイデアが出た時点で、あなたの決断はステップ2に移行しているのです。企画が失敗する多くの理由は、ステップ2を無意識的に済ませてしまったから、と言ってもいいでしょう。
ステップ2で重要なのは「自分にとって都合の悪い情報を積極的に集めること」です。
たとえば、「実力派歌手のコンサートを告知しよう」という企画が立ち上がり、さまざまな広報のアイデアが浮かんだとします。コンサートを行うには箱を押さえる必要がありますから、大体何人くらい集められれば成功というボーダーラインもあります。
いろいろなアイデアのうち、あなたは「今はやりのツイッターを使って告知をしてみる」というアイデアに魅力を感じました。この時点で、あなたの決断はステップ2に移行しています。
さて、あなたは具体的にどのような「検証」を行えばいいでしょうか?
今回は答えより先に、「何が危険か」をお話しします。たとえば、「彼には○○人の固定ファンがついているはずだから、まあそのくらいは埋まるだろう」「ツイッターで彼は××人にフォローされているから、彼に告知してもらえば半分くらいの人が来るのでは」というどんぶり勘定です。
「検証」のステップでまず大切なのは、「否定的に考えてみること」だと述べました。この場合は「会場の立地、チケットの値段次第では、ファンによっては来ない」「そもそもツイッターで宣伝的な発言を行うことは、どの程度の告知効果があるのか」と疑ってみることです。
先の推測で出した「○○人」や「××人の50%」という数字の根拠はなんでしょうか。主観的に導き出した数字である場合、その実行にはかなりの危険が伴います。しっかりとした基準、統計的手続きを経て行われたデータを参考にしないかぎり、厳密な検証は困難になります。
人はとにかく、「自分に都合のいい情報」ばかりを信じようとしてしまいます。否定的なデータに対し、「これはここがおかしい」と疑うことは容易にできますが、自分の仮説を証明してくれるデータに対しては、往々にしてそれができません。
自分がステップ2にいることを自覚し、あえて辛口すぎるくらいの検証を行ってみましょう。そうすることで、決断後に襲ってくるさまざまな「こんなはずじゃなかった」をひとつでも多く減らすことができますよ。
若者はとかく「こんなすごいアイデアなのに、どうして上司はネガティブなコトばかり言うのかな」と思いがち。しかし、実行の前に批判を受けておくことで決断の質は格段に上がる。上司はここで人気取りに走らず、しっかりとネガティブ検証をすべき |
(イラスト ナバタメ・カズタカ)
執筆者プロフィール
織田隼人 (ODA Hayato)
心理コーディネーター&経営コンサルタント。心理についての解説の仕事をメインにしながら、経営のコンサルティング業務も行っている。元々は経営コンサルがメインで、マーケティングに関わりながら心理学を学んできた。心理の仕事では特に「男女の心理の違い」や「意思決定」を専門としている。男女の心理の違いを解説したブログに「男心と女心」があり、月間アクセス数は100万を超える。ほかにも心理学を学べるWebラジオやアニメーションも配信している。Webサイトはこちら → 知りたい! 相手の気持ち