今回のオススメ教材『YouTubeで学ぶリアル英会話』

今回は『YouTubeで学ぶリアル英会話』(晴山陽一 著)を紹介しつつ英語スピーチの活用法について考える。

英語の習熟レベルによって学ぶべき英語の教材は変わってくる。初歩の段階では出版社によって作られた英語のテキストがよい。この段階では洋画を字幕なしで見てもわかりっこないから。中級レベル以上になると難しい語彙にあふれたテキストに走る人もいる。しかしこれはあまりおすすめできない。いつまでたっても学習というスタンスから抜けきれなくなるからだ。

中級になってくると、そろそろ生の英語に触れ始めてもよい頃だ。今はネットの時代。ネット上に生の英語がたくさんあるので使わないと損というもの。無料で使えるYouTubeはその中でもぜひとも活用したいコンテンツである。

YouTubeには英語学習の教材になるものが多いが、スピーチの動画もそのひとつである。スピーチが英語学習に適している理由は、原稿がしっかりと作られていること。話し手の伝えたいことが最大限に伝わるように言葉が選ばれているため、英語学習から見てもよい教材なのだ。よいスピーチはそのまま暗唱して覚えることがよい学習法といわれている。しかし全部を覚えることは大変なので、あなたがビビッとときた表現のみを覚えるようにするのがコツだ。

『YouTubeで学ぶリアル英会話』には21のスピーチがさまざまな分野からセレクトされており、スピーチの背景の説明や、覚えておきたい表現などの解説が掲載されている。

ここで取り上げられている英語表現は、有名人がスピーチで使っている表現なので、私たちも自信を持って使うことができる。

たとえば以下のようなスピーチが紹介されている。

  • セヴァン・カリス=スズキ(12歳の少女による1992年国連環境サミットでの伝説のスピーチ)
  • ランディ・パウシュ(余命宣告を受けた大学教授による最後の授業)
  • ビル・ゲイツ(ハーバード大学の卒業式記念講演)
  • スティーブ・ジョブズ(スタンフォード大学の卒業式記念講演)
  • カルロス・ゴーン(電気自動車「リーフ」発表会)
  • 緒方貞子(ダボス会議)
  • ワンガリ・マータイ(MOTTANNAIキャンペーン)
  • バラク・オバマ(2004年伝説のスピーチ)
  • ビル・クリントン(不適切な関係を国民に謝罪)
  • ジョージ・W・ブッシュ(9.11同時多発テロ報復宣言)

ほかにも10スピーチが収録されている。この中から私がぐっときたスピーチを紹介しよう。

まずはセヴァン・カリス=スズキ。彼女はカナダ人の12歳(当時)。環境問題について国連でスピーチして感動を呼び起こしたという伝説のスピーチである。1992年のことなので、かれこれ20年近くが経とうとしているが、環境問題の状況はまったく改善されていないことに驚愕する。

彼女のスピーチは平易な英語でありながら感動を呼び起こすという意味で我々が見本とするべきものであると晴山陽一先生も言っている。

字幕なし、英語字幕付き、日本語字幕付きの3バージョンを探しておいたので、まずは日本語字幕付きで内容を理解した後、英語字幕付きをみて、最後に字幕なしをみるとよいだろう。

Severn Suzuki speaking at UN Earth Summit 1992 (字幕なし)

次にランディ・パウシュ教授の「最後の授業」。これは書籍にもなったのでご存じの人もいると思う。余命宣告をされたヴァーチャルリアリティの研究者であるランディ教授が人生を振り返り、子供の頃の夢をどのように実現してきたかについて語っている。全体が1時間以上と長いので、まずは日本語字幕で観ることをおすすめする。

教授が学んだ教訓 - 「壁とはあなたのやる気を試すためにある」「他人の批判は受け入れる」「感謝を示す」「不平を言わずただ働け」など心に染み入る。

日本語版の動画と、動画の中のスライドの英語表現とを合わせて見れば、英語表現の訓練になるはずだ。

Randy Pausch Last Lecture: Achieving Your Childhood Dreams (日本語字幕)

ここでの日本語字幕はGoogleの試験サービスによる音声を字幕に変換する機能なので、間違っていることも多い。YouTubeにCCという赤いボタンがあれば、この機能により英語字幕表示が可能となる。

3つめは、これも有名なスティーブ・ジョブズのスタンフォード大学卒業式でのスピーチ。Stay hungry, stay foolish. というフレーズは知っている人も多いだろう。このスピーチは押さえておきたい。

Steve Jobs' 2005 Stanford Commencement Address (英語字幕)

こうして動画を見てみると、やはり我々英語学習者には、最初は日本語字幕か、せめて英語字幕が欲しいなと思う。上で紹介したGoogleの英語字幕作成機能も使える動画が限られているようだ。

最後に、英語字幕があったりなかったりするが、本書で紹介されているその他のスピーチからいくつかを紹介しておく。より深く理解したいならば本書『YouTubeで学ぶリアル英会話』を手に取って見てほしい。英語スピーチの中からキラリと光る表現を見つけ、それを自分のものにしていこう。

著者紹介

本多義則 (Yoshinori Honda)

日立製作所勤務のIT系研究者。10年前に趣味と実益を兼ねて英語学習を再開以来、アナログからデジタルまであらゆるツールを駆使して英語学習に励んでいる。職場では「英語ができる男」と見られているが、実はそうでもない真の実力との差を埋めるべく、英語学習をやめられなくなっている。休みの日の朝は英語のメルマガ執筆にいそしむのが習慣。取得した英語関連の資格は、英検1級、TOEIC955(瞬間最大風速)、通訳案内士(英語)。座右の銘は「あきらめない限り必ず伸びる」。著書に『伸ばしたい!英語力―あきらめない限り必ず伸びる』。Twitterアカウントはこちら