最近ニュース等でもよく耳にするように、日本女性の労働力率(15歳以上人口に占める労働力人口の比率)の動きは「M字カーブ」を描きます。これは、30-34歳頃に結婚や出産などを機会に退職する人が増え、その層の労働力人口がガクンと減ることを示しています。

日本や韓国で見られる"M字カーブ"

男女共同参画白書 平成24年版(内閣府男女共同参画局)によると、このM字カーブは日本や韓国に特徴的に見られる動きで、米国やドイツではこのような推移は見られません。また、スウェーデンにおいては、35-39歳の階層まで労働力率は上昇し続け、労働力比率の水準自体も高いことを同調査から見ることができます。

内閣府男女共同参画局サイト内ページより

このように、日本国内では良く見られる「結婚や出産を機会に退職する」という就業パターンですが、「退職せず働き続ける」というパターンと比較するとどうなるでしょうか。

平成17年版 国民生活白書「子育て世代の意識と生活」によると、大学卒業後から60歳まで中断することなく就業を継続した場合……

下のグラフの赤線(A)は、就業を継続した場合の賃金カーブ。青線(B)は、同期間中に育児休業を2回取得しつつ就業を継続した場合。AとBでは、生涯所得の違いは1,910万円との試算結果が出ています。

内閣府サイト内ページより

この差を大きいと見るか小さいと見るかは、それぞれのご判断にゆだねるとして、これを踏まえて下のグラフのケースを見て下さい。

内閣府サイト内ページより

グラフ中の破線(C)は、出産を機会に退職し、その後子どもが6歳になるまで専業主婦を経たのちパートとして復職した場合です。BとCとでは、生涯所得で2億円以上の差となることがわかります。これは単に就業している期間が短いことだけでなく、パート・アルバイトへの再就職の場合、給与水準が低いことや昇給や賞与が見込めないことによるものとされています。

育児等でいったん離職した社員の正社員復帰を推進する企業なども少しずつ増えてはきているものの、現状としては数年のブランクを経て離職前と同じ(もしくはそれ以上の)ポジションに復帰することは難しいと言わざるを得ず、Cの様にパート・アルバイトで復職するパターンが最も多くなっています。

このように金額の違いとして改めて見ると、結婚や出産にあたって「とりあえず辞めてから考えよう」と言うのには少し勇気が必要な気がします。

著者プロフィール

株式会社ここるく 代表取締役 山下真実
わが子を大切するために、ママが自分自身を大切にする子育てスタイルを提案し、人気のレストランが託児付きで楽しめるサービス「ここるく」を起業。保活の情報、子育てと仕事の両立アドバイスなど「実践的で分かりやすい」と雑誌等でも監修多数。
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