インテージと一橋大学、新日本スーパーマーケット協会は7月10日、流通・消費・経済における新たな指標の開発を共同で行なうプロジェクトを発表した。新指標は「消費者購買指数」として、9月から公表する予定だ。
3者による共同プロジェクトは、それぞれマーケティングリサーチ、学術研究機関、業界団体として参加することで、流通・消費・経済の新指標の開発に大きな意味合いを持つという。
具体的には、インテージのSRIと呼ばれるPOSデータを使用して、消費者の消費・購買活動を分析。一橋大学らが指数化することで、これまでに分析が難しかった「新商品」の投入による経済への影響・効果の分析を行なっていく予定だ。
使用するデータは、スーパーマーケットやコンビニエンスストア、ドラッグストアなど複数の小売業態における日本全国4000店舗のもので、これらを即時に分析して週次の指標値として集計から2週間後を目処に公表していくとしている。
新日本スーパーマーケット協会では、こうした分析に協力依頼を行い、新商品の投入効果などを分析することで、業界発展に寄与していくことを目的に据えている。
なお、一橋大学では、経済研究所の阿部 修人氏をリーダーに据え、消費者購買指数の開発と分析を行なう。プロジェクトサイトがインテージWebサイト内で公開されており、今後継続的に指数の公表を行なっていく。
世界の社会科学研究へ貢献
会見に登場した一橋大学 学長の山内 進氏は、このプロジェクトの意義を「世界の社会科学研究への貢献」と説明。「小売店や調査会社、学術機関が協力して、多くの小売店データを利用して学術的利用に活かす。これにより従来では困難だった重要な統計データを発表できるのではないかと思う」とした。
3者が無償で手を取り合うことで実現した同プロジェクトだが、学術目的で利用するだけではなく、現在はデータとしての取り扱いが難しい「生鮮食品のデータ加工」についても、データの統一化を目指していくのだという。
「産地や種類によって生鮮食品は取り扱いが異なり、非常に個性的。個性をデータの中でどのようにうまく取り込んでいくかが大事であり、こうした取り組みも有益なことではないかと考えている」(山内氏)
しかしながら、プロジェクトの主眼は消費者購買指数の新商品の投入効果測定だ。「経済学では、価格重視の側面もあるが、実際のマーケットにおいてはメーカーのイノベーションによる購買行動が重要。新商品が頻繁に登場する社会は、活発な社会だが、そこをミル指標がなかった。これを分析できる消費者購買指数を定期的に、迅速に社会へ公表することでより良き社会の実現のために(一橋大学として)活動したい」と山内氏は意気込みを語った。