フィンランドのJollaは11月27日(現地時間)、オープンソースのSailfish OSを搭載した同社初のスマートフォンを発売した。同日フィンランドのヘルシンキで開催されたイベントでは、最初のロットである450台が顧客に引き渡されたという。米Bloombergが報じている。
SailfishというOSに馴染みのある方は少ないと思うが、2011年にそれまで「MeeGo」の名称で進められていたLinuxベースのOSSプロジェクトがTizenプロジェクトに移管されたことを受け、もともとNokiaでN9などの製品を開発していたチームが独立して立ち上げたJollaという企業によって、コミュニティベースでMeeGoの開発が続けられたものがSailfishとなる。それまでの独自プラットフォームであるBadaを取り込み、実質的にSamsungが主軸となって開発が進められているTizen OSに対し、MeeGoから派生したSailfishは、MeeGo以前のIntel主導のMoblinやNokia主導のMaemoプロジェクト時代に比べてもOSSコミュニティの支援を受けつつ独自の進化を遂げつつある。
SailfishはMeeGoのフォークとして活動を再開したMerのオープンソース環境をOSコアに、Myriad GroupのAlien Dalvik JVMを使ってAndroidアプリの動作も可能にするなど、他プラットフォームとの互換性路線が垣間見える。MeeGo時代からのネイティブアプリのほか、QtやSymbian等のリソースを組み合わせられ、Firefox OSのようにHTML5アプリの動作も推奨するなど、カバーする範囲が広い。このほか、OSの動作ハードウェアに関して、既存のAndroidデバイスドライバを取り込むことで実質的にAndroidスマートフォンでのSailfish動作を可能にし、独自にハードウェアサポートを行わずともプラットフォームが拡大可能な仕組みを採用している。相乗りという形ではあるものの、OSSを最大限に活用したプラットフォームだといえるだろう。
そして今回発売されたのが、このSailfish OSを標準搭載したJolla初のスマートフォンとなる。提供自体はハードウェア仕様とともに今年5月20日に発表が行われており、2013年末までの提供を目処にプリオーダー形式での注文を受け、その最初のロットが公式イベントで配布されたわけだ。Bloombergによれば、数万単位でのバックオーダーを抱えた状態とのこと。価格は399ユーロ、338英ポンド、513米ドルとなっている。AndroidとiOSに続く、第3軸のモバイルOS情勢は混沌としているが、Jollaエンジニアらが元々属していたNokiaはMicrosoftのWindows Phoneに走り、もともとのプロジェクトはTizenとなり、その他オープンソース勢はそれぞれに独自の指向性を持ってプロジェクトを走らせている。ビジネス的な成功は未知数だが、2014年も引き続きこれら勢力の動向で楽しませてくれそうだ。