多機能化が進むスマートフォン。本来の機能である通信/通話に加えて、メディアプレイヤーとして活用している人も多いのではないだろうか。音楽の記録メディアがレコードからCDやMD、そしてMP3やAACファイルとなった今日、メディアプレイヤーはスマートフォンの重要な機能のひとつだ。
スマートフォンで音楽を聴く人も”音質”は気になるところだろう。アップルのiPod、ソニーのWalkmanなど、自社ブランドのポータブルオーディオ機器を持つメーカーは、同社商品で培った技術をスマートフォン端末にも惜しみなく投入し、付加価値として展開している。これらのメーカーの音質への注力はよく知られているが、オーディオ関連とは程遠いイメージのHTCが自社端末にオーディオブランドの技術を組み込んでいることはあまり知られていないだろう。
HTCが同社端末に取り込んだもの。それは「Beats Audio」だ。Beats Audioは、ミュージシャンでもあるDr.Dre(ドクター・ドレー)がプロデュースするオーディオブランドだ。北米のクラブやストリートシーンから火がつき、特徴的な赤いコードと「b」のマークのヘッドフォンが若者の間でファッションアイテムとしても人気となっている。HTCは2011年、同社商品の新たな展開を求めて、Beats Audioを傘下に入れている(現在は再び分社している)。
この人気ブランドの特徴である優れた音質をスマートフォンで再現する事を目指し、チューニングしたもの。それがHTC端末のBeats Audioプロファイルなのだ。
HTCが日本向けに提供している「HTC J」や「HTC J Butterfly」「INFOBAR A02」でBeats Audioのサウンドを楽しむ方法は簡単だ。ヘッドフォンを端末に差し込むと画面左上に「b」のアイコンが表示され、Beats Audioプロファイルが自動的適応される。Beats Audioプロファイルが適用されれば、ヘッドフォンで聴こえる全てのサウンドを高音質で再生することができる。メディアプレイヤーでの音楽ファイルや動画ファイルの再生は勿論、ゲームやアプリなども高音質になる。
今回、同機能をHTC Jにも同封されていたBeats Audioのマイク付きインイヤーヘッドフォン「Beats by Dr.Dre urBeats」で試してみた。なお、日本国内で販売されたHTC端末でこのヘッドフォンが同梱されたのはHTC Jのみである。残念ながらHTC J ButterflyとINFOBAR A02は別売りオプション扱いとなっている。
さて、実際にBeats AudioプロファイルをOFFにした状態と聴き比べてみると、プロファイル起動時は明らかな低音域の違いを感じる事ができた。低音が強調され、さながら重低音のサウンドを聴いているようである。
特徴的な低音域に注目しがちだが、高音域の細部もしっかり捉えて再現している印象だ。Beats Audioプロファイルのエンジンはダンスサウンドやクラブサウンドに有効なチューニングではないだろうか。
ただ、気になる点もあった。音楽ファイルの圧縮比や録音方法の違いもあるのだろうが、曲によっては若干、ノイズが目立つことがあった。これもBeats Audioプロファイルによるエンジンの特性かもしれないが、それを差し引いても高音質化しメリットの方がユーザー体験としては大きいだろう。ただし、音質の評価は個人の好みにも左右される。すべての人がBeats Audioのチューニングを好評価できるという訳ではない。
HTCのスマートフォンがメディアプレイヤーとして活用できるもうひとつの理由に、独自UI「HTC Sense」での使い勝手が挙げられる。
HTC Senseでは、メディアプレイヤーをウィジェットとしてホームの一画面全体にジャケット表示付きの操作画面を配置できる。加えて、ジャケットをオンラインで自動更新することもできる。
ウィジェットとして配置することで、いちいち音楽プレーヤーを立ち上げる必要もなくホーム画面上で音楽を再生できる。使い勝手はさながらポータブルオーディオプレーヤーそのものと言って良いだろう。
この操作の手軽さにBeats Audioプロファイルを組み合わせることで、ユーザーが手軽に高音質の音楽を楽しむことができる。スマートフォンの音質にこだわっている人はもちろん、現在、スマートフォンとポータブルオーディオプレーヤーを別々に使っている人にも是非一度試して頂きたい。