家電量販店での実売データを集計した「BCNランキング」が発表したタブレット端末のメーカー別販売台数シェアでは、2013年2月第2週にAppleがASUSを抜いて1位となった。同ランキングでは2012年12月第2週より、ASUSが1位、Appleが2位で、しばらくその状態が続いていたが、ここへ来てAppleが一気に盛り返した格好だ。
メーカー別販売台数シェアというと少しわかりづらいが、Appleのタブレットといえば「iPad mini」「iPad Retinaディスプレイ」などのiPadシリーズであり、ASUSのタブレットといえば「Nexus 7」だ。つまり、この販売台数シェアは、実質的にiPadとNexus 7のシェア争いと言っていいだろう。本稿では、AppleのiPadの人気が盛り返した理由について考察していきたい。
2013年2月第2週における、BCNランキングのタブレット端末のメーカー別販売台数シェアでは、Appleが42.7%、ASUSが38.1%となって、Appleが首位に返り咲いた。このAppleの返り咲きを牽引したのがiPad miniのWi-Fiモデルだ。2月第2週の販売台数は前週比213.3%となっていて、前の週の2倍以上が売れたことになる。発売から4カ月近く経っている製品がこのような売れ方をするのは非常に珍しいが、BCNランキングにもとづくiPad miniとiPad Retinaディスプレイの販売台数指数の推移を示したグラフを見ると、何となく理由が浮き彫りになってくる。
発売直後は、iPad Retinaディスプレイを大幅に引き離して売れていたiPad miniだが、その後急速に販売台数が落ち込み、12月半ば以降はiPad Retinaディスプレイの販売台数を下回っている。小型で持ち運びやすいiPad mini、大画面で高精細なiPad Retinaディスプレイと、それぞれ特徴が異なるタブレットだが、消費者の嗜好が一気に変わるとも思えない。すなわち、iPad miniがかなりの品薄となり、供給が需要に追いつかない状態だったと見るべきだろう。そのiPad miniの品薄が解消されたことが、Appleのシェア返り咲きの一番の要因だと考えられる。
また、今回のiPadの優勢に一役買ったと思われるのが、ソフトバンクモバイルが実施しているキャンペーンの「スマホタダ割」だ。他社からのMNPにより、iPhone 5をはじめとするソフトバンクモバイルのスマートフォンを契約した人を対象にしたキャンペーンで、同時に「iPad mini」「iPad Retina」いずれかのWi-Fiモデルを購入すると、スマートフォンの利用料金から毎月1,200円(最大24回)割り引かれる。例えば、iPad mini Wi-Fiモデルの16GBの場合、実質負担0円で入手できるという お得なキャンペーンとなっている。
同キャンペーンは、大きく注目されているという。BCNの発表では、ソフトバンクモバイルの広報の所感として、「反響は大きく、手応えを感じている」と紹介。「ソフトバン クショップや量販店でも、Wi-Fiモデルの在庫が薄い状況が続いていたが、2月半ばから、スマートフォンと一緒に当日持ち帰ることができる店舗が多くなっている」としている。品薄解消に加え、このスマホタダ割が「Appleタブレットの返り咲き」の大きな要因となっていると言ってよいだろう。iPhoneとiPadを同時に手に入れたいと考えている人は、スマホタダ割をぜひチェックしておきたい。詳細はソフトバンクのWebサイトで確認可能だ。
iPadシリーズの販売台数指数の推移のグラフを見ると、タブレット需要は下降傾向にあるようにも見えるが、テザリング機能を搭載したスマートフォンの普及により、今後はスマートフォンとWi-Fiモデルのタブレットの2台持ちというスタイルが浸透していくことが考えられる。また、ノートPCの代わりにタブレットを持ち歩くユーザも一般化しており、マイナビをはじめとしてタブレットを企業で導入する事例も増加している。タブレットの需要は確実に高い状況にあると言え、そこでの選択肢として、常に筆頭に挙がるiPadシリーズが今後のタブレット市場を牽引していくことだろう。