ソフトバンクモバイルは2月21日、お台場地区(江東区)にて「LTE-Advanced」の主要技術のひとつ「複数基地局間協調伝送技術」に関するメディア説明会を行った。会場では室内実験デモおよびフィールド実験を通じて、通信品質が向上する様子を確認できた。
現行のLTE技術では、基地局と基地局の境界ではLTEの受信レベルが低下し、また隣接セル間の干渉が増大するために、スループット(通信能力)が大幅に落ち込んでしまう。この現象を回避するための技術が、複数基地局間協調伝送技術となる。ソフトバンクモバイルではすでに「基地局間インターフェース(X2インターフェース)」を利用した「ECO-LTE」「CoMP」の2つの方式で、実証実験を実施済みとのこと。どちらもセル境界での通信品質を向上できるという。
「複数基地局間協調送信制御技術(ECO-LTE)」は、隣接する基地局が協調制御して片方の基地局からの信号を停止することにより、電波干渉を受けやすいセル境界でのパフォーマンスを改善する技術。ECO-LTEではセル境界での下り伝送速度を約2倍以上に向上できることが確認されている。なお、ECO-LTEはLTE基地局装置に制御ソフトウェアを追加するだけで現行のLTEシステムに対応できるため、いま使っているLTE端末でも利用可能とのことだ。
「複数基地局間協調送信技術(CoMP)」は、隣接する基地局が協調し、両方の基地局から同時に信号を送信する技術。LTE-Advancedでの利用を想定している。CoMPでは、セル境界での下り伝送速度を約2~3倍以上に向上できることが確認されたという。ECO-LTEとともに、汎用的な方式として商用サービスに利用できるものと期待されている。
そのほか「垂直面内アンテナ指向性制御技術」により、周辺セルへの干渉を低減させるなどの方法も組み合わせて利用し、スループットの改善を図っていく。
実験の様子
室内実験デモには、通常LTE、ECO-LTE、CoMPの環境を再現した装置が用意された。数Mbpsのストリーミング映像を再生させているUE(携帯端末)が2つの基地局間を移動する際に、映像の乱れ具合をリアルタイムで比較する、というのが実験の趣旨。実際、通常LTEの環境ではハンドオーバする際にスループットが落ち込み映像が乱れ、数秒にわたって視聴不可となったが、ECO-LTE、CoMPの環境では通信速度が落ち込むと基地局間協調によりパフォーマンスが大幅に改善され、映像の乱れは最小限に抑えられていた。
フィールド実験は、テレコムセンター周辺を走る移動局と電話で中継しながら行われた。まず、通常LTE利用時のダウンリンクスループットが計測された。測定車(移動局)は青海実験局の圏内を発進。順調だったスループットは、台場実験局とのセル境界で大きく落ち込んだ。
次に、ECO-LTEにおける計測が行われた。青海実験局の近くでは同じ経緯をたどったが、セル境界の近くで干渉によりパフォーマンスが低下すると、突然スループットが20Mbps前後にまで跳ね上がった。これは台場実験局からの信号送信が停止されたため、干渉が解消されたことによるものだ。その後、台場実験局の圏内に入りハンドオーバした。
同様にして、CoMP利用時の計測が行われた。青海実験局と台場実験局のセル境界にさしかかったところで双方の基地局から同一信号が送信され、スループットが20Mbps前後まで回復した。その後、台場実験局の圏内に入りハンドオーバした。
このあと、垂直面内アンテナ指向性制御により有明実験局からの電波を抑え、青海実験局と台場実験局のセル境界における干渉を最小化する実験も行われた。ソフトバンクでは、将来的にはECO-LTE、CoMP、垂直面内アンテナ指向性制御などの技術を組み合わせることで、効率の良い形で運用していく考えだという。
(記事提供: AndroWire編集部)