――ちなみに平野さんがラム以外で気になるキャラクターはいますか?
平野「やっぱりダーリン(あたる)ですよね。あそこまで遊んでいても決して憎めない優しさがある。だから『ときめきの聖夜』のようなお話に人気があるんじゃないかなって思います」
――古川さんの好きなキャラクターは?
古川「どのキャラも全部好きですね。みんな魅力的だと思います。このキャラがダメっていうことがないんですよ」
平野「ゲストキャラでもすごい声優の方がいらっしゃって、古谷徹さんや鈴置洋孝さんもいらっしゃったんですけど、後からお話を聞くと、ゲストの方々も『(収録の)前の日は眠れなかった』とかおっしゃるんですよ。それを考えると、本当にすごい現場だったんだなってあらためて思います」
古川「楽しかったし、それと同時に、競争意識、ライバル意識もすごくて、声優同士でも鬼気迫るものがありました。たとえば、千葉さんなんかは、みんなが昼飯に行くときでも一人でスタジオに残って、ひとつのセリフを何度も何度も練習している。昼飯から帰ってきてもまだやってる。そして、リハのときにみんなを笑わせるんだけど、本番になったらまた違うことを言って笑わせる。笑わされないように気をつけていても、全然違うことを言って笑わされるんですよ。もう、それだけに命を懸けていると言ってもいいぐらい(笑)。それで大体ターゲットは文さん。千葉繁は平野文を笑わせれば勝ちみたいな」
――そこに真剣なんですね
古川「あるとき、収録中に文さんがすっと前のほうに出て行っちゃう」
平野「マイクの前で笑っちゃうと音が入っちゃうから、マイクから外れて笑っていたんですよ(笑)」
古川「それを見てしまうと、みんなもつられて笑ってしまう。本当に面白い収録でした」
平野「緊張感もありつつの楽しい現場で、本当に仕事に集中できる作品だったと思います。昔は今みたいにDVDもなかったので、事前に練習ができず、当日台本を見て、それで本番だったんですよ」
古川「アニメは、絵を見ながら、台本の文字も追わなければいけないので、非常に難しいんですよ。外画の場合は、極端な話、原音さえ聞いていれば、男女2人くらいの対話なら絵を見なくてもできる。声が聞こえてきたら喋ればいいわけですから。だけどアニメはそうはいかない。それに加えて、この作品は音がかぶっているし、速い。表情も途中でコロコロ変わるので、ちゃんと絵を見ていないといけないわけですが、絵に集中しすぎるとセリフが出てこない」
平野「収録当日に台本を見て、それからテストをして、すぐ本番だったので、技術がないとついていけないんですよ」
古川「それを考えると、今はいい時代になりました。事前に映像も台本ももらえて、何度でも練習が出来る」
平野「しかも秒数まで表示されるからきっかけとかもすごくわかりやすい。今考えても、『うる星やつら』は本当にレベルの高い現場だったと思います」
――そういった現場がおよそ4年半続いたわけですね
平野「だから、『うる星やつら』に関しては、今回のようなデジタルリマスターHD版になろうと、再放送されようと、再々放送されようと、『嫌だ』とか『恥ずかしい』って思いがないんですよ。当時持っていた10の力を全部出して、さらに周りから引き出された力もあわさって、毎回本当に楽しく演じることができていたので、また放送されるよって言われたら、『ええーっ、嫌だ』じゃなくて、素直に『うれしい!』って皆さんおっしゃると思います」
――それでは最後に放送を楽しみにしているファンの方へのメッセージをお願いします
古川「アニメ史に残る金字塔的な作品の一つであり、いつまでも古くならない作品だと思います。今の若い方がご覧になってもすごく新鮮だと思うし、楽しんでいただけると思います。だから世代を超えて、親子二代とか、家族で一緒になって楽しんでいただけたらうれしいです」
平野「基本はギャグなのですが、ほろっとさせられるところや、考えさせられるところが、毎回エッセンスとして入っていますので、そういうところもしっかり観ていただきたいですね。あと、やっぱりラムちゃんは女の子の理想型だと思うんですよ。本当に可愛いんだけど、自分が可愛いと意識していない……そんなラムちゃんの"無意識の美意識"のようなものが私は本当に好きだったので、今回初めてご覧になる方は、女の子のあるべき理想のようなものをラムちゃんの中に見出していただけたらうれしいなって思います。よろしくお願いします!」
――ありがとうございました
『うる星やつら』のデジタルリマスターHD版は、2月4日(月)よりキッズステーションにて放送開始。キッズステーションの特設サイトでは現在、番組宣伝部長の重盛さと美による動画コメントが掲載されているほか、2月12日(火)からはプレゼントキャンペーンもスタート予定となっているので、こちらもチェックしておきたい。