シニア層のスマートフォンへの関心が高まっている。矢野経済研究所が発表したアンケートの調査結果によると、全国の60代男女の一定数が「来年チャレンジしたいこと」として「スマートフォン・タブレット端末などの最新ITツール」を挙げているという。また、MMD総研が発表した調査結果によると、シニアのスマートフォン所有者の34.2%が直近5カ月以内に新端末を購入しており、購入者の6割強が「総合的に満足」と回答しているとのことだ。シニア層に支持されるスマートフォンとはどんな機種なのだろうか? この2つの調査結果をもとに考えていきたい。

「来年はスマートフォンに挑戦したい」

矢野経済研究所では2012年12月、60代を中心としたシニア層(男性500名、女性500名)に対してアンケート調査を実施。同調査によると「来年チャレンジしたいこと」(複数回答)において、「ある」と回答したシニア層では「旅行」(43.6%)が最も高く、次いで「運動・スポーツ」(29.4%)、「スマートフォン、タブレット端末などの最新ITツール」(26.8%)、そして「園芸・庭いじり・ガーデ二ング」(22.8%)と続いた。

「今後、欲しいと思っている最新ITツール」(複数回答)については、「スマートフォン」(41.0%)、「タブレット端末」(30.2%)、「スマートテレビ」(17.0%)、「電子書籍端末」(13.9%)という結果となっている。

今後、欲しいと思っている最新ITツール。スマートフォン(41.0%)、タブレット端末(30.2%)、スマートテレビ(17.0%)、電子書籍端末(13.9%)と続いている (調査:矢野経済研究所)

シニアのスマートフォン所有率が上昇

続いてMMD研究所の調査結果ついて考えたい。同調査は、携帯端末を所持しているシニア層(60歳~64歳:543名、65歳~69歳:241名、70歳以上:155名)939名を対象に、「シニア層のスマートフォンの利用及び、購入意向に関する意識調査」を実施。第1回の調査を8月末に実施しており、今回が2回目の調査となる。

2回目の調査では、シニア層のスマートフォン所有率は第1回の調査から5.7ポイント増の16.8%となったことが明らかになった。購入時期に関しては、7月~11月(直近5カ月)が34.2%と最多。また、スマートフォン所有者の約6割が2012年に購入していることが分かった。

シニア層が所有している携帯電話端末(写真左)と、スマートフォンの購入時期(写真右)(調査:MMD研究所)

iPhone、らくらくスマートフォン、GALAXYが人気

購入意向者へ、気になるブランドを聞いたところ上位3機種は「iPhone」(45.0%)、「らくらくスマートフォン」(27.7%)、「GALAXY」(16.6%)だった。なかでも、らくらくスマートフォンの認知度に関しては、前回の55.7%から20ポイントアップとなる75.7%へ上昇。8月の発売以降、シニア層のなかで「らくらくスマートフォン」の認知が広がっていることがうかがえる。

シニア層が気になっているスマートフォン端末ランキング。iPhone、らくらくスマートフォン、GALAXY、Xperia、AQUOS PHONEと続いている(調査:MMD研究所)

らくらくスマートフォンの認知度。前回の調査より20ポイント上昇していることが分かった(調査:MMD研究所)

MMD研究所の調査で、「らくらくスマートフォン」がシニア層の認知度が高いことがわかった。同端末のどこがシニア層に評価されているのだろうか? 搭載機能などをおさらいしながら考えていきたい。

らくらくスマートフォンはNTTドコモが8月に投入したAndroid 4.0搭載スマートフォン。データ通信が2,980円で利用できるフラット型FOMAパケット定額サービス「らくらくパケ・ホーダイ」が利用できる。

らくらくスマートフォン F-12D

ディスプレイサイズは約4.0インチ(480×800ドット)で、端末を製造した富士通の「らくらくホン」シリーズの「見やすさ」「聞きやすさ」「使いやすさ」というコンセプトを踏襲し、スマートフォン初心者でも扱いやすいモデルに仕上げている。

丸みを帯びたボディで、シニアの人でも持ちやすい。搭載されるハードボタンはひとつだけなので、迷うこともない

具体的には、タッチ操作に不慣れなユーザーに配慮し、誤操作を防止・補正する技術を搭載。加えて、従来型の携帯電話から違和感なく移行できる「凹凸のあるボタンを押し下げたときのような感触が得られるタッチパネル」を採用した。

またらくらくスマートフォンは、独自のSNS(social networking service)「らくらくコミュニティ」(URL:http://rkxrk.jp/pc/index.jsp)が利用できる。同サービスは、旅・食・健康などをテーマとしたシニア層向けのSNSで、現在2万人以上のユーザーが会員登録している。スマートフォンの普及とともに、若者だけでなくシニア層にもSNSがひろがりそうだ。

このほか、らくらくスマートフォンを提供するNTTドコモではスマートフォン、タブレット端末などに関する「使い方教室」を全国のドコモショップで開催している。こちらはスマートフォンの操作方法を文字通り"手取り足取り"教えてくれる無料の講座だ。マイナビニュースの別項で筆者が「らくらくスマートフォン電話教室」に飛び入り参加してきた模様をお伝えしている。こちらも合わせて購読いただければ幸いだ。

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お伝えしてきた通り、らくらくスマートフォンの認知度はこの3カ月間で急上昇している。シニア層にヒットしている要因は、どこにあるのだろうか。筆者の推測では、4つの理由が挙げられると思う。ひとつめは、シニア層のスマートフォンへの関心が高まりつつあった時期に、ベストなタイミングで市場に投入できたこと。ふたつめは、これまで富士通が「らくらくホン」シリーズで培ってきたノウハウを、本端末にも活かすことができたこと。3つめは、NTTドコモの「スマートフォンをユーザーに分かりやすく紹介していく」努力が実を結んだこと。4つめは、類似のライバル商品がないことだ。発売から4カ月以上が経った現在でも、らくらくスマートフォンと言えば「初心者でも扱いやすいスマートフォン」とすぐに連想することができる。シニア層へのヒットはこの先も当分の間、続くのではないだろうか。