ウルトラ3つの"K"

――先日のウルトラマンフェスティバルでサイン会をなさったとき、満場の子どもたちに向かって、いじめをしないように、その親御さんたちに、子どもにいじめをさせないように、と訴えていらしたのが印象的だったんですが、正義を守るヒーローを演じられたお立場から、それについて伺えますか?

古谷「いじめはね、いじめられた方も悪いんだっていう風潮があるんですよ。決してそうじゃない。いじめた方が悪いんですよ。それをきちんとしなきゃいけない。なぜ、いじめるのか。それは、親が悪いから。僕は、そう思ってる。親が子どもをちゃんと育てれば、小さいときにね。命は大事なんだよ、ということを教えなくちゃいけない。人間が作りだせない命は大事にしなさいよ、って。死んだら、リセットして戻らないんだから。3歳、4歳までが、子どもが親の言ったことに反応するんですって、純粋に。それ以上になると、反抗期になるんで。それまでに、しつけをきちんとする」

――なるほど。ところで、先日、宝田明さんとアメリカのシカゴに行かれたそうですね

古谷「アメリカ全土にGファン、つまりゴジラファンというのが何万人もいるんですよ。その方たちが一堂に集まるGフェスタというお祭りが毎年開かれていて、全米から何日もかけて飛行機や車でやって来るんですね。今年は3日間、宝田さんと僕がゲストで招かれて。トークショー、サイン会、撮影会とか、ホテルを借り切ってやったんです。とにかくみんな陽気で、家族ぐるみでファンなんですよ。スペシウム光線をみんな知ってて、向うでは"シュワッチ"って言うんですよ。"シュワッチ"って言うと、みんな(スペシウム光線のポーズをして)こうやるわけ(笑)。宝田さんもびっくりして『ウルトラマンって、こんなにすごい人気あるんだ』って。やっぱり、円谷英二さんて、すごいんだなと思って」

――そのお話も含めて、夢について伺えますか?

古谷「東宝の俳優時代、僕は宝田さんと共演したくてしょうがない。でも、宝田さんの隣りに行くと助監督が『ダメだよ、一緒に映っちゃ』って。僕の方が背が高いから」

――要するに、スターをかっこよく撮るために……

古谷「そう。そういうみじめなこともあったんですけど、今回、シカゴで宝田さんと共演できたんですよ」

――それは、どういう作品なんですか?

古谷「ファンの方が映画を作るんです。それで、一つ夢が叶った。しかもそれだけじゃなくて、宝田さんとシカゴに行けるなんて思ってもいなかった。夢にも思ってなかったことが、現実になった。それが、すごいなと思って」

――「ウルトラの夢。アマギ。」というタイトルでブログもおやりになってらっしゃいますね

古谷「人間ってのは、なんか夢をもってると、その夢にプラス、夢にみていないものも叶うんだ、って。僕はサインするとき、いつも"夢"って書くんですけどね」

――"夢"ってステキな言葉ですよね

古谷「夢が現実になったときは、すごい感動っていうか、感激っていうか。僕は、"感謝"と"感動"と"感激"っていう、この"3K"が大好きなんですよ。毎日、どれか一つでも味わうと感性が豊かになるよって、ファンの方には言ってるんですよ(笑)」

――今日は、大変すばらしいお話しを本当にどうもありがとうございました

古谷敏の著書「ウルトラマンになった男」。小学館より発売中