少しずつではあるが、AppleがiPhone 5で採用した「A6」プロセッサの概要がわかりつつある。Apple InsiderがUBM TechInsightsのレポートを引用した形で紹介したA6のダイ写真によれば、CPUコアが2つ、GPUコアが3つ確認できるという。少なくとも、GPUパフォーマンスの増加はコア数増加が寄与したものである可能性が高いようだ。

同件はApple Insiderの「First look inside Apple's new iPhone 5 A6 chip appears to show 3 GPUs, 2 CPUs」という記事で確認できる。同誌がTechInsightsの分析を紹介したところによれば、CPUコアが2つ、GPUコアが少なくとも3つ確認できるという。またGPUコアについて、ARMがCortex-A15/A7で実現しようとしている「big.LITTLE」のアプローチに近いものを採用している可能性があり、アイドル時や通常動作時には低消費電力で小型のGPUコアを、ゲーム等の高パフォーマンスを要求されるケースではすべてのフルサイズGPUコアを活用する形で動作するような形態であることを示唆している。GPUパフォーマンスをA5の倍に増強したといわれるA5Xのダイ写真におけるCPU/GPUコアのサイズ比と、A6における同サイズ比を比較してみると、A6のGPU占有面積から、A5Xほどではないものの、それに近いパフォーマンスを持っていることが想像できる(A5XとA6ではCPUコアの種類が異なるため、一概には比較できないが)。

また以前のAnandTechのレポートにあるように、TechInsightsでもA6のCPUコアについて「Appleが開発したカスタムコア」説をプッシュしている。AnandTechでは命令セットの関係からCortex-A15以上のグレードのプロセッサ以外はありえないと推測しており、Appleはあえて同コア互換のカスタムプロセッサを開発したとしていた。今後さらなる分析が必要だが、TechInsightsもダイ写真等の判断からAppleのカスタムコア説を支持しているようだ。だが、現時点ではGPUパフォーマンス増加の説明はついても、Appleが示す「CPU速度2倍」の根拠が不明だ。海上忍氏のベンチ測定によれば、まずA6ではプロセッサコアの動作周波数が2割ほど向上していること(プロセスルールの微細化で省電力性が向上して高クロック化が可能になったとみられる)、キャッシュ性能とメモリ帯域が向上していることなどで、ある程度改善しているようだ。ただ、明らかにこれら性能改善以上にパフォーマンス増強がみられるため、Cortex-A9時代と比べてパイプライン部分に何らかの手を加えている可能性がある。

このほかTechInsightsの分析で気になるポイントとして、A6にダイ・スタッキングの形で封入されているDRAMチップが、Samsung製ではなくエルピーダ製である可能性を示唆している。またNANDフラッシュもHynixではなくSanDiskの名前を挙げており、以前のiFixitの分解レポートとは内容が異なっている可能性がある。このあたりの差異はAppleが部品調達でマルチソースを行った成果の1つとみられる。