既報の通りグーグルは9月11日、iPhone/iPod touch向けの「YouTube」公式アプリの提供を開始した。これにあわせて同社は、都内でYouTubeのモバイル利用の動向について、記者説明会を開催した。同説明会ではYouTubeの利用動向や今回提供を開始したYouTube公式アプリについて解説した。
説明会にはYouTube プロダクトアジア太平洋統括本部長のアダム・スミス氏が登壇。同氏は冒頭、同サービスにおいて、ユーザーが数限られたチャンネルでしか映像を楽しむことができなかった時代を振り返った。そしてYouTubeがあらゆるメディアのプラットフォームとなることで一般のユーザーからブランド、メディア主、著名人に至るまで多くの人たちが気軽に映像を活用できるようになった現在と対比し、YouTubeが現代社会に及ぼした影響の大きさを強調した。
YouTubeには、毎月8億人のユーザーが存在しているという。ロイヤルウェディングのストリーミング動画は7,200万コンテンツを数え、188カ国で視聴された。また、日本のアーティスト「きゃりーぱみゅぱみゅ」のビデオは3,300万回の視聴があり、日本国外からも、多くアクセスがあったという。
「現在、コンシューマーは映像コンテンツをデバイスによる制限なく楽しめるようになりました。これはデスクトップPC、ノートPC、リビングのテレビ、モバイル端末、タブレット端末などデバイスがかわっても、一貫した動画体験ができるようになったということを意味しています」とスミス氏。今後は、家にいても車に乗っていても、何処にいても同じ動画体験ができるようなサービスを提供していきたいとのこと。
同社の見積もりによると現在、YouTubeに対応するデバイスはグローバルでは7億を越えるという。日本市場においても「スマートフォンの普及により動画視聴に関する環境が日増しに整ってきている」とのこと。実際、日本人ユーザーの約50%がYouTube動画をモバイル環境で視聴しているという。ちなみにこの割合、他国では平均で25%とのことで、世界的に見ても珍しいとのことだった。
同日、iOS端末に対応するYouTubeの公式アプリがリリースされた。これはYouTubeのエンジニアが開発に深く携わったもの。チャンネルガイドなどの便利機能が付加され、音声検索対応など検索ツールの強化もはかられている。また本リリースにあわせ、数万単位の新しい動画コンテンツも追加された。VEVOやSony Music Japanからは公式ミュージックビデオが、Google PlayからはTVショーなどが提供されたという。そのほかFacebook、Twitter、Google+との連携にも対応する。ダウンロードはiTunesのApp Storeから。価格は無料に設定されている。
スミス氏は「モバイル機器でのYouTube視聴が今後のトレンドになっていくでしょう。iOS端末向けの新アプリが、このトレンドに拍車をかけることと思います」と語り、説明をしめくくった。
最後に質疑応答の時間がもうけられ、アダム・スミス氏が記者団の質問に答えた。iOS端末向けに提供されていた従来アプリはどうなるのか、とのとの質問には「併用可能」との回答。今回提供されるアプリをインストールしても既存のアプリが差し替えられるようなことはなく、例えばブラウザでYouTubeの動画リンクをタップしたような場合は、どちらのアプリで視聴するか選択できるようになるという。
日本のユーザーの50%がYouTubeをモバイルから利用している理由についてどう分析しているか、との質問には「日本のユーザーは新しい技術やサービスなどに敏感に反応し、早い段階から自身のライフスタイルに積極的に取り込むことができる」と指摘。そして日本人は家で過ごす時間が長く、好きなスタイルで読書や音楽、動画を楽しむ傾向にある。そうした背景が影響しているのではないか、と結論付けた。
なぜ今このタイミングでiOS端末向けアプリが提供されたのか、については、2007年に開発を始めたYouTubeアプリはアップルと5年間のライセンス契約を結んでいたが、その契約期間が終了したためと説明した。