――しかし、1970年代の歌というと、今では基本的に懐メロ扱いになりますが、『マジンガーZ』は決して懐メロじゃないんですよね
水木「そう、懐メロじゃない。そうなんですよ。40年経っても古くなっていない。40年前にあのアレンジで、あの曲ってなかなかないですよ。別にほかのジャンルを貶すつもりはありませんが、流行り歌の場合は、その時代の匂いがして、後から聴くとアレンジも古いイメージを受けたりすることがありますが、アニソンに関してはそれがない。不思議なんですけど、だからこそ今の子どもたちにもうけるし、僕が『ゼーット!』ってやっても、古いとか懐かしいとか言われることもない。それこそ一番エネルギーを持っている子どもたちが、今も40年前の子どもたちと同じように『マジンガーZ』の歌を歌っている。それは親御さんが教えたのか、ビデオで一緒に観たのかわかりませんが、今の子どもたちが、昔ではなく今の作品という感覚で接してくれているからこそだと思うんですよ。それはやはりすごいことだと思いますね」
――まさに時代を超える作品になっています
水木「その当時の作り手たちが、懇切丁寧に子どもたちのことを思って作った作品だし、僕自身もレコーディングのとき、テレビの前に座っている子どもたちに向かって歌った。それがちゃんと、子どもたちの心に届き、浸透していたというのはやはりすごいことだと思います。当時5歳の子どもでも今では45歳ですよ。立派なお父さん、お母さんになっている世代が、その当時の気持ちのままに子どもたちと一緒になって楽しんでいる。僕なんかが小さい頃は、大人と子どもとでは観るテレビも違えば、聴く歌も違っていた。でも今は、親子が一緒になって楽しんでいる。そういう意味ではすごく良い時代だと思います。自分の親父がそうだったら尊敬しますよ (笑)」
――そんな『マジンガーZ』のヒットを受けての『グレートマジンガー』ですが
水木「歌い手さんはかえられちゃうことも多いんだけど(笑)。よく第2弾もそのまま水木一郎に歌わせてくれたなと感謝しています」
――『グレートマジンガー』の歌を聴いたときの感想はいかがでしたか?
水木「同じ宙明さんの楽曲なんだけど、また違った感じのロックで、ブルース進行みたいな感じの曲を作ってくれたので、自分としてもすごくハマりました。アニメのストーリーも、マジンガーZがボロボロにやられて、子どもたちがテレビの前で泣きながら応援しているところに颯爽と登場するグレートマジンガー……。そういった子ども心をつかむ演出もすばらしいなと思いました。それを観た子どもたちが大人になっても覚えているわけだからすごいことですよね。『マジンガーZ』、『グレートマジンガー』と続いて……さすがにそのあとの『グレンダイザー』までは歌わせてもらえなかったけど(笑)」
――実際に歌ってみていかがでしたか?
水木「昔とった杵柄ではないですが、16歳からライブハウスでロックとかアメリカンポップスを歌っていましたから、本当にやっと来た! という感じのブルース進行で、ロックのリズムに乗りながら楽しく歌わせていただきました」
――かなり水木さん好みの楽曲だったわけですね
水木「『グレートマジンガー』に限ってというわけでなく、やはり宙明サウンドが好きなんですよ。もちろん『マジンガーZ』の旋律も大好きですけど。ただ、『グレートマジンガー』の場合は、子どもたちが一緒になって歌ってくれるかなっていう心配が少しだけありました」
――楽曲的に少し難しいですよね
水木「『マジンガーZ』ではあまり使っていないんですけど、『グレートマジンガー』ぐらいから、渡辺宙明さんは詞にない部分、スキャットなども全部自分で書かれるんですよ。オープニングの『ダッシュ ダッシュ』の後の『ダンダンダダン』もそうですし、エンディングの『シュシュッシュー バンババン』といったところも、全部宙明さんが考えて、自分で書かれているんです。『鋼鉄ジーグ』なんかもそうですね」
――特徴的な擬音は宙明さんがつけているんですね
水木「宙明さんの曲なら必ず擬音が入ってくるって感じでしたね。いまだにそういったスキャットのセンスは宙明先生がピカイチでしょう」