忌野清志郎のあらゆるユーモアが好き

中学校のときに、名曲『トランジスタ・ラジオ』などを通じて初めて忌野清志郎の存在を知った。清志郎から数々の影響を受けたと話す。

「ここのところ、それについてずっと考えていたんですけど、やっぱりユーモアのセンスが1番好きなんだなぁと思いますね。文章にしても、舞台メイクにしても、衣装にしても、もちろん曲とか、歌詞にしても、必ず笑える要素があるんですね。メッセージがあっても単にこぶしを挙げるんじゃなくて、ユーモアに包んで出すようなところ。そういうところは1番影響を受けてると思うし好きですね」

最初に清志郎に会った時、斉藤は緊張してほとんど話すことができなかったという。緊張しつつも、付き合い、話をしていくなかで印象に残っているシーンとは。

「こっちが緊張しちゃって、そんなに仲良く喋ったってわけでもないんですけど、ライブイベントの打ち上げでご一緒させてもらったときに、ここには書けないようなブラックジョークをとても言う人で。それがすごい笑えちゃうんです。発売禁止になったCDについて聞いたときは『ああいうのを10年に1回くらいやっといた方が、そのあと人気が続くからいいんだ』とか(笑)。まあ、それも照れ隠しなんでしょうけど。本人が本気でやっていることだったりしても、そういうふうにうまく茶化して話題にしちゃう凄さ。ソウルフルというか、根っからのミュージシャンって感じがしますね。清志郎さんがTVブロスで連載していた『ロックの双六問屋』というコラムが、すごく好きだったんですけど、その双六問屋の中で、僕の似顔絵を清志郎さんが書いてくれて。ちゃんと吹き出しもついていて。それは嬉しい思い出のひとつです」

劇中では歌う忌野清志郎の映像がたっぷり見られる

今清志郎に会えるなら楽器をいじりながら遊びたい

結果的に2006年のライブが清志郎との最後の共演になってしまった。今、共演できるならどんな曲がやりたいか?という問いかけに対して、こんな答えが返ってきた。

「じつは清志郎さんと何度かお話させていただいたときに『今度、ぜひ一緒に曲作りたいですね』って話をしたりしてたんです。清志郎さんも『おう、やろうよ』なんて言ってくれていて。まあ飲んだ席での話だから冗談半分っぽかったけど、一緒に共作して、それを演りたかったっていう気持ちはあります。一度、清志郎さんの『ロックンロール研究所』というスタジオに勇気を振り絞って電話をしたことがあって。『今度遊びに行かせてください!』とお願いすると『おう!いつでも遊びにきてくれたまえよ!』なんて言ってくれて。結局そのときは行けませんでしたが、そこでふたりでガチャガチャ楽器いじりながら遊びたかったですね」

現在『45 STONES』のライブツアーの真っ最中でもある斉藤和義。『45 STONES』は震災後のシリアスな状況を受けたアルバムになっているものの、ライブでは斉藤なりのユーモアでそれを表現しているという。ナイーブな状況や問題について、いつも独特なユーモアセンスでメッセージを発した忌野清志郎。そんな清志郎のスピリッツを受け継いだ斉藤和義だから、きっと最高のパフォーマンスを見せてくれるだろう。そのふたりの出会いの原点を確認する上でも、この映画は重要なものになるに違いない。

PROFILE

さいとう・かずよし

1966年栃木県生まれ。1993年8月25日にシングル『僕の見たビートルズはTVの中』でデビュー。翌年1994年にリリースされた『歩いて帰ろう』で一気に注目を集める。

代表曲である『歌うたいのバラッド』、『ウエディング・ソング』は、様々なアーティストやファンに愛される楽曲となっている。自身の音楽活動もそうだが、様々なアーティストへの楽曲提供、プロデュース等も積極的におこなう。

また、自他共に認めるライブアーティストでもあり、ライブハウスから武道館まで、弾き語りからバンドスタイルまで、様々な形でライブやイベントに参加してきた。 >2011年10月19日には15枚目のオリジナルアルバム『45 STONES』をリリース、また2011年10月12日から放映中の松嶋菜々子主演の日本テレビ系水曜ドラマ「家政婦のミタ」主題歌を書き下ろし、11月2日にシングル「やさしくなりたい」としてリリースした。

それらの作品を引っさげ、11月5日から埼玉を皮切りに全国42カ所のホールツアー『KAZUYOSHI SAITO LIVE TOUR 2011-2012 "45 STONES"』を開催中である。

『忌野清志郎 ナニワ・サリバン・ショー 感度サイコ―!!!』は11月26日より全国公開。24日には都内で大物ゲストも登壇する大江戸プレミアイベントが開催される。

(C)2011「忌野清志郎 ナニワ・サリバン・ショー ~感度サイコー!!!~」製作委員会

撮影:石井健