――さて、「Be Starters!」が発売される8月10日には、先ほども少し話が出ましたが、エンディングテーマ「君にご奉仕」も発売されます

喜多村「そうなんです。同発ですよ(笑)」

――EDはキャラクターでのクレジットですから、やはり奏として歌っているわけですよね

喜多村「ここまで奏を演じてきて思ったのですが、彼女の場合、押しの強さはあるものの、決してキツかったり、強かったりというわけではないんですよ。それはセリフ、ニュアンス、言い回し、発声などを含めての話なんですけど、ただ強く出せばいいキャラクターではない。引きながら誘っていく感じですね。押しながら誘うのって楽だと思うんですよ。出しちゃえばいいだけですから。でも引きながらというのはけっこう難しい。そういう意味ではすごくやりがいのある役なんですけど、そんな奏さんに曲を与えたら、はたしてどのように歌うのかって考えたとき、意外と感情を出さずに歌うんじゃないかなって思うんですよ」

――感情をあまり出さない?

喜多村「まったく出さないというわけではないのですが、物理的な音量とか強さみたいなものは出さないんじゃないかなって。そこが奏さんのアイデンティティであり、良いところであり、余裕のあるお嬢様なところなんですよ。そこでバンって強く出しちゃうと、一気に平民感が出てきて、奏さんの持っているステイタスを下げちゃうと思うんですよ。エンディングテーマを録ったときは、まだ実際に奏を演じる前だったので、漠然とした感覚で、前に前に出るのではなく、とにかく余裕をもって歌うということだけを考えていたのですが、今考えると、その感覚があっていたんだなって思います」

――最初の印象が正解だったというわけですね

喜多村「結果として、そういう風に歌っておいて良かったなって(笑)。あまり強く出してしまうと、奏さんじゃなくなって、『あれ? これは喜多村が前に演じた誰々じゃね?』みたいなことになってしまうと思うんですよ。歌を通して、どのように奏を表現していくか? これも奏を演じる役者としての責務だと思っています。もし今後、奏さんがソロで歌うことになったときも、メロディやオケにあわせて強く出すのではなく、あえて引きで歌ったほうがいいのかな、それが奏なのかなってふんわりと考えています」

――奏という役は歌に限らず、演じるうえでも難しい役どころではないでしょうか?

喜多村「そうなんですよ。ギャンギャン言うタイプではないし、何をするにしても常に余裕がないといけない。余裕があるというのは、強ければいいのではないって、演じていてすごく感じますね」

――とはいえ、穏やかにやってもダメですよね

喜多村「ダメですね。奏にはすごくいろいろな面があるのですが、それをトータルで見せなければならない。差し引きがすごく大変なキャラクターだと思うんですよ。でも、だからこそやりがいがありますし、オーディションで受かって良かったなって思いますし(笑)、それだけに、喜多村が奏を演じて良かったね、はまっているねって、みんなに言わせなければいけない。奏は、そんな風に役者に思わせるキャラクターだと思います」

――アーティストとしての活動をまさにスタートしようとしている喜多村さんですが、すでに『C3』のタイアップも決まっていますよね

喜多村「本当にありがたいことです」

――アーティストとして活動していくうえでの今後については何か考えていらっしゃいますか?

喜多村「目標は……目標を決めたくないのが目標ですね。カラーを決めて、そこだけを突き詰めていく作業はあまりやりたくない。これは私の傲慢なんですけど、せっかくユニット活動をしたり、キャラクターソングを歌わせていただけたりする環境があるので、ソロでは、そこではないところをやってみたいんですよ。だから、このジャンルだけを突き詰めて王者になりますというよりは、声優・喜多村英梨という素体があって、そこに来る環境、曲、テーマに、際限なく、どれにでもハマっていけるようにしたい。これは役者としてキャラクターを演じるのと同じことで、目標がないというのではなく、目標を固めないのが目標になります」

――来るものを拒まず、臨機応変に対応していくという感じでしょうか?

喜多村「そうですね。あと、『Be Starters!』と同じように、これからもみんなのテーマ曲になれるような曲を作っていきたいなと思っています。私が曲を作るわけではないので、これはチームの力でもあるのですが、まずはボーカルとして、喜多村英梨の曲だよねっていわれるのと同時に、毎回曲を出すたびに、『私の今月のテーマソングになりました』って言っていただけるようなアーティストになりたいです」

(次ページへ続く)