朝型のススメとフォトリーディング

――仕事の合間を縫って本を書くというのは相当大変なことではないかと思うのですが、執筆はいつ頃から?

久保田「年明けくらいから書き始めたのですが、もちろん本業の時間では書けないので、年末年始の休みとか土日とか、あとは平日の出勤前に書くことが多かったですね。夜はクリエイティブなことをする気になれないんですよね」

――頭を使う仕事は午前中にやる、というのは本書でも述べられていましたね

久保田「頭を使う仕事を午後に残してしまうと、憂鬱になってくるじゃないですか(笑)。だからなるべく午前中にしてしまいますね。そうすると一日が後の方になるほど気楽になっていきますし」

――なるほど。ところで年間200~300もの本を読まれるとのことですが、本書で触れられていた「フォトリーディング」について教えていただけますか

久保田「フォトリーディングというと、多くの方は『写真のように本を全部記憶する』ことだと思いがちなんですが、必ずしもそうではないんです。画像として脳にダウンロードはしますが、一言一句記憶に残るわけではありません。大事なのは後から検索して情報を取り出せるということです」

――ひたすら詰め込むというわけではないんですね

久保田「それに、本を読むのには目的がありますよね。それによって読むべき部分は違ってきます。普通に最初から最後まで本を読んでも、覚えていることって一部なんですよ。それなら最初からその特定の部分だけを集中的に読んで、効率よく吸収する。要するにつまみ食いですね」

――ちなみにどれくらい速くなるものなんでしょう

久保田「人によって上達の速度は違いますし、私もそこまでうまい方ではないんですが、だいたい2倍くらいは速くなっていると思います。でもそれで十分ですよね。今後何十年も使えるわけですから」

イギリスで出会ったプライベート優先のエリートたち

――たしかに。そのあたりは本書の中でさらに詳しく書かれていますね。話は変わりますが、本書の内容でフォトリーディング以外に印象に残ったのは、留学と英語学習のエピソードでした

久保田「ケンブリッジ大学に留学したのですが、そこで自分が日本人としての考え方に染まっていることに気付かされました。日本だと長く働いて一人前、そうしないと出世できないこともありますよね。自分もそう考えていた節があったのですが、それはある意味思い込みで、成果を出すために必ずしも長時間労働をすることはないんです。もっと自由に生きて、人生をエンジョイしてもいい」

――海外はそういう考えが主流ですよね

久保田「ある意味ではわがままなんですけどね(笑)。でも皆がそうなので、尊重し合うんです。たとえば、ケンブリッジではよくチームを組んでプレゼンするのですが、そのために夜中まで学校に残って役割分担や資料作りをやるんです。ところが『ボート部の練習があるから抜ける』とか、『彼女と会うから抜ける』とか、しょっちゅうそんな話がある。すると皆も『じゃあしょうがないよな、楽しんでこいよ』って。『え、いいの!?』みたいな(笑)。日本人はプライベートなことは仕事が終わってからとか、他の人に迷惑かかるから……ってなるんですが、もう少し生きたいように生きてもいいのです」……続きを読む