ソニーのレンズ交換式デジタルカメラ「α NEX-5」が登場した。コンパクトデジカメと見まごうほどの小さなサイズながら、レンズ交換と大きな撮像素子を搭載し、写真も動画も一眼クオリティーの意欲作だ。今回のレビューでは、まずはボディをじっくりと見てみよう。
そのほか、ソニーの直販サイトであるソニースタイルでは、吉田カバンとコラボレーションしたオリジナルバッグも販売。本体とレンズが収納できるカメラバッグで、NEXにベストマッチするスタイルになっている |
世界最小を実現したコンパクトボディ
NEXシリーズは、APS-Cサイズの撮像素子を搭載したレンズ交換が可能なデジタルカメラだ。ソニーとしては初めて、ミラーを省いたミラーレスカメラで、そのため非常にコンパクトなボディに仕上がっている。
同じようなカメラは、オリンパスやパナソニックがマイクロフォーサーズ規格で実現しているが、マイクロフォーサーズに比べて撮像素子が1.6倍となるAPS-Cサイズを採用しているのが大きな違いだ。
APS-Cサイズを採用しながら、マイクロフォーサーズ機よりもコンパクトサイズを実現したのは、レンズのマウント面から撮像素子までの間隔であるフランジバックを18mmまで短くしたことが大きな理由だ。これはもともと短いマイクロフォーサーズよりもさらに短く、これによって本体の厚みが薄くなっている。
内部の基板にも色々と工夫が凝らされており、この辺りは小型化が得意なソニーの面目躍如と言ったところ。実際にはまだ少し余裕がある、つまりもう少し小さくできるらしいのだが、さすがにこれ以上の小型化は持ちやすさが犠牲になるということで、その辺りを配慮したことによる最小サイズがNEX-5ということらしい。
本体サイズはNEX-5が110.8(W)×58.8(H)×38.2(D)mm、本体のみの質量は約229g。NEX-3が117.2×62.6×33.4mm、約239g。厚みをのぞけば、NEX-5の方がコンパクト。いずれも、手のひらに軽く乗るサイズで軽い。NEX-5は全体的にマグネシウム合金が使われているが、決してずしりと感じる重さではない。
その代わり、マイクロフォーサーズとは異なり、レンズの小型化が難しい分、レンズは決して小さくはない。アルミ合金を使っている金属外装のレンズは適度な重さがあり、ボディに比べると重く感じる。
NEX-5の場合、前面から見ると、レンズマウント面がボディよりも大きいほどで、それぐらいボディは小さい。グリップがボディに対して少し高く、グリップからえぐれているように見えるのは、ここにちょうど小指がかかるように工夫されているからだ。ボディ全体を包み込むように持つと、これが意外に持ちやすく感じる。
また、シャッターボタンの位置も配慮されていて、人さし指でシャッターボタンを押すだけでなく、親指を使って押す場合にもうまくフィットする位置で、絶妙な配置になっている。
親指でシャッターボタンを押す場合に便利なのが、ウエストレベルや足元での撮影をする場合だ。液晶を見ながら撮影するのに、親指でシャッターボタンを押すのが便利で、そうしたときに役に立つ。
こうした際に便利なのが、NEXシリーズに採用された可動式液晶だ。上方向で80度、下方向で45度まで稼働するので、見上げるようにして人の頭の上から撮影したり、足元の撮影をする場合でも、液晶を真正面から見ながら撮影できる。
可動式液晶というと、ボディが厚くなってしまうデメリットがある場合が多いが、NEXの場合、ヒンジ部をボディ内部に埋め込んだことで、液晶がボディからはみ出さずに、フラットな状態をキープした。基板配置の工夫や切り欠きを作ることでこれを実現したという。
液晶が稼働することで、自由なスタイルで撮影できるようになったNEXシリーズ。さらにコンパクトなボディなので、より気軽にハイポジション、ローポジションで撮影しやすいのがポイントだ。
最小限のボタンで使いやすさに配慮
NEXシリーズは、コンパクトデジカメからのステップアップユーザーをメインターゲットにしたカメラだ。そのため、ボタンを最小限にし、分かりやすいグラフィカルなUIを採用した点が特徴だ。
背面には、上からMOVIEボタン、ソフトキー1、コントロールホイール、ソフトキー2と並ぶ。ポイントは2つのソフトキーとコントロールホイールの中央ボタンで、これは場面に応じて機能が変わる仕組みと導入している。たとえば、iAUTOでの撮影時はソフトキー1が「メニュー」、ソフトキー2は「撮影アドバイス」、中央ボタンが「背景ぼかし」になり、iAUTO以外では中央ボタンが「撮影モード」になる。
iAUTOモードの場合、ホイールの回転が「背景ぼかし」になり、背景をぼかすか、くっきりさせるか、という表現になる。動作としては絞りを開けるか絞るか、ということになる |
撮影アドバイスは、撮影の1ポイントを分かりやすく教えてくれる |
「メニュー」を押すと、ソフトキー1は「戻る」または「キャンセル」になり、中央ボタンは決定ボタンになる。
シーンによってボタンの機能が変わる、とはいえ、変わる機能はそれほど多くはない。初心者向けに撮影のガイドを表示する撮影アドバイスは、P/S/A/Mモード時でも表示され、むしろ撮影に慣れた人はあまり使わなそうだ。
たとえばマニュアル撮影モードだと、ソフトキー2はISO感度やホワイトバランスなどの撮影設定を表示するボタンに変われば、素早く設定が変更でき、カメラに慣れた人にも使いやすくなると思う。
こうした撮影設定は、メニューの「明るさ・色合い」に配置されており、ISO感度、ホワイトバランス、測光モード、調光補正、DRO(Dレンジオプティマイザー)/オートHDRといった撮影に役立つ機能が集約されている。
明るさ・色合いに含まれる設定。コントロールホイールに露出補正があるのに一番上にあるあたりは気に掛かる部分ではある |
たとえばISO感度の設定は、コントロールホイールで行える。ほかの項目も、同様なインタフェースで設定できる |
メニューのUIは、撮影モードやカメラ、画像サイズ、明るさ・色合い、再生、セットアップという6項目がグラフィカルに並ぶ。撮影モードは、多くはハードウェアのダイヤルで用意されているが、ボタンを減らすためか内部に用意されており、これを選ぶと画面が撮影画面に戻り、コントロールホイールを回してモードを変える。
カメラでは、連写やフォーカス、顔検出やスマイルシャッターの設定など、セットアップには画面の表示などが用意されている。
設定項目は、コンパクトデジカメに比べれば多いが、撮影モードに応じて使える機能、使えない機能があり、ちょっと分かりづらい部分もある。
コントロールホイールは、十字キーも兼ねており、DISP、フラッシュ、露出補正、ドライブモードの4種類が用意されている。このボタン配置は、下ボタンの露出補正をのぞけば、エントリー向けαでは定番の配置。
アクセサリーでさらに便利に使える
NEXシリーズは、新たにEマウントを採用しているため、従来のAマウントレンズを使用するにはマウントアダプターが必要となる。現時点でEマウントのレンズは、標準ズームレンズ「E18-55mm F3.5-5.6 OSS」とパンケーキレンズ「E16mm F2.8」の2本で、今秋には高倍率ズームレンズ「E18-200mm F3.5-6.3 OSS」の発売が予定されている。
なお、E16mm用のコンバージョンレンズとしてフィッシュアイレンズ「VCL-ECF1」があり、焦点距離10mm(35mm判換算15mm)の超広角撮影が可能。今秋には12mm(同18mm)のワイドコンバージョンレンズも提供される予定だ。
ボディ上部には、一般的なアクセサリーシューではなく、新規開発されたスマートアクセサリーターミナルが用意されている。ボディを薄くした結果、シューより薄くなってしまったから、ということのようだ。
現時点では、同梱の外付けフラッシュと外付けマイクが搭載可能で、今後、この部分がどれほど拡張できるのかは不明だが、バウンス可能なコンパクトフラッシュが出てくると便利かもしれない。
外付けフラッシュは、内蔵するスペースがないため外に出された、という感じで非常に小型。普段は倒れており、軽く持ち上げると自動的にオンになるので、仕組みとしては一般的なデジタル一眼レフの内蔵フラッシュに近く、物理的にオンオフが分かりやすい。
NEXシリーズはコンパクトなことが最大の特徴で、そのボディにAPS-Cサイズの撮像素子を積んだことがポイントだ。気軽に一眼レフカメラの高画質を楽しみたい、レンズ交換を楽しみたい。そんな人にお勧めしたいカメラだ。