米ジョージア州アトランタにてMicrosoft主催の「Convergence 2010」が4月24日 - 4月27日の4日間にわたって開催された。Microsoftのビジネスソリューション「Dynamics」のユーザやパートナーが世界中から集まる年次イベントで、今年のテーマは「Today Tomorrow Together」、2日目の基調講演には8,500人が足を運んだ。
Dynamicsは大きくERP製品とCRM製品で構成されており、ERPには「Microsoft Dynamics AX」「Microsoft Dynamics NAV」「Microsoft Dynamics GP」「Microsoft Dynamics SL」の4製品がある。このうち日本市場で提供されているものはAXとNAVの2製品だ。CRMのほうは導入形態でオンプレミスとオンデマンドに分かれる。
今回のConvergenceにおいてMicrosoftが最も力を入れているのはDynamics CRMだ。なかでもクラウドソリューションであるDynamics CRM Onlineは、同社の今後のビジネス戦略においても非常に重要な位置を占める。オンラインCRMの分野には、Salesforce.com、そしてOracleという強力なコンペティターが存在するが、この2社からいかにシェアを奪うかがMicrosoftのビジネスソリューションの成功を大きく左右するといっても過言ではない。
Microsoft Business Divisionのプレジデントを務めるStephen Elop氏。「私には5人の子供がいるが、18歳の長男のコミュニケーションスタイルを見ていると、確実にジェネレーションギャップを感じる。そのギャップを埋めることがMicrosoftの責務」と語った |
25日に行われた基調講演では、Microsoftのビジネス部門を統括するプレジデント Stephen Elop氏が登場し、冒頭でクラウドコンピューティングとソーシャルネットワーキングがITの世界を根本から変えていることを強調、「私がMicrosoftに来たのは2年前だが、その当時と今では大きくITのあり方が変わってきている。まさに世代交代が起こっている瞬間だ。そして我々はあらゆる技術の中心にいる」とクラウドのリーディングカンパニーであることを訴えかけた。
現在、Dynamicsのワールドワイドでのユーザ数は約30万人、パートナー数は1万を超えるが、ビジネスアプリケーション市場におけるDynamicsの知名度は実のところあまり高くない。だがSMBからエンタープライズまで、ユーザ層は確実に拡がっていることは確かのようだ。その大きな理由のひとつとして、OfficeやSharePoint、そしてユニファイドコミュニケーション(UC)など同社の他のポートフォリオとの親和性の高さが挙げられる。使い慣れたMS製品のUIでオペレーションができることもポイントが高い。「この統合されたスタックが、あらゆる面で時間とコストの大幅な節減を顧客にもたらす」(Elop氏)というとおり、これこそが同社にとっての最大の強みといえるだろう。
たとえばERPとCRMの接続においても、Microsoftどうしの製品であれば非常にスムースに連携させることができる。基調講演では、Dynamics CRM OnlineとERPのDynamics GPを連携し、メール、電話、ビデオ会議などさまざまな手段を使って、必要な情報をアイコンをクリックするだけで簡単に手に入れることができるデモが紹介された(北米のみだが、5月にアップデート予定のDynamics CRM Onlineでは、GP用のアダプタが提供されることになっている)。
また、Microsoft Researchによるをプラズマ大画面を使ったデモでは、開発中の技術として、架空のスポーツメーカーが製品開発から製品をショッピングサイトで販売するまでのプロセスを紹介、コンシューマユーザがマルチタッチで買い物できるようになる例が紹介された。これもERPとCRMがバックエンドでスムースな接続を果たしていることが条件となる。
ERP/CRMのデータを参照しながら、ホワイトボード機能を使ってブレインストーミングを行っているところ |
ショッピングサイトに並んだ製品の詳細を知りたければタッチで簡単に手に入れることができるそう。iPadに似たUIのように思えたが、MSもタッチ技術の研究開発には力を入れている |
今回の基調講演では
- Dynamics GP 2010のリリース(北米のみ)
- Dynamics CRM Onlineのアップデート(年末まで)
- Dynamics AX for Retailのリリース(8月)
がハイライトされていた。このうち日本のユーザにとって最も興味深いのはやはりDyanmics CRM Onlineの新機能だろう。32カ国の言語にローカライズさせて2010年末までにはワールドワイドでリリースする予定だが、Elop氏の言葉にあるようにクラウド&ソーシャルネットワーキング対応が最大の強化ポイントとなる。Elop氏のあとに登壇したMicrosoft Business Solution(MBS)のコーポレートバイスプレジデント Kirill Tatarinov氏は「Microsoftのクラウドソリューションは"All-in" - すべてをMicrosoftが提供する」と語っていたが、Microsoftは今後、オンデマンドとオンプレミスの混在する環境が増えると見ており、このDynnamics Online CRMとオンプレミスの連携事例をいかに増やしていけるかが同製品の成功のカギといえそうだ。
「世界はフラット化している。それにあわせてコラボレーションのあり方も変わってきている。我々はいま、変化の潮目にいる」とTatarinov氏が語ったように、CRMを含むビジネスアプリケーションの世界も"ダイナミック"に変わろうとしているようだ。今回、このConvergence 2010を取材する機会を得たので、Microsoftのクラウドおよびビジネスアプリケーション戦略やDynamicsソリューションの導入事例について、追って紹介していきたい。